王城への旅にて 懐かしい事と若かりし頃
出発の朝になった。出発するのは僕・四体・ラカムタさん・父さん・母さん・兄さん・姉さん・リンリーにサムゼンさんとヨナさんだ。父さんと母さんはともかく、まさか兄さん達がギリギリの辛勝とは言え
「よっしゃあ‼︎ 城へ行くぞ‼︎」
「そうね‼︎ 途中で怪しい奴がいたらぶっ飛ばすわ‼︎」
「私も全力で怪しものを消します‼︎」
「
三人は一晩過ぎても
「……ヤート、悪い」
「騒ぎすぎだったわね……」
「すみません……」
「兄さん達が
僕の発言を聞いた兄さん達に負けた
「お前達、何事もなく村へ戻ってくるようにな」
「うん」
「当たり前だぜ‼︎」
「もちろんです」
「わかってます」
「それとヤート……」
「何?」
「地形を変えるのはできるだけ我慢するんじゃぞ」
「…………うーん、必要と思ったら絶対にやるから約束はできないかな」
「ラカムタ、くれぐれもくれぐれも頼んだぞ」
「ああ、必ず俺達で敵を倒してみせる」
「
「ヤートは気にするな。俺達に任せてくれれば良い」
「そうなの?」
「そうだ‼︎」
「そうよ‼︎」
「そうなんです‼︎」
兄さん達の後に四体からも任せてほしいと言われて説得される感じになってるのは何でだろ? …………まあ、やり過ぎるなっていう事だと思って納得しておこう。その後、僕らは少し話した村に残るみんなに見送られて村を出発した。
村を出て順調に進み
「何してるの?」
「ガアッ‼︎」
「ブオッ‼︎」
「申シ訳アリマセン‼︎」
「…………ワルカッタ」
「「ヒヒンッ‼︎」」
「次はないから」
四体と二頭がシュバッと離れたので今回は赤い実を腰の小袋に戻して、僕達は移動を始めた。ちなみに移動の陣形は、サムゼンさんの乗った
しばらく移動して思う事は、やっぱりラカムタさん・父さん・母さんの脚力と持久力がすごいって事だ。かなりの速度なのに三人は息も切らさず魔獣の速さに並走してる。さりげなく
「ヤート」
「母さん、どうしたの?」
「ヤートはヤートだから、気にしなくて良いわよ」
「…………うん、そうだね」
母さん達を意識してたのが気づかれてたみたいだ。
「俺からも言うと、自分の納得できるやり方を見つけていけば良い。何事も慌てる必要はないぞ」
「うん、わかってるつもりだよ。父さん」
「俺も改めて言っておくべきか。ヤート、考えすぎるなよ。何かあったら、とりあえず俺にでも言え。物理的に解決できる事は協力できるからな」
「…………おい、ラカムタ。何で、俺にでもと限定した? そこは俺達にでもで良いだろ?」
「村以外だと俺が一番ヤートに同行する事が多いからだ。単純な事だろ?」
「…………」
あれ? 何で父さんとラカムタの間で、いきなり空気が悪くなるの? というか父さんって、こんなに張り合う性格だったんだ……。僕が首を傾げてると母さんが走りながらススッと近づいてくる。
「昔からマルディとラカムタは、ガルとマイネみたいに事あるごとに張り合ってたわね。あまりに張り合い過ぎて建物を壊した時は、
「…………そうなんだ」
僕だけでなく兄さんと姉さんも驚いた顔を父さんに向けたら、父さんは僕達から目をそらす。
「おい、エステア。昔の事は良いだろ。あれはラカムタが無駄に俺に突っかかってきただけだ」
「は? マルディ、ふざけた事を言うなよ。お前が俺にケンカを売ってくるから仕方なく相手をしてやってたんだろうが」
「「…………」」
父さんとラカムタさんの間でバチバチと火花が散る感じになり、父さんが顔をクイっと動かす。ラカムタさんは首や肩をゴキゴキ鳴らした後にうなずいた。そして二人はバッとその場からいなくなる。
「ラカムタのおっさん⁉︎」
「父さん⁉︎」
「あそこね」
走って移動してる最中に突然いなくなった二人に兄さんと姉さんが驚いてると、母さんが遠くの方を指差した。見たら遠くで土煙が上がってるのが見える。…………父さんとラカムタさんはあそこまで跳んでいって戦い出したの?
「マルディもラカムタもしょうがないわね。たぶんいっしょに行動するようになって昔の感覚に戻ったんだと思うわ。私達は先に進みましょう」
「エステア殿……?」
「本気でじゃれ合ってるだけだから、満足したら追いついてくるわよ」
何でもない事のように言ってる母さんに全員が困惑気味だったけど、父さんとラカムタさんの事を一番知ってるのは間違いなく母さんで、その母さんが問題ないって言ってるんだから大丈夫だろうと無理やり納得して僕達は先を急いだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューもお待ちしています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます