20 赤い糸?…結ばれてた?
「C君はどんな女の子がタイプなの?」と聞くと、
「女王様…みたいな…上から目線で…Sキャラの女の子」と言う返事が返ってきた。
C君が大人しいのでそれを支える社交的で明るくてかわいい娘がお似合いと思っていたので、そんなマニアックな子が好きなのかと知らない一面を見たような気がした。
夫達のダーツのチームの試合の日、応援で遊びに来てた女の娘たちの中にA子ちゃんがいた。
我儘キャラを振り回し周りをあたふたさせるようなところがあり、ちょっと意地悪さが加味されて、年上の大先輩であっても容赦がなく仕事場などでも何回か人間関係のトラブルを起こしていた。
そんなC君とA子ちゃんがダーツの試合で出会った。
A子ちゃんは自分の居心地の良さそうな人間を見分ける天性の嗅覚みたいなものを持っていて、出会ったその日からC君に自分の買い物をコンビニまで買い物に行かせたり、やりたい放題だったらしい。
「Cは俺の知人なの…初対面で人を都合よく使うんじゃないよ」と、夫に言われても、ふふん…とジッと「さあどうするの?」みたいにCくんを見つめ、見つめられたC君は「僕の買い物もあるから…」と、言われた通りそそくさと買いに出かけたりしてたらしい。
どこまで許されるかたぶん探っていたんだと思う。
或る日、
「A子がね男の所でひと暴れしたらしいよ」
遊びに来ていた夫の仲間がそんな噂話をした。
話の内容はA子ちゃんとその男とは以前から付き合っていて男の浮気を疑って暴れ出したらしい。電話線引きちぎって包丁持ちだして、男が外に逃げて通報し、警察も来たらしい。A子ちゃんの烈しさを知ってる人間にはさもありなんて感じで、だれも驚かなった。
他の一人が「だって、パトロン居るんだよね…有名だよ。自分の事棚に上げて A子もよくやるよ…」と言い、世間ではよくある話だな、と話は終わった。
その時点で月日も経っていたし、もうC君とA子ちゃんが出会ったことなんか天から忘れていたが…偶然だろうか、そんな噂話を聞いたその日、久しぶりにC君がやってきた。
何か用事がありそうで、少し言いよどんでいたが…要は、夫の仕事を何か手伝いたい…と、そんな話を始めた。その時手伝ってくれてる男の子がいて、
「どうした、金が必要になったのか」と、夫に問われて、要領を得なかったが…、突然はっきりと、あの日以来A子ちゃんと同棲してると言いだし夫も私も吃驚して口をあんぐり開けてしまった。
奇しくも今日A子ちゃんが男の所でひと暴れした話を聞いたばかりで、挙句にパトロンがいる話も聞いたばかりで…3人目だ…私はC君を見つめた。
と…言う事は…C君の所を拠点にして男の所で暴れたり、パトロンとも上手に付き合っていたと言う事か…。
A子の身辺をもっと掘り下げれば他にもいろいろ出てきそうな感じだった。ボソボソと話すC君の話を推測するに、あの出会った日、先にA子達女性陣は帰っていったが…C君が帰るのをA子ちゃん一人が待っていてそのままC君の部屋まで付いて来てそのまま部屋に居座ってしまったらしい。
「それで…?おまえが生活費を稼ごうって訳か…」夫の問いには答えずじっと下を向いていたが「できたらお金を借りたい…」と言った。
「何で…金が必要なの、A子が持って来いって?」と、夫が不審げに聞くと、C君は小さい声で「子供ができた…」と言った。
夫と私は同時に「子供!?…」と叫んでしまった。
誰の子?…私は心の中で思ったら「お前の子?…」と夫が口にした。
C君は心外そうに「彼女はいろいろ誤解されやすいですけれど…とても真面目で僕と会ったのは運命で赤い糸を手繰り寄せたら出会えたと泣いたんです」と、二人の愛がどれほど真剣かを力説した。
A子ちゃんの現状を教えてあげるのは簡単だが…C君の逆上せ上った様子を見ると、夫も「ほお…泣いた?…へえ…」と言ったままだった。
そして、暫くして諭すように
「男と女の関係にいろいろ口出しするつもりは無いけどね…お前はまだ親に月謝仕送ってもらってる学生だろう?子供って…A子は産むって言ってるのか…それが二人の結論なの。病院には一緒に行ったんだろうね、ちゃんと医者から聞いたんだろうね、A子からの話だけじゃないのか」
夫はじーっとC君を見つめた。
「それに、こんな大事な事、親に言わなくちゃだめだよ…親にしたら孫だよ、知らせないで産むつもりじゃないだろうね…彼女の親にもちゃんと挨拶しなくちゃだろ?…二人だけの事では無いよ、だいたい彼女の事ちゃんと知ってるんだろうね、生い立ちとか年とか親とか…おまえの子供の母親になる人だよ」と、夫に言われてC君はちょっと考えていたけれど、深く頷き「きちっとします」と言って帰っていった。
それから数日後、事は呆気無く終わった。
A子はC君の部屋の荷物をすべてまとめると「子供なんているわけないでしょ!」と捨て台詞を残して出て行ったらしい。
きちっとしようとするC君がうざくなったのか、あまり探られたりすると不味い事があったのか、お腹に赤ちゃんがいたのかいなかったのか…何のためにC君の部屋に居付いていたのか…彼女の気まぐれさに振り回されただけで、目的もさっぱり分からなかった。
彼女は何事もなかったように以前と何ら変わる事もなく、より我儘気ままに磨きをかけていたが…深い傷を負ったのはC君でより無口になってしまった。
「放っておけばいいよ…甘やかすんじゃないよ、女ってものがだんだんわかって来るだろう…」と夫は格別心配する風でもなかった。が、
女性の好みは変わる事無く、お化粧の濃い気性の強いS気のある人が好きと言う。
C君…前途多難だね…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます