PHASE-920【うちのが秀でてる】

「ご、ご苦労様です」


「やあ男爵」

 ここでこの地にて俺に最初にすり寄ってきた人物が挨拶をしてくる。

 知らない面子にばかり挨拶をされたもんだからか、こんなおっさんでも親しさを抱いてしまうよ。

 まあ今は真面目にやってくれているから、少しは好感度を上げてもいいんだろうけどね。

 俺が勝手に創設した特務機関インスペクターは、その名の通り検査員としての役割も担っており、筆頭行政官のモンドとその部下達がしっかりとレンググ領主である男爵の監視もしてくれている。

 真面目になってくれているのは何よりだし、こちらサイドで監視役を出さなくていいのも良かった。

 このおっさんにS級さんを割くのは無駄遣いだからね。

 モンドたちには感謝だ。


「随分と人選をしていたようですが」

 モンド達を見出した才は本物のようだな。俺達がそういった事をしているというのを理解してるんだから。

 これでカリオネルに染まらなかったら最高の貴族だったんだろうけど。


「篩いに掛けさせてもらってるよ」


「さ、さようですか……」

 ワザと酷薄に伝えれば、唾を飲み込んでから返してくる。


「いや~半数以上が駄目駄目だ。でも四割くらいはまともなのが救いだね」


「さ、さようで……」

 半数以上には自分も含まれているのだろうと思ったのか、声に震えも含まれる。

 親密度のパラメータ表記があるならば、MAXを100だとすると、俺と男爵は15くらいだからな。

 才を見抜ける才能で15上がったけど、それがなければ0のままだったからね。

 上がりはしたけど親しくはなれない。もっと俺達に対して恐れを抱いた気持ちで接してくれてもいいとすら思うほど、俺の心は冷たい。


「話は変わりますが、流石は公爵様であり勇者様ですね」

 おっとごますりかな? 手揉みをしている姿は正に太鼓持ち。

 カリオネルの次は俺に鞍替え。

 まあストレスは馬鹿と比べればないだろうけどね。

 でも俺は御しやすくはないよ。


「で、何が流石なの」


「決まっております。諸侯の娘達をああもときめかせているのですから。しかも美女ばかり。今も勇者様を見て目を蕩けさせておりますよ」


「え! そう!」

 分かってるじゃないのよ男爵。親密度のパラメータが50くらいは上がったよ。

 今なら俺に恐れよりも親しみを抱いていいよ。

 ――男爵の言うように、確かに乙女達が俺に熱視線を送っている。

 貴族であり爵位最高位である公爵ともなれば、当然ながら婚約の話なんかも出て来るんだろう。

 そなると俺に熱視線を送る美人の貴族令嬢たちと結ばれるということもある。


「公爵様は勇者様でもあります。いっそ全員を――」


「おいおい男爵それは許されないだろう」


「何をおっしゃいますか。この地で許す許さないの決定権をお持ちなのは公爵様ではないですか」


「――そうか。そうだな!」

 っと、


「だいっ!?」


「まったく。口が上手いぞ。俺にはそんな甘言は通用しないぞ」


「も、申し訳ありません」

 拳骨一発を見舞ってやる。


「いえ主。鼻の穴が広がってますよ。御されそうになっているではありませんか……」


「しかり。色香には惑わされないようにしませんとな」

 しっかりと荀一族二入から指摘を受ける。

 確かに嬉しくもあったけど、甘言に惑わされずに拳骨を打ち込むくらいの平常心は持ってますよ。


 それにさ――、


「大丈夫ですよ。俺には通用しませんから。本当ですよ。通用するというならば――」


「「「「おおぉぉぉぉお!!!!」」」」


「あのくらいの美貌の持ち主たちじゃないとですとね」


「これは見事だな……。私が後四十ほど若ければ口説くというのにな」

 齢七十を超える爺様でも見とれてしまう美の登場。

 男爵も目を奪われ、口をぽかりと開いている。

 俺の発言に得心が行ったようだな。

 

 周囲の諸侯たちが騒ぎだし、自慢の娘達も目を奪われて、はたと女性陣は隣同士で向き合うと――美による敗北からの空笑い。そして肩を落とす。

 離れた場所だからこそよく見渡せた。

 

 さあ真の美の登場。

 ベルにシャルナ、リン。おまけのコクリコ。

 皆様ドレスを纏っての登場。普段とはまた違った美があるね。

 令嬢達が可哀想なくらいに美が秀でている。


 ドレスの色は、皆が普段着用している服の色に合わせたもの。

 ベルのドレスは真っ白で体のラインに沿ったものだ。

 美も秀でているけど、正直――エロさが秀でております。

 辛抱たまらんであります。

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