救国の英雄 ~タイムスリップして第2次世界大戦前に踏みつぶされる小国を救っちゃいます~

雪楽党

epilogue


 薄暗い部屋の中、椅子にぐったりともたれかかる一人の少年がいた。

 目に怪しげなゴーグルをつけた彼は心ここにあらずと言った感じで、彼の眼球にはある一室が投影されていた。


 部屋は薄暗い電灯によってともされていていやに物々しい。

 目の前には地図があり、そこにはヨーロッパの地図が書かれていた。

 ふと隣に立っていた中年の軍服を纏った将校が声をかけて来る。


「現在は1936年の1月1日であります。閣下、如何なされますか?」


 少年は暫し混乱したが、すぐに自らの置かれている状況を思い出した。


(そうだ、これはVRだったな……)


 VR、最近発売されたばかりに新しいゲーム。

 その場に立っているかのような錯覚を覚えるこのジャンルはすぐさま世界を駆けまわった。


「まずは我が軍の配置を」


 少年がそう声をかけると地図が変化し、幾つかの駒が浮かび上がった。


 駒の数は14個ほどで、12個がバツ印の記された駒で、残りの2つが横に広い楕円が書かれた駒だった。


「駒の説明は致しましょうか?」


 隣の将校が少年を気遣い、声をかける。

 恐らく、あまり軍事に詳しくない人間がプレイする事も想定されているのだろう。


(案外親切なんだな)


 少年は少し感心しながらも「いらない」と言った。


 現代の規格で考えればバツ印の駒は歩兵師団で楕円が記された駒は恐らくだが、戦車師団なのだろう。


「ではまずは――」


 少年は今では敗戦国となったドイツのもしかした遭ったかもしれない未来を作るために駒を動かし始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る