けもののきろく：ちょっと危ないジャパリパークでのヒトの生存日記

ジャパリパークのけものたち ～原作動物たちの紹介～

【🐾やせいのけもの 第０巻】空色の衣の君🐝/☆もうひとりの『ヒト』🦍

※このページは、第１章ラスト終盤のいわゆる「ネタバレ」を含む。

　そちらを読んでから、ここを参照することを強く推奨する。

【スカイフィッシュ🐝】Sky Fish / Rods / Air Rods / Flying Rods / Solar Entities

「おわかりいただけただろうか……？」

学名：？

種類：？綱？目？科？属(U.M.A.)

レッドリスト：EX/EW/CR/EN/VU/NT/LC/ [No Data(未掲載)]

全長：１５－２００ｃｍ？　数ｃｍ－数十ｍ？

体重：？ｋｇ / [プラズマ食]？ / [夜行性]？ / 初登場：第１章３話

会える場所：六甲山（兵庫）？

　今を遡ること１９９４年３月１９日、ロサンゼルス在住の故ホセ・エスカミーラ氏の手によって、ニューメキシコ州ロズウェルでＵＦＯの撮影中!?に、奇妙な生物「スカイフィッシュ」が撮影された。動画のコマ送りの最中に発見された、空飛ぶ未確認動物、ＵＭＡ(Unidentified Mysterious Animal)――ちなみにＵＭＡは和製英語で、英語ではCryptid（隠棲動物）と呼ばれる。

　ＵＭＡ・スカイフィッシュは画像や動画の中で一瞬のみ確認されるため、肉眼では捕捉できないほどの超高速（推定最高時速３００ｋｍ）で飛行する生物ではないかと言われている。実際の生体や遺骸が目撃されたことはなく、分類は不明……地球外生命体とも、異次元からの侵入者とも、あるいは超小型のＵＦＯという説もある。

　半透明の細長い身体に、ヒラヒラとした帯状のヒレ（あるいは翅）状の器官を持ち、また体節構造のようなものが確認される。英名「ロッズ」はその棒状の体形から名づけられた。その姿は約５億年前のカンブリア紀の生物、アノマロカリスに酷似しているとされ、その仲間の生き残りが進化して飛行能力を身につけた姿かもしれないとウワサされている。

　一般的に知られる半透明・棒状の種類のほかにも、不透明の個体や、ヒレが無く槍状の尖った身体を持つものなど、多種多様な姿形のものが存在する。

　高速飛行もさることながら、その動きもまた理外のものである。高速で超急角度のターンをした、急降下しての超低空飛行から瞬時に上空へ急上昇した、消滅・出現を繰り返した、障害物を貫通した、飛行の後に忽然と姿を消した……などなど、およそ信じられないような、物理学を超越した動作が可能であるという。

　メキシコ、サン・ルイス・ポトシの熱帯雨林にある巨大洞窟――直径５５ｍ、深さ４００ｍの世界最大級の縦穴洞窟「ゴロンドリナス洞窟(The Cave of Swallows)」には、スカイフィッシュが多数生息するといわれている。このスカイフィッシュの巣窟では、多くの写真と動画が撮影され、スカイダイバー達と隠棲動物学者（クリプトズーオロジスト）の聖地になっている。日本のスカイフィッシュ撮影のメッカは、兵庫県神戸市の六甲山である。ここはスカイフィッシュの飛行ルートとされ、防犯カメラにまで写っていることがあるとか。

　ゴロンドリナス洞窟も六甲山も多数の断層が走っており、地磁気の異常が観察できる場所である。スカイフィッシュはその電磁波をエネルギーとする生物……あるいは電気そのもの――プラズマ生命体だという説もある。高速移動や、消滅・出現などの奇妙な生態の説明になるというが……。

　――などと疑似科学（オカルト）の話をつらつらと述べたが……科学的に言うと機械の目の錯覚……カメラで飛翔昆虫を映した時の被写体のぶれ（モーションブラー）である可能性が高い。飛行時のハエやガなどの「残像」であるという説が有力だ。実際、家庭用カメラと業務用ハイスピードカメラを使って昆虫を撮影した実験では、前者でスカイフィッシュ状の物体が撮影されたのに対し、後者では普通にハエの動きが録画された。

　私個人の感想としては、あの可憐なフレンズ「空色の衣の君」が機械の目の中だけの存在だけであってほしくないと望むのだけれど……。ほかに目撃したというフレンズもいなくて、あれは胡蝶の夢……いや胡蝿の夢（可憐でなくてやだな）……束の間の幻灯機の映し絵に過ぎなかったのだろうか……？　

【†☆ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシス🦍】Neanderthal

「汝らの血（いでんし）は我らの肉に注がれて」

学名：Homo sapiens neanderthalensis

種類：哺乳綱サル目ヒト科ヒト属ヒト亜種ホモ・ネアンデルターレンシス

レッドリスト：[Extinct(絶滅)] /EW/CR/EN/VU/NT/LC

身長：１５５－１６５ｃｍ / 尾長：無し / 脳容量：１６００ｃｃ

体重：６５－８０ｋｇ / [雑食性] / [昼行性]？ / 初登場：プロローグ１話？

会える場所：※国内に無し？

　ネアンデルタール人類は、約４０万年前にアジアに出現してヨーロッパにまで広がり、４万年前に絶滅したとされるヒト属の一種だ。約１７０万年前、共通祖先である原人（ホモ・エレクトス）がアフリカを出てから、ネアンデルタール人とヒトはアジアとアフリカで別々に進化したのである。約２０万年前（あるいはさらに１０万年ほど前？）に東アフリカで出現したと考えられるヒト（ホモ・サピエンス）とは、一時期地球上で同居していたことになるが……６万年前に出アフリカ（エクソダス）したヒト（クロマニョン人）が、ユーラシア大陸で実際にこの隣人たちと共存していた期間は非常に限定的で、彼らが絶滅する直前の５千年ほどだ。

　１９世紀半ばのドイツ、デュッセルドルフ近郊の「ネアンデル渓谷（タール）」で保存状態のよい化石が発見され、何の骨か分からなくてあやうく捨てられそうだったのが、なんとか学会で発表されて人類と認められたという経緯がある。学会でこれを認めるのに相当な紆余曲折があったことは、発見後の８年後に、ドイツ人学者ではなくイギリス人地質学者Ｗ.キングが学名をつけている点からも察せられる。また、発見の数年後の１８５９年にはダーウィンの『種の起源』が発表されており、この「隣人たち」が学会で認められるのに、「進化論」が果たした役割は大きかったことが窺い知れる。

　かつてはヒトの祖先の「旧人」だと考えられていたが、ミトコンドリアＤＮＡの解析が進んだ現在では、彼らは「ヒトの亜種」であったという学説が浮上してきた。しかし、やはりヒトとは別種の人類であるとも、あるいは別種に近いほど遺伝的に離れているとも言われている。２０１０年の調査では、非アフリカ系の現生人類の遺伝子には、１－４％のネアンデルタール人由来のＤＮＡが含まれていると明らかになった。これは、アフリカを出たヒトとネアンデルタール人との間で混血が起きていたからと考えられている。

　ミトコンドリアＤＮＡは母親のみから受け継がれ、突然変異のみでしか変化しないので、この変遷を調べれば、生物の母方の系統（ルーツ）を辿ることができる。細胞核のＤＮＡが崩壊しているような化石であっても、ミトコンドリアＤＮＡは残存しやすい。なにしろ細胞内に核が一つなのに対して、ミトコンドリアは数百個もあり、さらに一つのミトコンドリアには複数のＤＮＡが存在するのだから。加えて核ＤＮＡに比べてサイズが小さいので復元しやすいそうだ。

　かつては色黒で原始的で凶暴な「野蛮人（やばんちゃん）」の姿で描写されることが多かったネアンデルタール人だが、近年ではそのイメージは覆され、ヒトとほとんど変わらない色白の姿に描かれたり、その知的・文化的な側面がフィーチャーされることが多い。

　ヒトへ流入したネアンデルタールＤＮＡは皮膚や毛髪や免疫力の性質に影響しているらしく、金髪碧眼・色白・赤毛・インフルエンザ耐性などの高緯度の寒冷気候で有利な要素はネアンデルタール人に由来する可能性があるらしい……これはすべてのネアンデルタール人がそういう性質を持っていた、という事とイコールではないことに留意したい。ヒトより数千年早くユーラシア大陸で暮らしていた「先輩」から受け継ぐ価値のある性質は多かったようだが、うつ病・気分障害・統合失調症・摂食障害・煙草（ニコチン）依存症・夜型行動などの一部の病気や生活習慣もネアンデルタール由来である可能性があるとか。

　成人男性の平均身長は１６５ｃｍ、体重８０ｋｇと推定され、現代人と比べると身長は低いが、筋肉モリモリマッチョマンの変ｔ……がっしりした体格をしていたようだ。顔がでかくて、首が太くて、脚が短くて、ちょっとずんぐりむっくりな感じする、胴長短足な身体をしてたのがネアンデルタール人です……氷河期の、氷河期を生き残らなあかんしぃ、亜北極圏にも行かなあかんしぃ……生物学での、こう、「寒冷地の動物の末端部は保温のために短くなる」ような「アレンの法則」に基いている体になってるんで。

　しかし、遺骨から生前の姿を復元する研究によると、思春期まではそのマッシブな特徴が現れず、ネアンデルタールの少年少女は比較的スレンダーな、中性的で華奢な体格だったそうだ。

　脳容量も、ヒトの１３５０ｃｃよりも大きい。また、ヒトのものと酷似した「舌骨」の形状から、原人と異なり、ヒトと同様に言語を使用することができた――発声可能な解剖学的構造を持っていたというだけで、本当に言葉を話していたかどうかは定かではないが。しかしＤＮＡの解析により、「ＦＯＸＰ２」という文法能力を司る遺伝子が、現生人類のものと類似していることは判明している。

　火の利用・煮炊き等の調理・鋭利な石器の製作・動物の骨の加工・衣服や装飾品の使用・薬草の投与による治療・「家」の建築・死者の埋葬・身体障碍者の保護など、ヒトと同様の発達した技術や文化を持っていたことが分かりつつある……むしろヒトのほうが「先輩」からこれらの技術文化を受け継いだのかもしれない。さらにイラク、シャニダール遺跡では、化石の周辺から数種類の花粉が発見され、遺体に献花する文化があった可能性がある。

　また、調理された痕跡のある人骨が発見されており、食人（カニバリズム）の慣習があったと考えられている。

　美術や音楽などの芸術に関しては明確な証拠は少ないが、スペインで４万５千年前にヒトがヨーロッパへやって来るより以前の、６万年以上前の壁画が発見され、これはネアンデルタール人の描いたものと推測されている。なおアナグマの大腿骨に穴の空いた「笛」らしきものも発掘されていたが、これは動物の仕業であったらしい。そうはいっても、ヒトに劣らず知的水準が高く器用な彼らが、ヒトに先立って「演奏」をする文化があった可能性を否定することはできない。

　かつて賢い人（ホモ・サピエンス）が、「愚かな人（ホモ・ステューピドゥス）」と見下していた「もうひとりの隣人」……彼らは、粗野で暴力的な原始人ではなく、思慮深く洗練された友愛の人だったようだが……しかし、今では土の中の「思い出」からでしか、彼らの人となりを想像するよりほかない……。

　約４万年前に彼らは姿を消した……ユーラシアへ進出してきたヒトが彼らを滅ぼした可能性もあるが、「二者」が争ったという明確な証拠は無い。やはり、彼らは消えたのではなく取り込まれたのだろうか……？　ネアンデルタール人の「記憶」は、遺伝子（からだ）と模倣子（ぶんか）という有形・無形の遺産として、今に至るまで継承され、完全に融和し、もう人類の一部となっているのかもしれない……。