けもののきろく：ちょっと危ないジャパリパークでのヒトの生存日記

セルリアン解剖録 奇想の博物学ノート ～異形の敵役たちの紹介～

【💿空色の研究 第１冊】狩猟罠セルリアン🐕/戦車セルリアン🚘/注射器セルリアン💉/寄生セルリアン🐙/漂流セルリアン🍉/蛇遣いセルリアン🐍/粘菌セルリアン🚿/多頭龍セルリアン🐉

　ジャパリパークに棲息する「セルリアン」なる怪生物についての覚え書き。

　私が遭遇したこの時代、この場所のセルリアンは、動植物やフレンズを文字通り「捕食」する。奴らは「猛獣」や「兵器」を歪（いびつ）な形で模倣した……いや、それよりはるかにおぞましい輩（やから）である。

【能力値の見方】

Ｓ：すっご～い!!

Ａ：とってもトクイなんだから！　Ｂ：おお、なかなかやりますねぇ！

Ｃ：う～ん、ふつうくらい～？　Ｄ：ニ、ニガテなのかな～？

Ｅ：うみゃ……よわい～ 　Ｆ：あなた、ぜんぜんだめですのね……

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【狩猟罠（マウストラップ）セルリアン🐕】Cellien -Bandersnatch-

外見：トラバサミ　＋　カンブリア紀の古生物「オパビニア」

初登場：プロローグ１話

体長：約80cm / 肩高：約40cm / 尾長：約40cm / 体重：５kg程度

攻撃力：Ｃ / 耐久力：Ｄ / 敏捷性：Ｂ / 知覚力：Ｂ / 判断力：Ｄ

　口先の「鼻」から長く伸びる「トラバサミ」によって、おもに小動物を捕食し、時には弱ったフレンズを襲う行うセルリアン。

　中型動物めいた姿形の胴体と四肢。頭部には、掃除機のホースのような長い「鼻」。その先端の、硬い被殻を持つ「大アゴ」が特徴的。ハエトリグサのように、内側には感覚器があるらしい。イヌ・ネコに似た四肢胴体だが、陸生爬虫類のような、地べたを這いずり、砂地や泥に潜行（もぐ）るのに適した、平べったい奇妙な体型。

　頭にはカニやエビのように上に飛び出た五つの眼球を持つ。３６０度四方を常時監視できるため知覚力・反応力は高い。

　本体とアゴを草地へ埋めて、ジッと獲物を待つ「待ち伏せ」型の狩りを行う。地上に出した眼球群は、風に反応して揺らす、ハエの飛ぶように動かすなどして、巧妙に環境に隠蔽される。またある程度体色と模様を変化させることもでき、視覚のみで位置を特定するのは難しい。この目玉は鋭敏な視覚を有するほか、匂いや光を出して獲物を引き付ける「疑似餌」としての役割がある。

　不注意にも近寄ってくる動物やフレンズに「大アゴ」で喰らいつく。それはアンコウなど、一部の海底棲の肉食魚の行う狩りに酷似している。

　アゴを閉じる力は大型獣用トラバサミ並みに強く、人間の脚の骨など安々と粉砕するほどの威力。一度噛みついたら離さず、また大アゴの外骨格は硬い甲羅状の装甲で覆われており、外部から破壊することは難しい。

　口吻の振り回しとアゴの閉じる速度はとても速いため、奇襲されて見てから避けるのは非常に困難。イエネコほどのサイズしかないが、引きずり回す力は大型犬並みに強い。

　ネコ科動物のように獲物の首を狙って一撃で仕留めようとすることはまれ。基本的にはイヌのように、初撃は低位置の目標――腕や脚を狙って噛みついてくることが多い。手首の動脈や腱を損傷させ、引きずり回して出血と疲労で弱らせてから、首や胴体に噛み付いて捕食する。

　こいつの弱点は「大アゴ」しか有効な攻撃手段を持たないこと。ワニのようにアゴを開く力は弱いため、どうにかして口を閉じた状態で固定してしまえば、完全に無力化できる。

　またアゴの内部は脆弱なため、敏捷性に優れるフレンズなら噛みつきの瞬間に口内に攻撃して致命的なダメージを与えることもできる。アゴを何とかして捕縛し、逃げられなくなった「本体」を狙うのも有効。

　それに視覚的に精巧に擬態しているといっても、「フレンズの技」である鋭い嗅覚や、熱探知「ピット」器官などで索敵すれば、本体の位置は明らかで、奇襲は回避できる。

【戦車（タンク）セルリアン🚘】 Cellien -Armada-

外見：ＡＦＶ（戦闘装甲車）　＋　巨大ダンゴムシ「メガボール」

初登場：第１章１話

体長：約６ｍ / 肩高：約３ｍ / 尾長：約１ｍ / 体重：およそ１０ｔ

攻撃力：Ａ / 耐久力：Ａ / 敏捷性：Ｄ / 知覚力：E / 判断力：Ｆ

　固い・強い・遅い、と三拍子そろったデカブツ陸棲甲殻類セルリアン。

　大型のアフリカゾウの個体並みの大きさと重量。それに加えて強固な複合装甲の「殻」を持ち、フレンズのツメやキバであっても、かすり傷ひとつ負わせることができない。うっかりひっくり返っても、装甲の関節部の皮膚を伸ばして丸まって腹部の防御を行うためスキが無い。

　ダンゴムシが「外骨格」の強度や「開放血管系」の浸透の限界などの、サイズ制限の束縛から解放されて超・大型化したような姿。背中の装甲には、セルリアン特有の「一つ目の眼球」が、出来の悪いブリキ玩具のように雑に乗っかっている。弱点のこの目玉は、スポーツカーの格納式前照灯（リトラクタブル・ヘッドライト）のように、背面装甲の内部に埋没させて保護できる。

　甲殻類のように二種類の「付属肢」を持つ。

　歩行用の脆弱な「外肢」は何十脚と有り、多足類のそれを思わせるものだ。アルマジロがちょこちょこ走るように、のろいけれど、そこそこの機動性でスムーズに動くことが出来る。

　対して鰭（ひれ）状になった頑丈な「内肢」は、耕運機（トラクター）のように地面を大きく掘り起こしながら走行する。方向転換や攻撃回避はし辛いが、不整地でも高速走行が可能。左右の内肢の動作をそれぞれ逆向きにして、その場で回転する、超信地旋回が可能な点も無限軌道（キャタピラ）（履帯（クロウラー））と同様。

　前面にはハコガメのような可動式の装甲板を備え、開いてカメのような「首」を伸ばせる。口は平たくて、門歯や犬歯は無い。頭部の特徴からその食性がうかがえるが、こいつは草食のセルリアン……それも首を伸ばして、おもに地面近くの下草を主に食べるようだ。

　この首を「大砲」として、消化管内の有機物から「砲弾」を合成して「砲撃」を行える。長い首をまっすぐに伸ばせば、砲弾の加速の際に役立つ。これは草食動物の「反芻（はんすう）」を自衛用に進化させた生態。長い消化管の内容物を「吐き戻し」て、サンドスター以外の不要物を砲弾とするのだ。でも要するにアルパカのツバ、いやぶっちゃけゲロでは……。

　この「セルリアン大砲」の砲弾には、本物の砲弾の性質を模倣し、自由に様々な特性を持たせることができる。重量と貫通力に特化した一粒の「貫通（ピアッシング）弾」。成形炸薬弾の「モンロー・ノイマン効果」のように、障害物を浸透して隠れている目標を拡散エネルギーで攻撃する「ＨＥＡＴ弾（High-Explosive Anti-Tank）」。威力がバラけるので軟体目標に有効な「炸裂榴弾」。線状のエネルギーで弾どうしを連結して、ワイヤーで切り裂いて殺傷する「ボーロー弾」……などなど。

　射撃時には、重量級の体重を生かして砲撃の反動を抑えるだけでなく、潜頸類のカメのように「首を引っ込めて」反動を受け流す。腹腔内にレール状の骨格構造を内蔵していて、これに沿って頭部が移動するようだ……。さらに後部（つまり、お尻）が柔らかい脂肪組織でクッション状になっており、反作用により高速で引っ込む首を柔軟に受け止めることが可能。これは野戦砲の「駐退機」と同様の原理だ。

　ちなみにシッポからも後方機銃（マシンガン）のように、小さな弾丸を連射できる。まるでカバの……いや、言わないでおこう……。

　このように優れた体躯・攻撃力・防御力を誇るが……実は危険なセルリアンではない。草食性のために性格は大人しく、自身が捕食される機会も無いため、感覚器も非常に鈍く、図体が大きすぎるせいで死角が多い。イタズラなフレンズが殻に攻撃をしても、気づかれることすらないくらい鈍感。

　上記の「砲撃」も、フレンズや野生動物に積極的に殺傷目的で行（おこな）うことはない。せいぜいちょっとゲロを吐いて脅かすぐらいか。判断力も低く、移動能力や砲弾の性質変化などを有効に活用することはない。

　大セルリアン、総身に知恵が回りかね。 スペックこそ高いが基本的にはほとんど一日中草を食べているだけの、無害な？セルリアンである。

【注射器（ブラッドサッカー）セルリアン💉】Cellien -Locust-

外見：旧式大型注射器　＋　直翅類（バッタ類）

初登場：第１章２話

体長：約20cm / 尾長：約15cm / 体重：500g前後

攻撃力：Ｅ / 耐久力：Ｆ / 敏捷性：Ｃ / 知覚力：C / 判断力：Ｅ

　バッタ類のような長い脚部と、オタマジャクシのような幅広の尻尾・半透明な身体を合わせ持つ。ある種の昆虫の水生幼虫（オナガウジ等）のような、あるいはホヤ類の幼生のようなゼリー状ボディに、大きな眼球と節足動物の翅や脚を加えたような……なんとも言い難い姿形だ。

　少し素早いだけで、単体の戦闘能力自体は低いが、繁殖力が高く必ず群れで行動する。蝗害やネズミの大量発生のように大集団で現れるこいつらに襲われたら……死を覚悟しなければいけない。

　長い脚では３ｍもの跳躍が可能。翅を使って飛行するが、短距離のみ。集団で獲物に襲いかかり、ヤツメウナギのそれを思わせるアゴで皮膚を食い破る。その傷じたいは浅くとも、奴らは傷口や粘膜部を狙って、注射針状の「隠し針」を口腔内から撃ち出して吸血を行う。

　なお倒した後もしばらくは、このアゴ発射・吸血機構は作動して、「隠し針」が飛んでくるため、うかつに死骸に近づくのは危険だ。

　この吸血と同時に麻痺性の唾液を体内に流し込まれる上、血中のサンドスター分子を急速に吸引されて、フレンズは貧血ならぬ「貧サンドスター」状態に陥ってしまう。

　さらに追いつめられると「窮鼠（きゅうそ）フレンズを噛む」の反撃……。消化管の血液や自身の体液を混合して「針」から液体を発射するという……目から血液を発射する「サバクツノトカゲ」のような奥の手も行う。近接すれば、ヒトの手の甲ぐらいは簡単に貫通する威力。しかしこれは自分にも負担がかかる捨て身の技。よほどピンチの時のみに一度しか使えない最終手段のようだ。

　セルリアンは、群れが小規模だと半透明の体色が緑っぽく、大集団になればなるほど黒っぽくなるらしい。ホルモンか何かの働きだろうか。群れの密度が大きいほど脚が短く翅が長く攻撃的になり、まさしくバッタの「相変異」を思わせる生態である。

　とくに弱点は無いが、その小さい身体は柔らかく、どんな攻撃でも一撃で叩き潰せる。標的が小さく素早いので、大振りすぎる攻撃は命中しにくいので、素早い攻撃や広範囲の攻撃を繰り返し……切っては捨て、切っては捨て、という対処方法が有効。なお吸血をすると、半透明の体内の消化管が赤くなっていき、身体がゴム風船のように膨れ上が（デブ）って行動が鈍化する。

　なお長距離移動時には、「トガリネズミ」や「サルパ」のように、尻尾と口で次々に連結して数珠つなぎになって、一斉走行することもあるそうだ。

【寄生（パラサイト）セルリアン🐙】Cellien -Spaghetti -

外見：電源コードやカテーテル類　＋　寄生性吸虫（ロイコクロリディウム）

初登場：第１章９話

攻撃力：Ｅ / 耐久力：Ｆ / 敏捷性：Ｄ / 知覚力：Ｓ / 判断力：Ａ

　単体で見ても正体が皆目見当つかない。なんだこれは？　病気の動物の脳みそ？　……あるいは極太ミミズのうどん玉？　……それともスパゲティのお化けか？　その正体は寄生種のセルリアン！

　テヅルモヅル、タコクモヒトデ、スキッドワーム、マガタマニラなどの海洋生物の特徴を持つ。（グロいです。ググってね）

　不揃いな太さの触手のみで構成され、触手には何か所も瘤（こぶ）があり、そこに眼球が位置していることがある。

　別のセルリアンに触手を付着させて寄生する習性がある。おもに眼球部に寄生場所とする。宿主セルリアンの自由意志を奪い、自分の意のままに行動させて生きるという、独特の生活史。不運にも寄生されたセルリアンは、こいつの乗り物と化して……寄生体のコードとチューブに繋がれて、自分の意思と無関係に動くただの生きる死骸（リビングデッド）と成り果てる。「スパゲッティ症候群（シンドローム）」という医療用語があるが……。

　非常に知能が高く、感覚が鋭敏であることが特徴。まさに脳みそだけの生き物。ヒト、あるいはそれ以上の臨機応変な状況判断能力を備え、だが倫理観や生命の尊厳といった大事な観念を欠いた怪物か……。

　宿主を操る原理は……ずばり「電気」だ。このセルリアンは生体電流を出す能力を持ち、微弱な電流で宿主の神経系を掌握するのだ。

　この生体発電は、最大出力にして、全ての細胞（セル）からの強力な高圧電流で、必殺の攻撃へと用途を転じることもできる。

　が、しかしこれは神経細胞の膜電位の差――細胞内外のイオンの濃度差を利用した発電と酷似したメカニズムで、浸透圧に逆らって全身の細胞の電位差を元に戻すには――つまり「電池（バッテリー）を再充電」するには――相応の時間がかかるようだ。短時間に何度も高電圧の放電を行うことはできない。さらには使うたび寄生体にかかる負担も大きいので、滅多には使ってこない。

　ちなみに「宿主」のほうは、その眼球を七色の同心円状に輝かせるという、奇ッ怪な症状を見せるのが特徴的。死んでいるヤツの目が虹色に輝くとは、なんとも皮肉めいた話。

　この寄生セルリアンには弱点が多い。寄生能力に特化しているため、触手の運動性は低く力も弱い。宿主さえなんとかすれば、とるに足らない「のろまな相手」だ。さらに、宿主を操っている時には、本体の触手の動きが疎（おろそ）かになるし、また逆もしかり。

　加えて敏感な寄生体は非常に「痛がり」だ。どんな攻撃でも、触手のどこかに少しかすっただけで大きく怯む。こいつは全身が神経細胞のようなものだから、当然と言えば当然……。いや、普通の生物の脳には痛覚が無いハズなんだけれども……。

　他者の痛みを感じないこのセルリアンが、自分は人一倍痛みに敏感なのは、納得がいかないような、そうでもないような……。

【漂流（フロート）セルリアン🍉】 Cellien -Carneades-

外見：海洋気象ブイ　＋　ウリ科植物の果実

初登場：第２章11話

直径：40－60cm / 体重：10kg程度

攻撃力：なし / 耐久力：Ｆ / 敏捷性：なし / 知覚力：？ / 判断力：？

　大きなビーチボールぐらいのサイズのセルリアン。海洋気象用のブイのような球形シルエットで、緑のカラーリングや質感は植物めいている。形的にも、ちょうど１０ｋｇぐらいのデカいサイズのスイカ（専門用語では５Ｌ・６Ｌとか呼ぶそうだ）っぽく見える。

　フレンズにも動物にも、完全に無害な光合成セルリアンだ。空気中に含ませるサンドスターを「固定」する能力がある。こいつらは温水を好んで棲息するから、この化学合成には、光量が豊富で温暖湿潤な環境が必要なのだろう。

　生態的にも、動物というより植物的。フレンズや動物が近寄っても反応しないし、捕まえても全く抵抗を見せない。というか運動器官のようなものも見当たらず、自分では動けない様子。

　基本的には、存在を無視してよいセルリアン……。と思わせて、実は上述の「サンドスター固定」の化学反応の副産物として超可燃性のガスが生じ、これが体内に溜まって水中での浮力を得ているのだが……この爆発の威力がまた凄まじく、メタンガスや気化ガソリンの比ではない程の大爆発なのだ！

　というわけで、銃撃の跳弾による火花や、導火線を使っての着火などで、攻撃用の爆発オブジェクトとして上手く利用すると、戦況を有利に運べるだろう。

　……無害なセルリアンを殺してしまうのは可哀想だが、フレンズや動物の命のほうが大切なのだからしょうがない……。生命の価値……いや、ヒトにとっての生命の「利用価値」は、平等ではないのだ……。

【蛇遣い（オフィウクス ）セルリアン🐍】 Cellien -Medusa-

外見：西洋のプレートアーマーのような殻　＋　右腕がヘビのような長い触手

初登場：第２章12話

身長：170cm程度 / 体重：60kgほど

攻撃力：D / 耐久力：A / 敏捷性：D / 知覚力：C / 判断力：Ｄ

　女性的な曲線的体格のヒューマノイド型の「本体」と、腹部にとぐろを巻くヘビのようにぐるぐる巻いて格納された「触手」のふたつのパーツから成り立つセルリアン。

　サバンナ地方の湿地帯にはぽっかりと大穴が開いていて、そしてこのセルリアンの登場とは……。まるで諏訪地方に伝わる「甲賀三郎」の「人穴」伝説のようだ……。

　本セルリアンは、身体の皮膚も触手も、金属的な硬さを持っている。どうやら金属を吸収して、表面に「殻」状の膜として分泌できるらしい。「ウロコタマフネガイ」や「カイコウオオソコエビ」など、金属を合成できる生物は自然界で知られているが、どれも水と深い関わり合いがある。ちなみに、水辺で採れる砂鉄や、湿地や田んぼで採れる「高師小僧」と呼ばれる褐鉄鉱を使って、製鉄を行う「ヒト」もそうだと言える。水辺……蛇……鉄……。

　セルリアンの触手の先端にある「口吻」は、とくに硬い構造でできており、中世ヨーロッパの「苦悩の梨」という拷問器具を思わせる金属的なクチバシの形状。野生動物を襲う際は、おもに柔らかい腹部を狙って攻撃し、内臓や生殖器などの骨で覆われていない臓器を抉（えぐ）る様にして攻撃する。

　そうして獲物を絶命せしめた後は、死体から水分のみを抜き取り、水に溶けているサンドスター養分を吸収する。

　ヒト型の「本体」部分は、動きが遅く、腕力も弱く、身体能力は人間並み。腹腔に内臓のように丸めて格納された触手は、肩部の右側から飛び出して、まるで筋肉質で長い右腕のようだ。左腕は不格好に短く未発達で、先はヘビのシッポのようだに先細り……この左腕は、身体のバランスを取るぐらいしか使われない。

　こいつは右利きの人間が襲い掛かるのと同じ動きをする。「触手」じたいの動きは速くとも、「ヒト部分」の動きをよく観察すれば、触手を見切ることはたやすいだろう。

　この触手は、先端を掴んで無力化しようとすると、トカゲのシッポのように自切されるので要注意！　自切された「触手の頭部」は放っておけば死ぬが、最後とばかりに大暴れして食いついてくるし、さらにそこにセルリアンからの追撃が来る……。

　自切後、セルリアンの触手にはすぐに「新しい頭部」が生えてきて再生する。サメの歯のように、「次の頭」が触手内にたくさん詰まっている構造らしい。なつかし文房具の「ロケット鉛筆」みたい……。

　視覚や聴覚などの五感は鈍く、目や耳への攻撃は有効ではない。また一部のヘビが持つ「ピット器官」のような熱感知器官を持ち、これがそれなりに敏感のようだ。なおうつ伏せにダウンさせると、腹部の触手を蛇行させることによって、「ころ」の原理で地表を高速蛇行移動することもあるので注意。

　さて、このセルリアンの最大の武器は攻撃能力ではなく……その異常なまでの打たれ強さ（タフネス）だ！　眼球を抉る、喉を切り裂く、肝臓や腎臓、肺などの急所をナイフで刺す……などの、人間であれば致命傷となる攻撃を何度も加えても、すぐに立ち上がってこちらに襲い来るのだ……！

　まるで、脳も筋肉も内臓も無いゾンビのような……。こいつの正体は一体……!?

【粘菌（スライム ）セルリアン🚿】 Cellien -Oobleck-

外見：ゲル状のスライム　＋　粘菌類

初登場：第２章17話

攻撃力：Ｄ / 耐久力：Ｆ / 敏捷性：E / 知覚力：C / 判断力：Ｄ

　蛇遣い（オフィウクス ）セルリアンの正体は「水」だった！

　Ｗ・Ａ・Ｔ・Ｅ・Ｒ！（ヘ並感（へれんけらーなみのかんそう））

　正確には、水が身体の大部分を構成する、いわば「スライム・セルリアン」だ。粘菌類のように動くセルリアン。そいつがヒト型の甲冑や水道配管のような触手に潜り込んで、各部の水圧をコントロールして操っていたにすぎない。

　本体が「水」ということは……その液体自体が神経であり、筋肉であり、臓器である……。フレンズがツメやキバで蛇人型の「殻」を打ち破ったとしても、中の「液状の本体」には、打撃・斬撃・刺突・銃撃などの物理攻撃はほとんど無効である！

　絞め技や関節技なら、多少だが有効……本体である体液を「絞り出す」効果があるぞ。

　また、電撃や化学薬品など、中のスライム・セルリアンの膜内電位やｐHを大きく変化させる「化学攻撃」なら、「神経」や「筋肉」に当たる機能を狂わせ、致命的なダメージを与えることができる。

　……そして殻から引きずり出せば、スライムは水をぶっかけるだけで死滅する。浸透圧で大量の水が体内に流入し、表面の半透膜が破裂して死んでしまうのだ。

【多頭龍（ヒュドラー ）セルリアン🐉】 Cellien -Illuyankas-

外見：壺状の丸く大きな「殻」　＋　頭上に伸びる何本ものヘビ触手

初登場：第２章18話

体長：２－３ｍ / 体重：３－４ｔ

攻撃力：Ｂ / 耐久力：Ｓ / 敏捷性：C / 知覚力：B / 判断力：Ｅ

　危機的状況に陥った蛇遣いセルリアンどもが合体した！　壺の中にヘビなどの毒蟲を入れて、最強の蟲を残らせるという「蟲毒」という古代中国の呪法があるが……まさにそういう結果になった！

　軽く丈夫な金属の複合装甲をセルリアンが合成し、それを丸い壺状の器として、本体の粘菌セルリアンを保護する。胴部の「壺」の上部には、幾本もの触手が生えて、眼球はホオズキのように赤くらんらんと輝き、さながら日本神話のヤマタノオロチ。

　……酒樽とか十握剣（とつかのつるぎ）みたいな、ある程度レアなアイテムが無いと勝てないのでは？

　合体してパワー・スピード・防御力などの身体能力は大幅に向上している。ヘビの首が３６０度四方を見張るので、感知能力も高い。

　しかし知能は若干ゃ下がっている様子。多くの個体が混ざったために、思考が各個体に共通する最低レベルで統一されているからだろうか？　「リービッヒの最小律」の「ドベネックの桶」……いわゆるボトルネックというやつ。

　そういうわけで、こいつに付け入るスキがあるとすれば……認識能力が上がり、もともと高くない知能がさらに下がったから……非常に陽動に引っかかりやすい点か？　幸いなことに、こいつの弱点の「水」は、このサバンナ地方・湿地帯地区には湯水の如くある……。