嘔吐
すなはまにはったてんとのなかででおおきなひとにだきすくめられたときにはじめてわたしはじぶんのからだがもっているいみについてしった。
内臓が震えている。吐き気。心拍数の上昇。末端の血圧の低下。
冷えている。と感じる。喉の筋肉は固く引き絞られ息を吐くとかすかに震えが生まれる。
掌の生ぬるい感触が皮膚表面を走る。私はその時初めて自分の輪郭の形を知る。ぶよぶよと定まらない架空の形が現実世界に引き戻されて、戸惑う。
「愛だよ」と唇が動く。「あなたのことが好きだからそうするの」吐き気。押し戻される咀嚼済みの胃液と攪拌されたお弁当の中身。
「かぞくになるため」むじゃきすぎるめがとおくでひかっているくろめのめんせきのひろさがひかりをおおくとらえてかがやいているようにみえるだけなのに。
「ちがつながってかぞくになるんだよ」ただしいことのようにきみはいうけど
吐き気、吐き気、嘔吐できない、無限に続く吐き気。
fear、自分が恐れられている、と知った時私は自分がGirl、若い女であることを皮膚で理解する。理解不能な畏怖すべき対象。理解可能であることを証明しなければならない(なんのために?)わたしがまとっているやわらかいひふは ひきさかれるためにそんざいしているわけではないのに。
「怖いの?」
いまにもそこからひび割れてしまいそうな傷跡に手を触れると君が消えてしまいそうな気がしていた。
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