気分で買った白い蛾のペンダントが、俺の領地を発展させるアドバイスをくれるチートアイテムだった件について
相葉ミト
プロローグ
プロローグ
キャノピ越しにアルノーがこれから
「ファフニール隊3番機、
発艦許可がかえってくる。整備員の手で通信用ケーブルがアルノーの乗機、
十分な高度に達したかどうか確認するため、アルノーは振り返る。
「
「弱音を吐くな。しくじるはずはない。これから戦う相手の航空戦力はまったくのゼロ。ただし、地上の防空システムは旧世界の遺産だから
ファフニール隊1番機も、東部の偵察に行ったきりだった。それに乗っていたのは、航法士の親友だったことをアルノーは思い出した。兄同然に
「旧世界の遺産、か。古記録を元に
「いや、俺たちはまだマシだ。これから燃やす連中、どのくらいの技術水準だと思うか?」
航法士は考え込んだ。アルノーは歴史の授業を思い出す。
はるか昔、この世界全てを巻き込む大戦争が3回起きた。
第1の大戦は、王族が暗殺されたのがきっかけで起きた。この大戦から、人は空を飛んで戦うようになった。
第2の大戦は、第1の大戦によって生じた国と国との関係のゆがみから起きた。この大戦から、人間は核という、たった一つで都市を
飛行機と核が組み合わさり、一度戦争が起きれば世界が滅びるという恐怖によって、人類はひと時の
第3の大戦のきっかけは、地球規模で起きた異常気象である。技術革新は気候の変化に追いつけなかった。頼みの綱にした人工知能も、
第3の大戦では核が何発も使われ、その太陽にも肩を並べるほどの熱によって、いくつもの都市が跡形もなく蒸発したという。
人間に呼応するかの如く火山は噴火し、隕石さえも地球に落ちた。火山灰と墜落した隕石が巻き上げた
極寒の時代が地球を襲った。人間が居住可能な範囲が
核と超音速機を製造可能なほど進んだ工業都市群は溶岩にのまれるか、隕石に押しつぶされるか、氷河に削られて海に消えた。
「んー、第1の大戦、くらいか? 旧世界の防衛システムは残っているらしいが、飛行機は作れないんだろう?」
航法士が記憶の底からアルノーを呼び戻した。アルノーは航法士の答えににやりと笑った。
「まさかの、
「そりゃあメンテナンスもお留守になるわけだ」
「あいつらは、アーミッシュまがいの生き方を守るためだけに、旧世界の防衛技術をつかってるんだ」
「とんだ宝の持ち腐れだな。真価を発揮できないなど、遺産がかわいそうだ」
航法士の
「ああ。遺産のためにも俺たちはあの土地を取り戻さないとな」
あの土地。先祖たちが勝ち得た大陸。アルノーは再び学生時代の記憶を呼び起こす。
第1の大戦よりも前、太平洋に浮かぶ島々の
第2の大戦が起きたとき、島国はわれわれの先祖の
大陸は戦勝国によって分割された。東西南北を4つの大国が我が物とし、中央は国連が管理するという形になった。
その大陸を、俺たちの先祖は第3の大戦の混乱を利用して手に入れた。思わずアルノーの
楽園は、先祖たちが手を組んだ狂信者に奪われた。彼らは、聖書に従って暮らすため、可能な限り最新で強力な武装を持っていたアルノーの先祖たちを追い出したのだ。
先祖は
アルノーは二番機に追いつき、
「絹の娘を手に入れる事、っていうよく分からない指示があったな」
「絹の娘は、不死の娘の一人だ。人じゃなくて虫、だけど、糸を作って極東の同盟国に富をもたらした伝説の虫だって、あいつが教えてくれた……戻ったら、もっと教えてやるって、言ってた」
航法士がすらすらとこたえる。虫がどうやって糸を作るのかアルノーにはさっぱりわからない。しかし、生物に詳しかった航法士の友人の言っていたことだから、信用していいとアルノーは思う。
「今日の攻撃によって全てが変わる。栄光を取り戻すための第一歩だ。俺たちの千年王国を築くべき楽園と、絹の娘を奪った野蛮人どもに
「ああ。俺の親友を奪ったことも、後悔させてやる」
航法士は勇ましく言い切った。相棒は
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