就職先の後宮で社内恋愛はありえません!

如月とこ

第1章 プロローグ

第1話 面接(1)


 ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ……。

 う~ん……。


 ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ……。

 う~ん、もう少しだけ……。


 布団から手を伸ばし、目覚まし時計のアラームを止める。

 あとどれくらい寝れるかと薄目を開けて時計をチラリと見た。


 七時五十分。

 ん~。


 !?

 えっ! ええっ!? えええっ!

 布団を跳ね除け、ガバリと身体を起こす。

 目覚まし時計をもう一度穴が開くほど見つめた。


 七時五十分。

 表示は変わらない。


 目覚まし時計のスヌーズを止め、布団から飛び出る。


 なんでなんでなんで。

 ヤバイヤバイヤバイ。

 チコクチコクチコク。


 シャワー。

 浴びてる時間はないっ!

 メイク。

 してる時間はないっ!

 朝ごはん。

 食べてる時間はないっ!


 顔をササッと洗い、髪に櫛を入れ、携帯用化粧ポーチを鞄に放り込む。

 速攻でスーツに着替える。

 焦りすぎて、ブラウスのボタンを掛け違えてしまった。

 ああっ!

 もうっ!

 こんなときにっ!


 忘れ物ないよね。

 鞄の中身をササッとチェック。

 身だしなみ大丈夫だよね。

 鏡の自分をササッとチェック。


 ノーメイクの顔にマスクを装着。

 よしっ! 出発っ!


 急げ急げ~。

 駅までの道を猛ダッシュ。

 改札を走り抜け、階段を駆け上がり、ホームの電車に駆け込む。


 ハァハァ。

 時間は?

 腕時計を見ると、八時十分になろうかというところだった。


 ぎりぎりか~。

 なんとか間に合いそうかな。

 向こうに着いたら、トイレでメイクをするくらいの時間はあるよね?

 マスクをつけて面接受ける訳にはいかないもんね。


 ハァハァ息を切らせて、ブツブツ独り言を言っていた私。

 嫌な予感に、ふと、目だけをチラッと上に向ける。


 案の定。

 満員電車の車内では、怪しいモノを見るような幾つもの視線が、私の身に降り注いでいた。


 イヤー!

 こっち見んな~!

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