第58話 来客
「どういうこと? 昨日の今日で出かけてるなんて……」
「王城にでも行ってるんじゃない? 昨日の今日だし」
「王城? セシルが?」
――お久しぶりです、女王陛下。
昨夜のセシルの挨拶が脳裏に過る。昨日の襲撃について、何か報告でもしているのだろうか。そしてあわよくば、情報を手に入れようと――
(なんて、考えてそうよね。あの性格じゃ)
思わず溜息を吐く。カジュアルなドレスにして失敗だった、と後悔した。彼が王城へ行っているのならば、私もハーバードの様子を見がてら、王城へ行っておきたい。
そうアランに伝えると、アランはうーんと首を捻った。何やら不都合があるらしい。
「一緒に行ければ問題なかったんだけど……今、馬車が一つしかないんだよね。昨日も潰されたし、その前も潰されたからさ。手牌が間に合わなくて」
この国での馬は、存外貴重らしい。その貴重な馬車を気安く使っていくとは、なんて勝手な人なのだろう。せめて一声くらいかけてくれれば良いのに。
そう、恨めしく思いながら、私は大人しく部屋へ戻ることにした。
「あ」
「あら、どこへ行っていましたの? 探しましてよ」
部屋を戻って一番に出迎えたのは、いつの間にか来ていたらしいクリスだった。
探したという割には部屋から動いていないのが彼女らしい。
昨日の様に派手な格好ではなく、私と同じように白と黒のカジュアルなドレスに身を包んでいる。ちょうどやることもなかったので、暇つぶしにはちょうど良いかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます