短編集 ー死ー

NEONEO

[1] 死にたいって言う奴は死ねない

快晴の昼休み。


僕は、今から自殺をする。

愛する人から、愛されもせずに。




屋上の扉は、呆気なく開いた。


熱を吸収したコンクリート。

その上を、履き潰して汚れた上履きで歩く。




錆びた柵。

そこに足を引っかけ、前に乗り出す。


地上までは、十数メートル。

落ちたらどうなるんだろう。


運が良ければ死ねる。

最悪、生き残る。




人は、よくこう言う。

「死にたいって言う奴は死なない」と。



僕は、確かに死にたいと思っている。

では、この気落ちは嘘なのか?


そんなことはない。



では、僕は誰かに引き留められるのを望んでいるのか?

……半分、そうかもしれない。




そうだとしたら、誰に引き留められたい?


心当たりのある顔が浮かんだ。


結ばれることのない運命。


どうせ孤独の身だ。

だったら今、この気持ちのままで死んでいきたい。




よし、落ちよう。




柵を乗り越え、向こう側に立つ。

手を離し、ふわっとした感覚に包まれた瞬間。


「仁!」


愛する人の声が聞こえた瞬間、僕は思わず柵を掴んだ。

体勢は崩したものの、何とか持ちこたえる。




そんな僕を、友貴斗は柵の内側から引き寄せた。


「何やってんだよ仁、危ないだろ」


僕を支える友貴斗は、友達として僕を見つめてくる。

僕は直視できずに、素っ気なく答えた。


「何でもない」




僕は、唯一の親友を愛してしまったんだ。

だから、けじめを付けたかったのに。


最悪の結果になってしまった。

僕は、生きているじゃないか。




友達ではいられない。

恋人にもなれるはずがない。


僕に、これからどう生きていけというんだ。




友貴斗の目は、残酷にも僕を射抜いたままだった。

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