PHASE-124【カチコミ】

 ――――破壊した門から要塞内へと踏み込む。

 外部は岩を加工してそれっぽく造っていたが、中は洞窟みたいになっていた。

 俺くらいの身長の岩が点在している。

 

 岩影に何か潜んでいるが、ゲッコーさんはお構いなしとばかりに、


「ギャ!」

 MASADAから、マズルフラッシュと乾いた音。

 よく響く。要塞内部だからな。

 

 響けば一つの断末魔。

 

 海の上にある要塞なだけあって、ゴブリンなんかよりサハギンが目立つ。

 ここではサハギンのヒエラルキーが高いのか、ゴブリン達に攻めろと、手にしたトライデントで、ゴブリン達の尻を突いて前に立たせようとする。

 

 ゴブリン達は渋々と、俺たちへ剣や槍を持って突っ込んでくるが、恰好の的だ。

 射撃のスキルアップが出来るからこちらとしてはありがたい。

 

 ――……ありがたいとか、思ってはいけないな。命を奪う行為だ。

 糧だな。俺たちが生きるための経験の糧になってもらう。

 

 どう取り繕っても、命を奪うのは変わらないが……。


「結構、外してるな」


「すいません」

 難しい。

 反動もあるし、狙っている所に撃っているはずなんだけど。

 しかもこっちに向かって真っ直ぐに来ている相手に、狙いを定められないなんて。


「狙っている一歩手前を撃て」

 冷静にMASADAから弾丸が放たれ、全てをヘッドショットで仕留めていく。

 凄すぎてまったく参考にならない。


 ならばベルは――、


「まとめて来てくれるのはやはり助かる」

 ドドドドドドド――――、

 ――……弾幕だ。

 

 ベルの軽機が唸りを上げる。


 次々と倒れていくゴブリンに、その後ろでせっつかせていたサハギンもみるみる倒れていく。

 

 炎で瞬時に消滅させるのに比べれば、キルタイムは遅いが、間断のない音とマズルフラッシュは、敵を恐怖に叩き落とす。


 発射音の感覚からレート800くらいか。

 速いけど、扱いやすくもあるレートだ。


「よし、俺も」

 ベルが撃ち続けてくれる間に、リロード。

 リボルバーはリロード速度が遅いのが難点。

 まあ、その分、一発一発を大事に狙うって意識が芽生えるからいい。

 

 ――リロードを終え、ズドンと威力のある音。俺が手にするマテバから弾丸が発射される。

 

 当たればゴブリンは後ろへと勢いよく倒れ、動かなくなる。

 子供くらいの身長しかないゴブリンにとっては、.357マグナム弾は強烈すぎたようだ。


「なんですか、皆して火を噴く筒を使用して!」

 誰よりも先行したガスマスクが、遠距離の専売特許を奪われて焦っている。


「二時方向に射手」

 そんな事を意に返さないゲッコーさんは、弓を持つサハギンへの警戒を伝えてくる。

 ここは俺が。と、銃口を向けるも、


「ファイヤーボール!」

 なんとか目立とうと、コクリコが射手を狙う。


「うぬ……」

 急いで唱えたもんだから、岩にぶつけてやんの。

 その隙を突いて、岩陰に隠れていた射手の矢がこちらに飛んでくる。


「おう」

 キンッと、鏃が金属音のいい音を奏でた。

 こちらも岩を遮蔽物に利用。

 射手は次をつがえる。

 

 ここが俺にとって、黄金の時間だ。


「弓とは違うぞ」

 弾さえ入っていれば、連続して使用出来る強味。そっちにはない強さだ。


「よし!」

 撃てば射手の頭部に命中。

 ワンショットワンキルだ! やったぜ!

 

 本当にまずいな……。

 命を軽んじてしまっている。

 

 やはり銃が原因だな。

 刀と違って、感触が無いから、命を奪っている感覚が薄れている。

 

 感触が無いのはありがたくもあるが、よろしくないのも確かだ。

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