第12話 依頼 Ⅱ


 依頼を受けた後、俺達はギルドの外に出ることにした。

 結局依頼は例の掃除の依頼、ゴブリンの討伐の依頼、薬草の採取の依頼の三つ受けた。三人でそれぞれ一つずつ選んだ結果である。

 例の掃除の依頼は明日からだそうなので今日のところはゴブリンを狩りながら、薬草を採取したいと思う。


「今日はゴブリン狩って、薬草採取して終わりだな」


「そうね。時間もないことだし早く行きましょう」


「私、戦ったこと無いんだけど」


 リーネが不安そうな顔で俺を見る。


「もし危なそうだったら俺を頼ってくれて構わないぞ」


「それって私が危ないときは盾になってくれるってこと?」


 そっかリーネは俺のような盾が欲しかったんだな。

 確かに丸腰で森の中に入るのは危険だし、俺なら盾にしても問題ないもんな……って違うだろリーネさん! 頼るって言っても普通は人にそんな頼り方求めないから!

 おっといけない冷静にならなければ、今から森の中に入るんだ。緩んだ気持ちではやっていけない。


「いや、盾になるまでは言ってないかな。サポートするぞって意味で頼ってって言ったんだけど」


「ごめんなさい、私てっきりそういうことだと思って……」


「うん、分かってくれればいいよ」


 え? 素だったの? 素であんなこと言っちゃえる娘だったの?

 もしかしたらリーネは少し抜けているのかもしれないな。


「とりあえず町の外出るか」


 そして俺達は町の外まで出た。


◆◆◆◆◆◆


「で、森の中まで来たわけだが」


「私達ってどう戦えば良いの? 武器も何も持って無いわよ」


「確かに」


 二人ともどことなく不安そうな顔をしている。


「安心してくれ、二人には言ってないかもしれないが俺にはちょっと特殊なスキルがあるんだよ」


「「特殊なスキル?」」


「そう、特殊なスキルだ。何だと思う?」


「勿体ぶってないで早く教えなさいよ」


 ソフィーが急かすように俺に詰め寄る。


「分かったから……。実体化だよ、実体化」


「「実体化?」」


「そう、実体化。自分の想像しているものとかをしっかりイメージが持てていれば実体化することが出来るんだよ」


 俺は手にナイフを実体化させる。


「これがそのスキルなの?」


 ソフィーはもちろんリーネも興味を持ったようで無言でじっと俺の手を見ていた。


「そうだ。ちなみに俺自身も実体化してる」


「幽霊なのに見えているってそういうことだったのね」


 ソフィーは俺の秘密を知って納得している様子だった。


「とりあえず、ナイフを二人に十本ずつ渡すからこれを使ってくれ。ナイフは実体化したものだから無くなっても問題はないよ」


「「分かった」わ」


 それから俺達は森の中でゴブリン達を探し回ることにした。

 最近確認していなかったが今の俺のステータスはこんな感じだ。


------------------------------------

名前: カズヤ

種族: 幽霊

職業: 冒険者


Lv.32


HP : 0/0

MP : 567/567

ATK : 0 (種族特性)

DEF : ∞ (スキル補正)

MATK: 255

MDEF: 178

DEX : 342


SP : 110


スキル:『実体化』、『物理攻撃無効』、『メテオ(笑)』、『集中』、『夜目』、『解除』


称号 : 『車に轢かれちゃった系男子』、『異世界の幽霊』、『流石にあの攻撃はエグいでしょ』、『ゴブリンを殲滅せし者』


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 なかなか強くなってきたんじゃないかと自分では思っている。

 そういえば、この前スキルを見ていたときに欲しいスキルがあったんだった。今ならそのスキルがとれるな。

 俺はスキル取得画面を開き、お目当てのスキルを探す。


 ──お、あったあった、取得と……。


 俺が探し出したスキルは『成長速度倍加』というものだ。

 前回取得しようとしたがSPが足りなくて取得出来なかったスキル。これがあれば早く強くなることが出来るだろう。

 今は強くなりたいという気持ちが強い。

 オークションの件で今自分に出来ることの限界を感じた。

 俺がもっと強ければ、もしかしたら男達を殺さない他の解決方法があったかもしれない。

 リーネの件ももっと上手く立ち回れたかもしれない。

 今になって後悔するとはつくづく情けない男だとは自分で思う。だが過ぎてしまったことはもうどうにも出来ない。

 過去を悔やむくらいなら、未来をどう生きるか考えた方が建設的だ。

 そう俺が前向きに考えているとソフィーに声をかけられた。


「カズヤ、突然止まってブツブツ言い始めたけど何をやってるのよ」


「あーすまん。ステータスを見ていたんだ」


「すてーたすって? 能力値のこと? それなら特別な道具が無いと見れないはず」


 リーネがそう言ってきたので俺はステータスをどうやって見ていたか説明することにした。


「そう、ステータスは能力値のことだ。普通は特別な道具が無いと見れないな。だけど俺の場合はステータスをスキルの実体化で見ることが出来るんだよ」


「何なのよ。そのスキル。物は自由に出せるし、すてーたすは見れるしでチートじゃない!」


 ソフィーのチートという発言でこの世界にもチートなんて言葉があるんだなとこの世界での新たな発見に感心しているとソフィーがものすごい形相で俺に詰め寄って来た。


「カズヤ、そのスキルって私達に対しても使えるのかしら?」


「いや、使ってみたことがないから、分からないよ」


「きっと、いや必ず使えるはずよ。さぁ使いなさい! さぁ、さぁ」


「ちょっと落ち着いてソフィー」


「リーネ、あなたは自分のすてーたすを見たくないの? いやみたいはずよ」


「見たい」


「というわけよ」


 そう言ってソフィーとリーネが俺に目を向ける。


 何がというわけだか分からないがそうだな、面白そうな試みではあると思う。試してみる価値はありそうだ。


「分かったよ。俺も試してみたいと思っていたところだ」


 俺はさっそく二人のステータスを実体化して見ることにした。


 問題はどうやって見るかだが、相手のステータスを見るように念じれば良いのか?一回やってみるか。


 相手のステータスを見るように念じると急に自分の目の前にステータス画面が開いた。

 なるほど普通に見れるじゃないか。これは新たな発見だ。


「うわ! 何よこれ?」


 俺がソフィーのステータスを無事出せたことに内心少し安堵しているとソフィーが急に大声で叫んだ。

 何かあったのかと急いでそちらに顔を向けるがそこには何もなくソフィーがただ口をパクパクさせているだけだった。


「おい、ソフィー何を驚いてんだ?」


「何って急に自分のすてーたすが目の前に」


 どうやらそういうことらしい。

 俺が相手のステータスを見るとそのステータスの相手にも表示されるようだ。これって相手に出ないように設定出来るのか。

 そう思い、俺は相手にステータスが表示されないように念じる。


「あら? 急に消えたわ」


 設定出来るみたいで良かった。もし設定出来なかった使い勝手悪すぎるからな。


「すまん、俺のせいだったみたいだ」


「もう驚かせないでよ。見せてとは言ったけど驚かせろとは言ってないわ。まぁ見れたことだし良しとしましょう。もう一度私のすてーたすを見せてくれるかしら」


 俺はもう一度相手がステータスを見れるように設定し、ソフィーのステータスを表示した。


「リーネも表示するから少し待っていてくれ」


「分かったわ」


 ソフィーに続いてリーネのステータスも表示する。


「……!?」


 ステータスがいきなり表示されるのは知っていても驚くらしい。リーネの顔は少しの間固まっていた。


「すまん、リーネ。こればっかりは慣れてくれ」


 さて、二人のステータスを表示し終わったことだし、俺も二人のステータスを見ますか。これは決して興味からではない。

 今後、一緒に行動していく上で相手のステータスは把握しておいた方が良いだろうと思ってのことだ。

 これは必要なことなのだ。

 そう自分に言い聞かせて二人のステータスの見る。


------------------------------------

名前: ソフィー

種族: 人間

職業: 冒険者


Lv.3


HP : 98/98

MP : 20/20

ATK : 6

DEF : 14

MATK: 7

MDEF: 10

DEX : 5


SP : 20


スキル:なし


称号 : なし


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------------------------------------

名前: リーネ

種族: 人間

職業: 冒険者


Lv.4


HP : 108/108

MP : 13/13

ATK : 10

DEF : 20

MATK: 4

MDEF: 17

DEX : 10


SP : 30


スキル: なし


称号 : 『復讐者』


------------------------------------


 Lv.3,4にしては高いということもなくいたって普通のステータスだった。

 まぁ最初はこんなものだろう。これから強くなっていけば良い。


「二人とも自分のステータスは確認し終えたか?」


「私は大丈夫よ」


「私も問題ないわ」


「じゃぁ気を取り直してゴブリンを狩るとしますか」


「「おー!」」


 こうして俺達は再びゴブリン狩りを開始した。

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