王都にて 動き始めた状況と未知な事
あの母さんと
ちなみに僕も二、三回
「黒の方々、突然すまない」
「いや、構わない。それで俺達を呼び集めたという事は何か動きがあったのか?」
「…………その通りだ」
ずいぶん王様達の表情が厳しいから良い話じゃなさそうだね。ラカムタさんも王様の様子に気付いてるみたいだったけど、指摘せずに王様に続きを促した。
「話してくれ」
「本来なら各国が国内の教団支援者を排除した後に数カ国の戦力を結集して教団の本拠地を攻める予定だったのだ。それが……」
「それが?」
「大幅に戦力を絞る形で教団の本拠地を攻める事になった」
「なぜ、そうなったんだ?」
「教団の支援者が思った以上に各国に潜んでいて、どの国も自国を守るのに注力しなければならなくなった……」
「誰だって自分達の居場所を全力で守ろうとするのは当然だから当たり前だな。俺達
ラカムタさんが起こったかもしれない最悪の未来を言うと、父さん達や四体もうなずいていた。
「そんなわけで例え理想的な状態にならないとしても俺達に不満はない。それより、これから先の予定を教えてくれ」
「出発時期はできる限り早く、合流場所は教団本拠地の手前に築かれている要塞を見下ろす丘だ。各国は、そこに自国の防衛に問題が出ない範囲の少数精鋭の部隊を送り込んでくる。そして全員がそろい次第、要塞を攻め落としそのまま本拠地へ突き進む」
「…………要塞があるんだ」
「以前から教団の連中は、本拠地からあふれた避難民や解放奴隷などが暮らすための街だとしているが、あれは誰がどう見ても要塞にしか見えん」
どれだけ不自然な建前でも、その建前を撤回させる何かがなければ何も言えないからしょうがない。怪しさはあっても決定的な証拠を残さなかった教団と教団支援者の強かさが、よくわかる。とはいえ疑問があるから聞けるだけ聞いておこうかな。
「要塞を回り込んで本拠地には行けないの?」
「忌々しい事に教団の本拠地は正面以外が切り立った高い崖に面していて、その正面を守る位置にあるのが要塞なのだ」
「なるほど結局は正面から攻めるしかないって事か。あと出発時期ができるだけ早くという事は今日にも出発してるところもあるんだ?」
「我が国もナイルとサムゼンを中心とした部隊の編成が完了しつつあるから他の国も同様だろう。やはり少数精鋭部隊ゆえに、あらゆる面で時間の短縮できるのは大きい」
「確かに移動速度も、かなり速そうだね。ラカムタさん、僕達はどうする?」
「そうだな……。まあ、ナイル殿やサムゼン殿といっしょに行くのが妥当だな。ヤート、念のため出発まで王都や王城を
「わかった」
その後、情報のすり合わせが終わり、もはや僕の定位置になっている城壁の上へ登ろうとしたらヒョイっと抱き上げられた。見なくても誰がやったのかわかるから、とりあえず聞いてみる。
「ナイルさん、僕に何か用?」
「ヤート君が城壁の上で、どんな事をしてるか見てみたいのよ。ダメかしら?」
「ダメじゃないけど、側から見たら座ってジッとしてるだけだから見てもつまらないよ?」
「良いのよ。ただ私が興味あるだけなの」
「そういう事なら大丈夫。城壁の上に行くから降ろして」
「必要ないわ、よっ」
ナイルさんが少し膝を曲げた後、掛け声とともに伸ばしたら加速を感じた。そして数瞬後、ナイルさんは僕を抱えたまま城壁の上に着地する。…………やっぱりナイルさんの身体はすごいな。並の
「それじゃあ降ろすわよ。あ、ここで良いのよね?」
「うん、ここで大丈夫。ところでナイルさんは会議とか教団に攻め込む騎士の編成作業は良いの?」
「そういうのは私がいなくても副官のエレレクアが過不足なくこなしてくれるわ。私に求められてるのは腕っぷしよ」
ナイルさんが腕を曲げると、腕を伸ばした状態でも見惚れるような筋肉が、さらにボンッと膨れ上がる。すごい上腕二頭筋だ。…………おっとナイルさんの筋肉を見てる時じゃないか。僕はナイルさんに断りを入れてから城壁の上に座り、呼吸を整えながら
しばらく王都全域を探知してるけど頭痛はない。感知する情報の精度を一人一人が何を考えているかわかるくらいに上げても情報に押しつぶされる感じがない。どうやら王城に来てから、ずっと
「あら、何か嬉しい事があったの?」
「僕は嬉しそうにしてた?」
「ヤート君が満足そうにうなずいてたから、そう思っただけよ。作業の邪魔をしてしまったらごめんなさい」
「大丈夫。気にしないで」
…………そうか、僕は自分の無意識の動作を認識できてないんだね。それにさっきまで自分の成長には気づいてなかった。同調や
「あ、僕が嬉しそうにしてる理由だったよね? 自分が成長してるってわかったからだよ」
「成長……。あなたの使ってる
「王都全域で誰が何を考えてるかわかるようになった」
「え…………、そ、それは王都に住んでる全員の考えがわかるって事?」
「うん、そうだよ」
「あ……はは……、それはすごいわね…………」
なんかナイルさんが唖然としてるから、一応弁明みたいな事を言っておいた方が良いかな。
「えっと、今必要だから王都全域を探知してるだけ、普段からしてるわけじゃないからね」
「ええ、あなたの性格はわかってるから大丈夫よ。ただ規模に驚いただけ。…………これはあの子達も驚きそうね」
「誰か来るの?」
「今度の教団との戦いに他国参戦する人達の中に、昔から私と勝ち負けを競ってた子達がいるの。全員、私と同じ総団長よ」
「…………その人達はナイルさんと競えてたの?」
「そうよ。私と同じくらい良い肉体の持ち主なんだけど、いつだって個人戦でも集団戦でもギリギリ勝ったりギリギリ負けたりしてたわ。ぜひ紹介させてね」
「うん、楽しみにしてる……」
ナイルさんと同じくらいの身体? え? そんな
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューもお待ちしています。
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