PHASE-152【チッ!】

「ギルドハウスの働き手を募集します」


「はい」


「ですので、明日は主も会頭として参加してください」


「分かりました」

 可愛い子を大量に雇いたい。

 

 でもって、メイド服的なデザインを採用しよう。

 ミニだな。スカートの丈は、学校だと完全に校則違反になるくらいの短いやつに決定だ。


「おい。いかがわしいのは賛同しないからな」

 感知能力の高い中佐から釘を刺されるが、男としてここは引けないのだよ。


「冒険者の心を癒やすためにも露出多めで。ただし、下品さは無い方向で」

 耳打ちすれば、先生は典雅な一礼だ。

 分かってくださっている。


 半眼のベルの視線は、完全に見えていない事とする。

 




「なんだいこの状況は?」

 ギルドハウスは三階。


 流石に会頭という役職なだけあって、俺に用意された部屋は広かった。

 といっても、執務室と応接室と寝室が併用されているけどね。

 それでも他のメンバーと比べたら、広々とした寝室である。


 朝の王都を眺めようと、ガウン姿でバルコニーに出てみれば、ギルドハウスの入り口では、女性たちが列を成してキャッキャと、明るい声。


 うむ、みんな若いし、可愛い子が多い。


 眼下の皆が、ギルドの受付や、給仕の仕事目当てに集まったのだろうか。


「――主」

 コンコンとノックの音に遅れて、先生の声。


「いま行きます」

 ガウンからいつもの恰好に着替えて、先生の待つ通路へ――――、


「おはようございます。どうでしたか部屋の出来は?」


「最高でした。ゆったりとくつろげましたし、ベッドも大きかったです。しかも俺の為に、フローリングだけでなく、むしろまで用意してくれて」


「畳がよかったのでしょうが、あいにくと私の知識にはなく、この世界にもありませんでしたので、いましばらくお待ちください」

 畳は日本固有の物ですからね。

 

 素足でゆっくと横になれる開放感はむしろでも堪能できたから、現状でもいいんですけどね。


「ところで、外の女性たちが?」


「そうです。これより面接を行いましょう。本来ならば、主が出る必要はないのですが」


「いえいえ、折角、王都に戻ってきたんですからね。ギルドに協力しないと」


「十分にご活躍なさっておりますのにまだ励むとは。この文若、感動を禁じえません」

 俺はただ可愛い子たちを自分でチョイスしたいだけです。

 邪な心しかないです。


 人員不足、大いに結構。おかげで俺が選定できるのだから――――。


「会頭、副会頭、おはようございます」


「おはよう」


「カイル、おはよう」

 先生と出迎えてもらった時は、ろくに挨拶も出来なくて申し訳なかった。ギルドハウスの出来に驚いていたからな。

 近くで見れば、やはり偉丈夫だ。


 現在カイルは、冒険者、冒険者志望や新米を教育する立場だそうだ。

 加えて、先生の身辺警護も行っており、数人の精鋭と共にその任についている。


「では――――」

 一階の中央にある長テーブルに俺を座らせると、俺が座ったのを確認して、先生が隣に座る。

 で、ドア前に立つカイルに手を向ければ、頷きが返ってきて、カイルが外と繋がるドアを開く。


「「「「キャァァァァァァァァ」」」」

 開かれた途端に、絹を裂くような――――声ではなく、黄色い声が食堂兼酒場に響き渡った。


 なんてこった。俺がここまで女の子たちにワーキャー言われる時代が来ようとは!

 ハーレムだ! ハーレムルートに突入だ!

 

 俺にはベルがいるっていうのに。だが、こんなにも若くて可愛い子が多いなら、それはそれで――、


「皆さん、お待たせしました」

 俺の横で先生が笑みを湛えれば、入り口付近で待機していたカイルから、


「おわっ!?」

 と、声が上がり、ドタンとデカい体が、女性たちの勢いに倒される。

 やばいよ、このままだと俺がもみくちゃになっちゃう。スタッフ! スタッフ!


「はい、落ち着いてください」


「「「「はい! 荀彧様」」」」

 ん? なんだろうか、この先生に向けられる乙女たちの蕩けた瞳は?


 ――……いや……、そうか、そうだよな……。


 この乙女たちは、俺のために集まったんじゃない。

 

 俺の横に座る、イケメンさんに集ったのだ……。

 

 ――……ハハハ…………。


 ――――チッ!

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