青の村にて 達人の片鱗と頭に浮かんだ考え
「
「「ヤート君!!」」
イーリリスさんに押さえ込まれてる様子のおかしい兄さんと姉さんを眠らせるために魔法を発動させようとしたら、僕の持ってた花粉団子が弾けて手が痛い。兄さんの口から少し煙が出てるのを見ると兄さんが口から魔力の弾丸を放ったんだと思う。様子がおかしいのに身のこなしはいつもの兄さんのままとか厄介すぎる。
リンリーとイリュキンが僕の方に来ようとしたけど、今度はリンリーとイリュキンの前の地面がバンッて弾けた。たぶん姉さん両手を振ってたから手に溜めた魔力を弾丸にして放ったんだと思う。兄さんだけでなく姉さんも動きだけはいつものままか。
「いろんな意味で、ものすごくやりづらい」
「同感だね」
「私もです」
ラカムタさんが苦戦した理由がわかるね。兄さんと姉さんの様子から意識はないけど身体に染み込んだ動きはできてるみたいで、僕もリンリーもイリュキンも一瞬どうした方が良いのかわからず動きを止めたら、兄さんと姉さんの身体から魔力が一気に放出された。
「無意識の
「……私が気配と姿を消しながら攻撃しても、二人の耐久力を抜くのは難しいですね」
僕達が攻めあぐねていると、兄さんと姉さんは二人を動けなくしているイーリリスさんの手をつかみにかかる。兄さんと姉さんの握力に
「お祖母様!!」
「イーリリスさん!!」
リンリーとイリュキンも僕と同じ事を考えてイーリリスさんへ叫んだけど、すでに遅くて兄さんと姉さんはイーリリスさんの手をつかんでいる。僕はすぐに薬草団子を取り出そうとすると、イーリリスさんの落ち着いた声が聞こえてきた。
「イリュキン、ヤート殿、リンリー殿、大丈夫ですよ」
「「…………、ッ?!」」
「「「は?」」」
……わけがわからない。なんでかイーリリスさんの手をガッチリつかんで握りつぶそうとしていた兄さんと姉さんが、突然回転してベシャッと地面に叩きつけられた。ただし、イーリリスさんは、
「「ッ!!」」
「あら? 本当に意識が無いとは思えない素晴らしい反応ですね」
兄さんと姉さんは地面に叩きつけられた後、すぐ跳ね上がるように動いてイーリリスさんの手を払い除け押さえつけられていた身体の自由を取り戻す。普通なら叩きつけられた衝撃で反応が遅れたりするものだけど、兄さんと姉さんはまるで何もなかったかのように動いてる。本当に意識が無くて痛みとかを感じてないみたいだ。……王城で出会った
こういう事を思い出せなかったんだから、やっぱり僕も今の状況に慌ててたようだ。一つのとっかかりができて僕の頭の中で考えが浮かんでくる。兄さんと姉さんは操られてる。操られてるなら二人を操ってる奴自体か、二人を操ってる方法をなんとかすれば良い。……あれ? それならなんで兄さんと姉さんは操られてるんだ?
「……そういう事か。リンリー!! イリュキン!!
「わかりました!!」
「了解した!!」
すぐにリンリーとイリュキンが移動して、
「ヤート君、どういう事か説明してもらえるかな」
「兄さんと姉さんは明らかに何かに操られてる。これは確かな事として僕が疑問に思ったのは、その目的」
「ガル君とマイネさんを操る目的ですか……?」
「操ってるって事は何かをさせたいって事だよね? きっと兄さんと姉さんを操ってる奴は二人を
「あ、青の村に着いた初日の夜にガルとマイネは
「もう一つ。
「
「いったいそれがなんだと言うんだい?」
「今、兄さんと姉さんを操って、
「え……?」
やっぱりそういう反応になるよね。
「もっと言えば
「なるほどヤート殿は、
「うん、考え過ぎかな?」
「私もヤート殿の考えに賛成です。私を警戒しつつもガル殿とマイネ殿は、スキあらばヤート殿達を飛び越えて
イーリリスさんは、この状況で兄さんと姉さんの重心とか筋肉の力み方を見切ってるらしい。さすがに同調できる僕でも、これはわからないな。実戦経験の差か……って、余計な事を今は考えたらダメだ。このまま兄さんと姉さんを連れて行かせない。絶対に元に戻す。
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
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