PHASE-648【ダンジョンの宝箱はとりあえず警戒しとけ】

「不思議で威力のある武器だけども、五月蠅いわね」

 排莢からの装填の間にリンからの駄目出し。

 分かるよ。うるさいってことは――、


「カタカタ――――」


「敵を引き寄せるからな」

 でもそれは俺の銃声が原因ではない。

 銃声よりも前に、


「ファイヤーボール!」

 って、さっきから銃声にも負けないくらいの大音声で唱えているのが原因だから。

 放たれる火球がスケルトンの団体さんに直撃。


「今です」

 直撃により倒れるスケルトンの側では、爆風で姿勢を崩しているのが多数。

 コクリコの声に従って、前衛として疾駆。

 

「おら!」

 スケルトンの間に割って入る。

 右手に持つメイスを頭部へと目がけて振り下ろし、ストレンクスンとインクリーズによる肉体強化ピリアの裏拳を左手で打ち込めば、それだけで二体の髑髏を同時に砕くことが可能。

 メイスの威力は言わずもがな。

 火龍装備ではないけど、希少鉱物であるオリハルコン製の装備は伊達じゃない。

 接近戦において、ガントレットの拳打も十分に有効だった。

 もしメイスを所持してなくても、スケルトンクラスなら白戦だけでも対応できる程だ。


 ――――通路を塞ぐように迫ったスケルトンの団体さんもあっという間に蹴散らした。

 ゲッコーさんが所持するAA-12があればまだ早かったんだろうけど、ライノを使用しているとはいえ、今のところは剣と魔法のファンタジーってところだ。

 まあオリハルコンのロングソードを抜剣するよりも、メイスの方を現在は多用しているけど。


「この階層も問題ないようですね」


「まあ、油断はするなよ」

 出て来るモンスターからして、急に強いのは出てこないだろう――とは限らないからな。

 油断させといて強敵って可能性もある。


「宝箱発見です♪」

 笑みを見せ、すたこらと走るコクリコ。


「おい。罠とかあるかもだから警戒しながら進めよ。俺たち罠を発見する能力とかないんだから」


「大丈夫ですよ」

 駆け寄る宝箱は大きい。

 地下二階の金塊や、それ以降の階層で見つけたナイフや装身具が入っていた宝箱より二回りほど大きい。

 鎧でも入っているのか。それとも……。


「ぬ!?」

 俺のビジョンは暗がりも昼間に変えるし、ズーム機能だってある。

 なので、見逃すわけがない。

 凝視する宝箱がピクリと動いた。

 気がする。ではなく、しっかりと動いた。


「コクリコ止まれ。そいつはヤバイ」


「なるほど。ならば!」

 まずいと知れば、慌てふためくことなく、先手必勝とばかりにワンド先端の貴石を黄色く輝かせ、


「ライトニングスネーク」

 を放つ。

 宙をのたうち回る電撃が宝箱に直撃。


「キキキキキ――――!」

 直撃すれば甲高い鳴き声が通路に反響。

 宝箱だったものが姿を変えれば、両生類の手足が付いたような、魚のカレイみたいなのに変化した。

 大きさは魚のカレイとは別次元だが。

 四、五メートルはありそうなモンスターだった。


「ミミック系か」

 俺の知るミミックは宝箱の姿をしたモンスターだけども、擬態していたからコイツも立派なミミック系だろう。

 宝箱だけに擬態していたわけではなく、その大きな体を隠すように、周囲の床にも擬態していた。

 器用なヤツだ。


「フロアミミック。シェイプシフターに属するモンスターよ」

 と、リン。

 フロアミミックね。まんまな名前だ。

 カレイみたいに平べったい姿だが、背中部分がガバリと開けば、ノコギリのような歯がびっしりと生えている。

 背中部分があいつにとっての口部。

 宝箱に不用意に接近すれば、床部分に擬態していた口部が開いて、欲に負け存在を足からバクリと召し上がるわけだ。

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