ちびっ子は妖精の長



巨木の中は拓けた空間となっていた。

妖精さん達がこんな空洞を作り上げたのなら凄い。

しかも、ただの空洞って訳でもない。よくよく凝視してあちこちを見渡すと小さな家がいくつも建っている。

そこから妖精さん達が出入りしている。

妖精さん達のリアルミニチュアハウス。


近くで見ろとでも言うように引っ張ってくるので遠慮なく見させてもらう。

凄い、妖精さんの持つコップから玄関の扉まで全てが精巧に細かいデザインも施されている。


ちゃんと暮らせるようしっかりと造られていて素晴らしい。


自慢する妖精さん達は凄い凄いと驚く僕に気分良くしたのか、こっちも見てあっちも見てと引っ張りだこ。


キラキラと目を輝かせて本当に可愛らしい。

いくらでもお付き合いしますよ。



しばらくは妖精さん達による各家の自慢大会が続き、さすがに200軒を越えた辺りで疲れてきた。

それでも、まだまだお家はある。

ちょっと休憩を挟ませてほしい、けど尚も妖精さん達は次へ次へと連れて行こうとする。

チビうささんとヴァルさんはまだ平気そうで羨ましい。




「これこれお前達、少しは客人を休ませてやるのじゃ。」



急な呼びかけに妖精さん達は動きを止める。

女の子の声?


きょろきょろ辺りを見回すけど出所が分からない。


「ふっふっふ、ここじゃここ。」


声は上から。


見上げると腕を組み仁王立ちスタイルで舞い降りてくる女の子。

でも、普通の女の子ではない。

なぜなら妖精さんと同じく背中から煌びやかな羽根を装備しているから。

やけに貫禄もある。



この子は誰だろう?



僕の疑問を答える前に、少女は全く重力を感じさせない着地を終える。

そして、ずんずんと僕に近づいて来る。

多分、妖精さんのお仲間と思うけど人に近い容姿と会話可能のせいで目線を逸らしてしまう。



「む、本当に人見知りのようじゃのう。安心せい、儂も妖精じゃ。まあ妖精でも妖精王に位置するがのう。」



妖精は妖精でもトップの人?でした。

でも、僕達は初対面のはず。

どうもこの方は僕を前から知っているような口ぶりだ。


「す、すみません。つい症状が出てしまいました。も、もう少し慣れれば大丈夫だと思います。それで、あの、初めてお会いすると思うのですが、どうして僕のことを?」


「うむ、急かしはせんよ。ゆっくりと慣れるのじゃ。お主を知っているのは当然じゃ。儂の友人からよく聞かされておったからのう。」


「友人?」


「うむ、友人の神様じゃ。」



ん?

神様?




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