月見草

海野夏

扉の樹

一つの枝に一つの扉

それぞれ一つの扉の向こうに

それぞれ一つの世界がある


樹を世話するのは一人の少年

扉を磨き

樹に水をやり

まだかまだかと花を待つ


生まれ落ちたその瞬間

その耳で確かに聞いたのだ

花を待て

ただその一言を聞いたのだ

それゆえ少年は世話をする

扉を拭き拭き

花を待つ

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