決着後にて 後始末となお続く騒動
世界樹の口から放たれた
「世界樹、大丈夫?」
『一度、魔力の使い過ぎで動けなくなった経験が生きたな。今回はギリギリ耐えれたぞ』
「それなら良かった。シールはどう?」
『私も通常よりは力が落ちてますが動きに支障はありません。
「うーん、かなり痛いね。しばらく治療に専念しないと動かせなくなるかも」
『……
『我らもヤートの無茶を見逃した手前、そう考えるべきだろう。ヤート、地上に戻るか?』
「今、世界の外を
『うむ、承知した』
僕はあいつが消滅してから、ずっと世界の外を感知してるわけだけど今のところ僕の感知範囲にあいつと似た気配はない。
「あいつは完全に消滅したみたいで、あいつの同類もいないみたいだね。最悪、世界の外にいるかもしれないあいつの同類と戦うかもって思ってたから良かった」
『確かにな。負けはしないが、さすがに連戦はきついものがある』
『同感です。
「そう……だね。そうしよう。世界樹、少し下がって」
『うむ』
世界樹は僕の言う通り下がってくれたから、僕は慎重に
「…………」
『ヤート、どうした?』
「やっぱり、他のところと比べたら不安定さが目立つなって」
『それは、あの愚物が無理やり空間に穴を開けた場所なので仕方がありません。今後の世界の治癒能力に期待しましょう』
「そうだね。僕も時間ができたら、ここに来るようにするよ」
『この場所の心配をするのは良い事だが、ヤートよ』
「何?」
『お前は別の心配をするべきだな』
「別の心配?」
『地上を見てみよ』
「…………あ」
地上でラカムタさん達が、僕達を見上げていた。しかも、どう見てもラカムタさん、父さん、母さんは怒ってるね。
『両腕の事を含めていろいろ説教を受けてこい』
「うん……、わかった」
『まあ、頑張れ』
世界樹が苦笑してるのを感じる。まあ、完全に無茶をしたって自覚してるから怒られるのはしょうがないね。
世界樹に地上へと降りてもらい、僕は世界樹の頭の上から飛び降りた。……そういえば別に飛び降りなくても、世界樹に地面へ寝てもらったら地面まですぐだったな。でも、今の僕の状態で考えながら動くのはダメだった。
「あ……」
「「「「「ヤート‼︎」」」」」
立ってる世界樹の腰くらいまで順調に降りてたんだけど、途中で足を踏み外し落ちてしまう。うーん、腕が動かしづらいだけで、ここまで動きに支障が出るんだなって思っていると地面が近づいてくる。とりあえず少しでも落下の衝撃を小さくする姿勢になろうとしたら、下から抱き上げられた。
「あ、父さん、ありがとう」
「お前らしくないぞ。どうした?」
「えーと……、無茶をした結果みたいな感じだね」
「きちんと説明しろよ」
「わかった」
僕は父さんに地面へ降ろしてもらった後、周りを囲むみんなにあいつを完全に消滅させた事、あいつを消滅してからも怪しい気配や現象がなかった事、あいつが空間の穴を開けた場所は他より不安定な事、僕の両腕は何度も破壊と再生を繰り返したため機能不全が起きてる事なんかを全て説明した。すると……。
「ヤート、腕を触っても良い?」
「触るだけなら良いよ」
母さんが僕の腕を見てそう言ったからうなずくと、母さんは僕の力が入らない腕を恐る恐る触ってきた。
「ヤート、私が触ってるのはわかる?」
「…………うーん、母さんに触られてる感触はないかな」
「痛みはあるの?」
「うん、何度も吹き飛ばして短時間で再生をさせてたせいだと思うけど、途中から痛みしか感じなくなった」
「そうなのね。……それじゃあ肝心な事を聞くわよ」
「何?」
「ヤートの両腕は元の状態に戻るのよね?」
「あ、それは時間さえかければ大丈夫」
「そう、良かったわ」
みんなは僕の答えを聞いてホッとしたみたいだ。
「あいつも倒して全部終わったから、ゆっくり治すよ」
「という事は、しばらく両腕を使えない生活になるのか。なかなかに不便だな」
「そこは自分で必要だと判断した事をやった結果だから、どうしようもないね」
「そう言われたら、俺達は怒るに怒れないだろう」
「いつもの事だよ」
「お前が言ってどうする……」
「そうだね」
『それでは両腕が治るまでの
「うん?」
僕のそばにシールが現れると、世界樹の頭の上で鳥籠状になってた
『この蔓で
「なるほど、これなら確かに問題を解決できるね」
『待ッテクダサイ』
「ディグリ、どうしたの? って、は?」
『やめなさい‼︎ 私に触るのはゆるしませんよ‼︎』
ディグリはシールの言葉を無視して僕の腰に巻きついてる
「ディグリ?」
『アノモノニ頼ラナクトモ、私ガアナタノ腕ニナリマス』
「ディグリはディグリの生活があるのに良いの?」
『恩ヲ返セル良イ機会ナノデ私ノ事ハ気ニシナイデクダサ、グボッ……』
今度は高速で飛んできた
『…………ドウイウツモリデショウカ?』
『それは、こちらの台詞です。なぜ、あなたは無意味な事をするのか聞かせてほしいですね』
『無意味トハ?』
『わざわざ、あなたが、でしゃばらなくても、
うわ……、シールが一言一言区切って強調しながら言ってる。完全に挑発してるよね。
『
「何?」
『このものに格の違いを見せないといけないので離れますが、すぐに戻ります』
『偶然デスネ。私モ、ソウシヨウト思ッテイマシタ』
ディグリは戦闘形態になり、シールは
「リンリーもミックも、どうしたの?」
「ヤート君をお世話する権利がかかってるとなれば譲れませんので参戦してきます」
「…………オレガテキニン」
そう言ってリンリーとミックもディグリとシールが戦っているところへ走っていった。
「父さん」
「何だ?」
「両腕が動くようになるまで不便だけど、助けてくれるみたいだから何とかなりそうだよ」
「…………そうだな」
父さんは遠くから聞こえる戦闘が聞こえてくる方をチラッと見た後にうなずいてくれた。でも、なんで、このまま任せて大丈夫だろうかっていう感じの雰囲気になってるんだろ? 他のみんなも父さんと同じような表情になってるのも謎だ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話が最終話になります。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューもお待ちしています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます