PHASE-1480【責任者としての責任】
「せいぜい奮闘するんだな」
「そう言われると頑張らないといけないね。同胞の仇である俺に対して、激励をしてくれる器のデカさに応えないといけないからな」
「ふん」
「あ、そうだ。お礼になんかしてやるって言ったからな。雄々しい表情の首級はやれないけど、傷が癒えたら再戦の権利をくれてやるよ」
「本当に上からの言い様だな!」
「それだけ元気なら死にはしないな。お仲間たちも一安心だろう?」
問えば、ジージー同様に上からな言い様をする生意気なガキだ! と、多方向から毒づかれる。
「ここで帰っておけば良かったと後悔しないことだな」
「こんなところで帰ればそれこそ後悔する。ここを突破しないと魔王軍への足がかりが途絶えるからな。そうなればジリ貧になって魔王の好む世界になってしまう。それを阻止しないといけないのが俺達の役目。でもって、ここから先は力で分からせないといけないんだろう?」
「ハッ!」
鼻で笑ってくるジージー。
鼻が何処にあるかは分からないけど。
で、それに続いて他の連中も小馬鹿にした笑い。
「まずは力を示し結果を出すことだな。でなければ主が耳を傾けることはないだろう」
「面倒だけども、それで美人とお話が出来るなら頑張るさ!」
それに――、
「各所で勝利したらすんなりと通してくれるってルールがこれからも適用されるなら、こちらとしては戦闘回数が減って助かるんだけどな」
多勢に無勢による波状攻撃となれば流石にしんどいからな。
各所で挑んできてくれたほうが、各個撃破しやすくて有り難い。
「それはこの先の者達が決めることだ」
「血は流れてしまったけど、可能ならその流血は少なくしたいしね」
「甘い考えだな」
「一騎討ちに勝利しただけで、ここをすんなりと通してくれる南門統轄も十分に甘いけどね」
「うるさい! さっさと行け。行って後悔しろ!」
怒気と言うよりは照れくささで声を荒げているな。
ルックスは未だになれないけども、人柄は好感が持てる。
「開いてやれ」
継いで発せば、それに合わせて重々しい金属の音を響かせながら鉄門が開いていく。
「さっさと行くがいい」
「後ろから狙うなんて事はしないでくださいね!」
釘を刺すようにコクリコが言えば、
「それは約束できんな」
と、不敵に笑いつつジージーが返す。
挟撃なんてされると面倒ではあるけども、
「そういった事をするなら我々は全力で掃討するだけですよ」
不敵な笑いを意にも介さずワンドの貴石を赫々と輝かせれば、ジージーは「ふん!」と、鼻を鳴らすだけだった。
鼻の場所はやっぱり分からないけど――。
分かることは、一騎討ちを挑んでくるようなジージーが挟撃を画策することはないってことかな。
一騎討ちの最中、魔法は使用しても、ノコノコと名付けていたクレイマンを俺に対して使用しなかったからな。
自身の魔法で使役した自身の能力であっても、一騎討ちでは禁じ手としてそれを封じたと考えれば、搦め手は好まないタイプだろう。
だからといって油断はしないけどね。
――門を潜って先へと進む。
「遠いな――」
城門は潜ったが、城まではまだまだ長い道のり。
広がる芝生と真っ直ぐに伸びた石畳からなる道。
敷地の広さに、本当にここが空飛ぶ要塞なのかと疑いたくなってしまう。
石畳の上を進む道すがら、チラチラと後方を見るコクリコ。
「どうしたよ?」
「いえ、もしかしたらさっきの連中がこちらに仕掛けてこないかと警戒を」
「その心配はないだろうな」
と、ベル。
なぜなのかとコクリコが問えば、
「あのジージーなる亜人は、頭が切れる者だからだ」
「頭が切れるなら、一計を案じてくるかもしれませんよ。それこそ油断したところを見計らって、これから先にいるであろう連中と示し合わせての挟撃も考えられます」
コクリコが続ける。
「そういった警戒をするのは間違いではないが、そういった事はしてこないだろう」
「なんで?」
と、今度はシャルナ。
「こちらの力量を把握し、現状の戦力で対応するのは不可能と判断したから素直に門を通したというのが相手側の真実だろう。事実、本人もそう言っていた。あれは虚言ではない。どれだけ抗っても絶対に勝てないと理解したのだ。こちらに対して痛打を与えることも出来ずに全滅するとな」
滔々と語るベルは珍しい。
でもって俺と同様、ジージーを評価しているのが嬉しい。
俺の場合はジージーの人柄でそういったことを実行しないと判断したけど、ベルの場合は軍人目線からの評価ってところ。
「確かに。もし挑んでいたなら間違いなく相手は我が力によって全滅していたことでしょう。ベルが言うように賢明な判断ですね」
得意げになるコクリコは、雑嚢からメモ帳を取り出して早速とばかりに、自伝のためにペンを走らせる。
我が威光に当てられ、
――……本当に捏造が過ぎますな……。
捏造はともかく、ジージーがベルの強さを肌で感じていたのは確かだ。
城壁の兵力を全て投入しても勝てないということは、その時に理解していたのかもな。
無駄な損耗を回避するという考えでは有能だけど、上がそれをどう判断するかだな。
「戦えるだけの兵を有したまま、おめおめと敵に門を潜らせた――となれば、城門守護統轄は大目玉でしょうね」
俺の心でも読み取ったかのようにリンが肩越しに南門方向を見つつ発する。
「無駄な戦力投入で兵を全滅させるよりも、今後の為に兵の損耗回避を優先。私なら叱責はせず称賛する。これもジージー本人が言っていたことだ。主は玉砕を由としないとな。状況が状況なら失態に目をつむるだけの器を持っているのだろう。主である
「だとしても、兵は許されてもリンが言うように責任者は責任を取らないといけないだろうな」
「まあ――責任は果たさねばならないだろう」
敵を通すという行為。極刑が妥当かな……。
となると、斬首か……。
それは嫌だな……。
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