ep.6 森の中で
霧に覆われた森を歩き、エクス達は油断無く進んでいく。
「ほんとに霧が凄いですね……向こうが見えない程だなんて…」
ティエラは視界が殆ど役に立たないと割り切ると理解すると、即座に視界ではなく音や森の奥から微かに感じる風を頼りに魔物がいるかどうかを確認しはじめていた。
エクスは足元に注意を払いながら進み、時折聴こえてくる音に警戒する。
「うん…ここで魔族に襲われたら少し厳しいかもしれないね……」
視界が悪い上に、魔族の身体能力は人のそれを遥かに凌駕している。
また魔法にも長けている為、霧に乗じて攻撃するなんて事も考えられた。
エクスの不安そうな声にトーフェは溜息をつく。
「はぁ……気配と殺気を感じ取れば問題ないだろう、童子…」
「殺気はともかく気配を感じながら戦うのって大変なんですって……」
そう会話をしていると少し気まずそうにティエラが口を挟む。
「どっちも私には無理ですね…」
トーフェが意外そうな表情を見せる。
「童子はともかく、ティエラも難しいのか?」
「はい……魔力ならわかり易いんですけど……それもこの森に入ってからなんか調子良くないですし……」
エクスが心配そうに顔を覗き込む。
「大丈夫?少し休憩する?」
エクスの言葉にティエラは首を振って訂正した。
「あ、いや、体調が悪いのではなくて、魔力の感知がしづらいって事です」
ふむ?とトーフェが疑問の声を上げるとティエラは説明する。
「なんて言うか、ここの森。魔力が濃密過ぎるんです。本来、ここまで魔力が多い事は有り得ないんですが…」
「魔力が多い……?」
トーフェが考えながら歩き進めていくと、何か薄い膜を通り抜けた感覚に襲われる。
「………?今何か感じなかったか?」
振り返りティエラとエクスに確認するが、首を振って否定する。
「トーフェさんは何か感じましたか?」
エクスが問うが、気の所為だったかと思い直す。
「すまん、勘違いみたいだ」
口に出して、何処か捻じ曲がったような感覚に陥る。
「「もう、トーフェさん……おどろかせないでくださいよ」
声が不自然に重なって聴こえる。
トーフェは不審に思いエクスに問う。
「………まて、童子、いまお前の声が……」
もう一度振り向き
「む………童子?」
背後に誰も居ない事に気が付く。
「ティエラ……?」
既にその場にはトーフェ一人しか居なかった。
「……幻覚魔法か?使われた感覚は無かったが……いや、先の変な感覚に陥ったあれが……?」
少し戻り辺りを確認するが霧の奥までは確認出来ず、また音すら聴こえなかった。
「足音どころか葉を踏む音すら聴こえないのは有り得ないだろう……?森の中だぞ……?」
足元には枯れた葉や木の枝が落ちている為、一歩進めばパキ、パキと聴こえる。
にも関わらず孤立するこの状況が唯ひたすらに不可解であった。
「くそ……一度戻るか……?進むか…?」
先程まで進んでいた道を睨みつけ、トーフェが思案していると森の奥から人影が薄らと見えた。
「……おまえは………」
その姿にトーフェは目を見開いた。
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