PHASE-579【子供はずけずけ言うからね】
「出てこいよ」
「どうしよっかな~」
うん。中々に神経を逆撫でさせてくるキッズだな。
「そこだ」
いち早くゲッコーさんが位置を特定すれば、そこに向かってSG552を発射。
「残念でした~。不思議な武器のおじさん」
「おら!」
子供の声ではあるけど、問答無用でゲッコーさんが射撃した地点にブレイズを纏った残火を振り切る。
建物の壁がバターのように斬れるも、
「怖いけど当たってないよ」
発言を耳朶に入れるよりも前に、数回斬撃を壁に向かって打ち込んでいた。
冷静を装ってはいるけども、怒りは沸々とたぎっていく。
その証拠に二太刀目からは感情のままに振った雑な斬撃だった。
「帰った方がいいと思うよ」
あどけない声だが女性ではある。
「あんたがリンって人か」
「違うよ~」
「姿を見せたらどうだ」
――――……。
返答がないこと数秒。
この数秒がイライラを募らせる。
落ち着かせるために深呼吸をしつつ状況判断。
コクリコに目を向ければ、意識が戻ったようで目を開けて起き上がろうとしており、プロテクションの中でシャルナが状態を確かめている。
なぜ倒れていたのかと状況に困惑が見られたけど、即座に戦闘態勢をとるあたりコクリコも場数を踏んでいる。
元気な姿に安堵すれば、苛立ちも薄れていくのが分かった。
「ばぁ!」
「おう!?」
わずかな弛緩を見抜いたように、突如として目の前の壁から飛び出してくる女の子に対して、俺は情けない声を出してしまった。
「アハハハハハハ――」
上手く驚かせることが出来たからか、宙に留まった少女は腹を押さえて笑っている。
アンデッドが占拠する城なんだからな。
「当然、ゴースト系もいるに決まってるよな」
「ねえ、驚いたよね」
「ああ。驚いたよ」
屈託無く笑みを見せて話しかけてくるあたり、リズベッドと違って姿は年相応だな。
水色のエプロンドレス姿に、黒のローファーと白のソックス。
亜麻色の長い髪には、白い花のブローチがワンポイントになったカチューシャ。
典型的な不思議の国のアリスの主人公であるアリスに似た格好の女の子。
ゴースト系のアンデッドだが血色のよい
こんな子が黒い炎からなる魔法を使用したわけだ。
「おのれ! この私に対してやってくれましたね!」
起きて早々にエンレージMAXのコクリコがワンドの貴石を赤色に輝かせる。
「ファイヤーボール!」
「え?」
笑っていた女の子に向かって火球が飛べば、わずかに驚きの声を出す女の子。
相手がゴースト系なら物理攻撃には効果がないってのは通例。
魔法がもっとも効果的なのも通例だ。
「効かないよ」
楽しげな声で迫る火球に両手を向ければ、それだけでファイヤーボールがかき消される。
「我が魔法を!」
「それ本気で言ってるのお姉ちゃん?」
見た目からして十歳もいってないようだもんな。コクリコをお姉ちゃんと呼ぶのも当然か。
そんな子に容易く消される屈辱。
「ライトニングスネーク!!」
ムキになった声音で唱える。
現状コクリコが使用出来る最強魔法も、ゴースト系の女の子が、先ほど同様に手を前へと出すだけでかき消していた。
「大したことない魔法を得意げに使うのに驚かされるよ。お姉ちゃん、この中で一番弱いでしょ」
驚きはそういう意味だったか。
「何ですって!」
子供は時として平然と残酷な事を口にする。
しかも笑みを湛えながらだから、言われる方はたまったもんじゃない。平然と傷つくことを言うからキッズは嫌いだ。
オンラインゲームでもたまにボイスチャットから甲高い声が聞こえて、はい雑魚~♪ って言って心を抉ってくるからね。
そこで目上として冷静な態度でいられればいいんだけども――――。
――……残念ながらコクリコはしっかりと挑発に乗ってしまっているご様子……。
唇をわなわなとさせ、琥珀色の瞳には怒りがにじみ出ていた。
被っているウシャンカをとれば、怒髪、天を衝く勢いだろうな。
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