オレたちキラめくシャイン!
唐沢 由揚
1.わたしはドルオタ!
アリーナを埋めつくす観客。
暗くなりだした会場のステージに、パッとスポットライトが当たる。
ワッとわき出す会場。
弾けるように登場した、3人の男。
色とりどりのサイリウムの花畑になる客席。
それらに向かって、中央に立つ男が、マイクを握りしめ、めいっぱい叫ぶ。
「みんな、準備はできてる!?」
「イェーイッ!!
……あれ?」
あれっ、わたし、ライブ見てたんだよね……?
……ううん、違う、いま、授業中で……!
目の前にあるのは、サイリウムではなく、クラスメートのクスクスと笑う姿……そして、目くじらを立てる、数学の先生。
「桜さん……楽しい夢を見てたみたいですね?」
「あっ……あはは……すいません」
ぎゃーん、やらかしたー!
「ゴールッ!!」
穴があれば入りたい気持ちになったと同時に、また他から寝ぼけた声が聞こえた。ななめ前の席。
やっぱり立ち上がってて、楽しそうな、いや、嬉しそうな顔をしてた。
……で、
「
「へ? ……あれれ……?」
今度は面白がるような高い笑い声がクラスを包んだ。
もーっ……! 自分までもっと笑われてるみたいじゃん!!
「2人とも廊下に立ってなさい!!」
しかも、バツまでもらうし!!
サイアクッ!!
わたしの名前は
苦手なものは数学。だって、数式見るだけで眠たくなっちゃうじゃん? しょーがないじゃん、ワケワカメで意味不明なんだもん……
てゆーか、いま絶対イイ夢見てた! ステージに立ってた人は誰だか見えなかったけど、きっと『HLD《ホールド》 PLZ《プリーズ》!』だったよ!!
『HLD PLZ!』っていうのは、男性3人からなる若手アイドルユニット。ファンの間で『ホルプリ』って呼んでて、いま女の子の間で話題なの。わたしも、自分のマイブーム、いや、もはや人生!! 人生かけてるほど超大好き!!
はああ……この前のライブのチケット、申し込んだのに外れたのがくやしかったなあ……ライブ会場が、ファン全員を入れられるくらい広かったら、わたしもライブが見れたのに……
きっとそれがくやしかったから授業中にあんな夢見たんだ。くーっ、次こそチケット当ててやるー! 神頼みでもなんでもするぞー!
「桜、なに1人でコロコロ顔変えてるの?」
おっとっと、隣に人がいたのを忘れてた。
この、さっき夢の中でゴールを決めてたねぼすけさんは、クラスメートの
わたし、そんなに考えてることが顔に出てたのかな!? はあ、もう少ししっかりしないと、中2なのにみっともないよ……
べつに、というふうになんでもないフリをしてそっぽむく。このオタクな本性は、誰にも見せるもんかっちゅーの! どーせ、男子からしたら気持ち悪いだろうから!
「あーっ、さては昨日夜ふかししたろ!?」
べっつに、そんなことないもん!
「夜にやってたワールドカップの試合、すっげー面白かったよなー!」
聞いてないのに話進めないでよっ!
てゆーか……その中継があったせいで、ホルプリの出てた番組が遅れて放送したんだけど!! ホント、スポーツの生中継ってキライ! 見たい番組が繰り下げられて放送されたり、最悪だと放送までお休みしちゃうんだもん!
あーあ、おかげで超夜遅くに番組が始まって、いつもより遅い時間に寝ることになったんだから……ふわあ、まだ眠い……
「でさ、その後にやってた歌番組なんだけど」
んっ、今ホルプリの話してた!? パチン、と、出かけた鼻ちょうちんが割れた。
そうそう、生中継による鬱蒼とした気持ちを吹き飛ばしてくれた、今度の新曲を披露しててね、それはそれは超カッコよかったんだよね~!! 知ってる~! だって結成時から追っかけやってたも~ん!
「お前見た? すっげーカッコよかったんだよ!」
「……へー」
いけない、理性を失うところだった……クラスメートに見せるべからずだよ、わたしのオタクの本性!
でも、夢園くんも見てたんだ。まあ、サッカーの中継のついでなんだろうけど。
「オレもアイドルになったらモテるかな~」
なに軽率なこと言ってるの? そんな彼をちらっと見つめる。ニヤニヤ、ニコニコ、ウフフ、と効果音がついてるような笑顔。うっわ、何を考えてるのかバレバレ。どうしよう、もしかしたら好きなアイドルのこと話してるわたしの顔ってこうなのかもしれない。
「まさかアイドルになろうなんて、言わな……」
「やっぱオレもアイドルになりたい!」
こ……コイツ、なに言ってるの~!?
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