異常との対面にて 魔弾の使い方とリザッバの特性

 純粋なる緑の魔弾グリーンインパクトショットを撃ち続けているけど、四足歩行になったリザッバに避けられている。あのシャカシャカ足を動かす感じがなんか嫌だなと思っていたら、兄さん達からも僕と同じ雰囲気が伝わってきた。いろいろズレてる僕でも、こういう感覚はまともだと確認できて良かったな。よし、気を取り直して射撃を続けよう。




 あれからさらに数百発は撃ち続けたけど、相変わらずリザッバに避けられてる。…………魔弾の軌道が直線だけじゃダメか。僕は魔弾を二つに分けた。一つは変わらずリザッバを狙い続けるもので、もう一つはリザッバの進路の先に回り込むものだ。


「「「ク……、コシャクナ‼︎」」」

「うん、やっぱり全弾直撃させようとするのはダメみたいだね」


 リザッバの動き辛そうな様子を見て、当てられる状況を作る事が肝心だと実感できたので、新しく別の軌道の魔弾を加えた。その軌道は上から降り注ぐもの。つまり進行方向を邪魔しつつ上から来る魔弾で意識を散らして、隙ができたら直進する魔弾を直撃させるというやり方だ。無駄撃ちになる魔弾が増えるけど、世界樹の杖ユグドラシルロッドにはまだまだ魔力を溜め込んでるから余裕はある。


「「「ソイツラヲ、ハヤクツブセ‼︎」」」

「確かに、みんなが倒されたら僕は治療とかに追われてお前への集中できなくなる。でも、さっきも言ったけど、みんなはお前の人形程度に負けるわけがない」

「「「イワセテオケバ‼︎」」」

「僕に意識を向けて良いの?」

「「「グハッ」」」


 僕に飛びかかろうとしたリザッバへ魔弾を直撃させ体勢を崩した。そして続けて上から魔弾を降り注がせる。


「「「オノレーー‼︎」」」


 リザッバは回避を捨て四本の足で身体を固定すると、頭頂部が皿形に広がり盾のようになった。受け止める気満々のようだから遠慮なく上から撃ち込む。


「「「グウ……」」」


 百発以上は撃ち込んだのにリザッバの受けを崩せない。…………リザッバは動けないようだし、このまま撃ち続けても良いけど、もっと確実な状況を作り出した方が良いはず。そんなわけで僕はリザッバの踏ん張っている足に向かって魔弾を撃ち込んだ。


「「「ナニッ⁉︎」」」


 予定通りリザッバは身体を宙に泳がせた。まあ、一つの事に全力を出している時に足を払われたら誰だってそうなるよっていう話だね。僕は機を逃さず魔弾の軌道を調整して、宙でバタついてるリザッバの身体を下から直撃させ、その反動でさらにに高く打ち上げる。…………うん、良い感じの高さまで上がったから攻め時だ。


「「「キサマ‼︎」」」

緑盛魔法グリーンカーペット純粋なる緑の魔弾グリーンインパクトショット


 大規模魔法一回分の魔力を世界樹の杖ユグドラシルロッドから消費し、宙にいるリザッバの周りに新たに出現させる。だいたい千以上あるから、いくらリザッバが防御を堅めても押し切れるはず。僕は右掌をリザッバに向けた後、ギュッと閉じる。


「集まれ」

「「「ヨクモ、ヨクモーー‼︎」」」


 ズガーンッ‼︎


 リザッバを囲む全ての魔弾が収束して、みんなで攻撃した時よりも大きな爆煙と衝撃波が生まれた。僕は小さな変かも見逃さないように見守っていると、リザッバの破片が飛び散ってきたので僕はもともとあった純粋なる緑の魔弾グリーンインパクトショットの魔弾で徹底的に破片を消滅させていく。


「これだけやれば、一区切りはつけれるはずだけど…………」

「ヤート、やったな‼︎」


 兄さんが僕の肩にガシッと腕を回してきた。そこそこ痛いから兄さんに力加減を覚えてほしいかな。


「兄さん、まだわからないから気を緩めないで」

「なんでだ? あの野郎は、ヤートが消滅させただろ?」

「うん、ヘドロと汚泥の塊だった奴は消滅させたよ。でも、空間が元に戻らない」

「は?」

「それに、まだみんながリザッバの人形と戦ってる」

「あ……」

「何が起きても対応できるように警戒をお願い」

「わ、わかった‼︎ まかせろ‼︎」


 兄さんが再び僕の護衛に戻ろうとした時、空の方からボコンッという音がした。顔を上げると、この空間の空を覆う赤黒い液体のようなものから大きな滴が落ちてくるのが見える。僕は何かまずい事が起きる前に魔弾で撃ちぬこうとしたら、その前に赤黒い球に地面に落ちヘドロと汚泥を吸い寄せていく。…………ああ、なるほど。この後の展開は予想がついたよ。僕の予想通り、赤黒い球をヘドロと汚泥が包むと表面に三つのリザッバの顔が浮かび僕達を見てきた。


「「「ハ、ハハ、ハハハハハハハハハハッ‼︎ イッタハズダ‼︎ キサマラニ、ワレヲ、タオスコトハフカノウダト‼︎」」」

「チッ……、あの野郎、どうやってヤートの攻撃を耐えたんだ?」

「さっき見た事を、そのまま考えるならリザッバは耐えたんじゃなくて復活したんだと思う」

「……ヤート、どういう事?」

「ずっと空を覆ってるあの赤黒い液体が何なんのか気になってたんだけど、あの赤黒い液体はリザッバが復活する時に核になってた。たぶん空の赤黒い液体はリザッバの命とか魂とかで、地面のヘドロと汚泥が身体だね」

「という事は、ヘドロと汚泥と赤黒い液体がある限り消滅しないのですか?」

「そうだろうね」

「「「リカイデキタカ⁉︎ ナンドデモイッテヤロウ‼︎ ワレヲ、タオスコトハフカノウダ‼︎ ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ‼︎」」」


 リザッバの笑い声が響くと、ヘドロと汚泥と赤黒い液体が波打つ。ふーん、リザッバの昂りで荒れるって事は、やっぱり繋がってるのか。……よし、方針は決まった。僕は手にしている世界樹の杖ユグドラシルロッドを足元に差し枝葉と根を伸ばした若木状態になってもらう。


「ラカムタさん、父さん、後で怒られそうだから先に謝っておくね。ごめんなさい」

「ヤート、待て‼︎ 何をするつもりだ⁉︎」

「すぐに、この人形を始末するから待ってろ‼︎」

「「「ハハハハハハハハ‼︎ ムダナアガキヲスルヨウダナ‼︎ オモシロイ‼︎ ミセテミロ‼︎」」」

「それじゃあ遠慮なく。世界樹の杖ユグドラシルロッド実をここにコールフルーツ


 世界樹の杖ユグドラシルロッドは僕の意思を受けて伸ばした枝葉の一本に深緑色の実を一個つけた。これが黄土の村への道中で魔法の触媒にしたものと同じだと察知して、あの時の一部始終を見ていたラカムタさん達と黄土の三人にリザッバの表情が変わる。


「「「……ナルホド、タシカニ、ソレハキョウリョクナモノダ。シカシ、ソレダケデ、コノクウカンヲドウニカデキルトオモウナ‼︎」」」

「それはそうだろうね」

「「「ハハハハハハハ‼︎ ナラバ、ドウスルノダ⁉︎ ワカリキッタ、サイアクノケツマツヲタシカメルタメニツカウノカ⁉︎ コッケイダナ‼︎」」」

「お前が僕達の結末を勝手に決めるな。それにこれを見ても同じ事が言えるのか試してみると良い。世界樹の杖ユグドラシルロッド実をここにコールフルーツ


 僕が必要するものを感じ取り世界樹の杖ユグドラシルロッドは、さらにの実をつけた。これで合計で五個の実ができたね。僕以外の全員の視線が五個の実に集まり全員が顔を引きつらせる。リザッバの人形も動きを止めている事からもリザッバも驚かせられたみたいだ。


「一個一個が大規模魔法一回分の魔力を秘めている。この意味が分かる?」

「「「キ、キサマ……」」」

「これを使ってもお前が消滅しないのかも試させてもらうよ」




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

◎後書き

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


感想・評価・レビューもお待ちしています。

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