青の村にて 鍛錬完了と本番開始
僕は
「イリュキン、僕の鍛錬の習熟度って言えば良いのかな? それはどう?」
「……どうもこうもないよ」
「うん?」
「元々、ヤート君は同調ができるから適性は間違いなくあると思っていたよ。それでも、まさか一刻(前世でいう一時間)で基本をほぼ完璧に身につけるとは思わなかった」
「…………なんかごめん」
「いや、ヤート君が謝る必要はなくて、……ただ、何かを習得するには物事に取り組む姿勢が重要なんだなって思い知ったところさ」
イリュキンが何かを思い出してるのか、なんとも言えない雰囲気になって僕の鍛錬に使っていた器をジッと見ながら、ものすごく小さな声でブツブツつぶやいてる。何を言ってるのかが少し気になるけど、それよりも僕には確認したい事がある。
「イリュキン、僕の流れを知る術は実戦に耐えれるものになったんだよね?」
「…………」
「イリュキン?」
「はっ!! ご、ごめん。うん、その通りで私から見てもほぼ完璧だ」
「そうか。……よし、それなら「ヤート君」」
「何?」
「残りの一刻(前世でいう一時間)は休むようにね。焦りは禁物。安全が最優先だよ」
「…………わかった」
……やっぱり兄さんと姉さんの事で僕は焦ってるみたいだ。普段なら僕は出来る事をして無理や無茶はしないって言ってるのに、これじゃあダメだな。僕は全力で休んで疲れを取るため、膝を抱えて膝の上に頭を乗せて目を閉じて寝た。
パチッと眼が覚める。すぐに立ち上がって寝て硬くなった身体を伸ばしたり曲げたりしてほぐしていく。……頭痛はない。自覚できる疲れもない。念のため自分の身体に同調しても異常はない。部屋を見回すとラカムタさん・リンリー・イーリリスさん・イリュキンが僕を見ていた。
「ヤート、調子はどうだ?」
「頭痛も疲れも取れて、いつもの僕って感じ」
「それなら良い。イーリリス殿」
「……それでは最後に軽い食事と打ち合わせしてから、ヤート殿にガル殿とマイネ殿の意識を調べてもらいましょう」
「わかった」
「軽食を用意するから、少し待っていてくれ」
「イリュキン、私も手伝います」
「お願いするよ。リンリー」
リンリーとイリュキンが連れ立って部屋を出ていく。あの二人は本当に仲良くなったんだね。僕は二人を見送った後にイーリリスさんのそばに座り、兄さんと姉さんの身体に触れて普通の同調しながら聞いた。
「イーリリスさん、兄さんと姉さんの状態はどう?」
「私の感知できる範囲では、お二人の意識に異常ありません」
「僕の同調でも、兄さんと姉さんの身体に異常はない。小康状態を保てて良かった」
「あとはヤートを中心に、このガルとマイネに起こった異常事態を乗り切るだけだな」
「そうだね」
僕はラカムタさんの言葉にうなずき返すけど、僕の短い人生経験の中で嫌な予感や予想は当たるものっていうのがあるから、特にこうなりませんようにとか、こうなってほしくないっていう思いはできる限り鎮めて考えないようにする。例え何かが起こったとしても予想内って考えて、兄さんと姉さんの意識に影響しない範囲で淡々と冷静に異常の排除を進めていくだけだ。
僕なりにやるべき事や考えをまとめていると、リンリーとイリュキンがお盆に皿をいくつか乗せて戻ってきたので、食事しながら最後の打ち合わせをおこなった。
全ての準備と打ち合わせは終わり全員が配置についた。兄さんと姉さんが部屋の真ん中に並んで寝ていて、僕は二人の頭の方に座りイーリリスさんは僕の右隣りにいる。ラカムタさんは兄さんと姉さんの足の方にいて、リンリーは兄さんの横にイリュキンは姉さんの横に座っている。
「それではヤート殿、準備や心構えは良いですか?」
「うん、問題ないよ」
「皆さんも良いですか?」
「大丈夫だ」
「私もです」
「お祖母様、私もいけます」
そんな状況でイーリリスさんが全員うなずくのを確認した後に僕を見る。
「ヤート殿、始めてください」
「わかった」
僕は兄さんと姉さんの頭に触れてから目を閉じて静かに深呼吸した後、手に溜めた魔力を
判断に困っているとブワッと何かが広がる感覚を感じて、さらに広がった奥の方から何かが僕に向かって流れてくるのを感じた。僕がこの向かってくる流れに意識を向けると、黒の村から青の村に来る途中の会話の場面が映像のように僕の頭の中に浮かんでくる。
……映像には僕と兄さんだったり僕と姉さんといった組み合わせが写っているので、どうやら僕は同じ時間・場所の兄さん視点の記憶と姉さん視点の記憶みたいだね。兄さんと姉さんの記憶を受け取れてるんだから、僕の
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューをお待ちしています。
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