第20話

鍛冶師とは地の神と火の神を奉り、金属を打ち出し鍛え加工し様々な器具を作り出す職である。

スキル鍛冶とは、鍛冶師の知識・勘をスキル化し熟練の鍛冶師の動きをトレースできるスキルである。

トレースできるだけなので火魔法もしくは実際の火を使い、己の肉体で打ち出し鍛えなければならない。


…肉体派だな、疲労は避けられないって事か。

一通り読むと本棚に戻した、その列には刀鍛冶・野鍛冶などジャンル毎の鍛冶に関する本が並んでいた。


次は錬金術だな。

錬金術の本は鍛冶と同じ並びに有った。


(あった、あった。)

侑は『錬金術って何?』を手に取った。


スキル錬金術とは、

広く物質の科学的変化を対象とする、精製・蒸留・昇華法などの知識を蓄積し其れらをより完全な存在に錬成する技術を示す。

卑金属を黄金に変える試みから派生して、現在では薬草・薬品などの素材から錬金術を用いてポーション等を生み出した。


スキル錬金術とは、錬金術士の知識をスキル化し錬成する事ができるスキルである。

錬成の成功確率は創り出すものと熟練度によって変化する。


…此方は頭脳派だな。

組み合わせによって物を錬成するって事は、手をパンって叩いても出て来ないって事だな。

でも、有名なセリフで『錬金術は等価交換だ』って所は的を得てるのか。

鍛冶と錬金術、頭で理解しても経験して熟練度を上げないと駄目だな。

逆に熟練度が上がれば、クリエイトで作った物のステータスは良くなるかもしれないな。


侑は下の方にある本に目がいった。

『モンスター図鑑』

手に取って、前書きを読み始めた。

『モンスターは主に二種類の系統がある。

一つは獣が魔素を大量に吸い込んで魔獣化したもの、もう一つは魔素の吹き出す穴から生まれたもの。(魔素の吹き出す穴が大きく深くなるとダンジョンが生成される。)アンデッド系はその他の系統になる。』


ここまで読むと魔導具の砂が全て落ちた。

景色はセピア色から、カラーに戻った。


…ミチルが帰ってくる前に、おやつでも作ってあげるかな。

侑は本を本棚に戻してキッチンに向かった。


カバンの中から、卵と砂糖と牛乳とバニラの粉を出した。

小鍋に水と砂糖を入れ、煮詰めてカラメルを作るとカップに薄く入れる。

卵をとき解して、砂糖と牛乳とバニラの粉を加える。

カップにカラメルが混ざらない様にゆっくりと入れる。

天板にお湯を張り、カップを置く。

オーブンに入れてしばらく待つ。


「…甘い匂いがする。」

ミチルは甘い匂いに誘われた様に、窓から入ってきた。


「おかえり、もうすぐできるよ。」

侑はミチルを肩に呼ぶ仕草をした。


「何ができるの?」

ミチルは嬉しそうに侑の肩に乗った。


「プリンだよ、一緒に食べよう。」

侑はミチルの首を優しくさすりながら、食べる準備を始めた。


侑は箱を準備して、氷魔法を発動した。

『フローズン』

侑は箱を凍らせた、その箱の中にオーブンから出したプリンを入れた。


「プリンは冷たい方が美味しいよね。」

ミチルは首をさすられて嬉しかったのをプリンで誤魔化した。


「明日の朝、二人で湖畔に魚釣りに行かない?」

侑は自分の大切な仲間と思い、ミチルを一人と数えた。


「えっ?

あ、魚釣り?

カニ狩りじゃなくて?」

ミチルはどうにかして、動揺を隠したかった。


「カニはまだインベントリに入ってるよ、でも湖畔に行けばカニが居るのか…」

侑はカニがいる事を思い出した。


「ルビーを連れて行ってみる?」

侑はミチルを思って二人の時間を作ろうとしていたのに、ミチルの口から出た言葉が信じられなかった。


「ルビーを?

でも、二人の時間が…」

侑が言いかけると、ミチルが言葉を重ねてきた。

「別に良いじゃないですか、仲間なんだし。

強くなるかもしれませんよ?

侑様との二人の時間は一日の半分位有りますよ。

気を遣ってくれているのはすごく嬉しいよ?

でも、気にしなくても大丈夫だから。」

ミチルは思っている言葉をそのまま出した、途中で言葉を選ぶのをやめて言葉遣いが変わったのも気にしない。


「うん、分かったよ。

あと、ミチルは無理しないで普通に喋ったら?

最後の方、地が出てたよ?

ついでに『様』付けるのもやめよ?

侑で良いよ。」

侑はミチルの地が見れて、嬉しくて笑顔になった。


「普段から、猫被ってないよ?

鳥ですから。」

ドヤ顔のミチルも笑顔になっていた。

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