僕と積極的彼女

葉月 悠

彼女と告白

「私と付き合ってください!!」


僕は誰もいない空き教室で現在進行形で告白されている。しかし分からない、僕は高校に入学しから1年ろくに女子と話したり関わりを持った記憶が無いのだから。それに彼女は学校で1番かわいい上スタイル抜群、男が好きになる要素が全て入っているとも言われ男子にはファンクラブもあるくらい人気ものなのだから


「...えっと、たしか同じクラスの渡辺さんだよね。僕の記憶だとあんまり関わったことないはずなんだけど」


「半年前位に池内君が村田君をやっつけてるのを見てそれで一目惚れしちゃったの。だから私と付き合ってください!!」


村田君とはこの学校の不良の親玉みたいな3年生だ。渡辺さんには僕が廊下で村田君とぶつかって向こうが喧嘩売ってきたので返り討ちにした所を見られたらしい。一応人目には気をつけたはずなんだけどな


「ごめん。僕はまだ君のことをよく知らないから付き合えない」


「そうだよね...でも私まだ諦めないから」


そう言って少し涙目になりながら渡辺さんは帰っていった


******


翌日の朝

僕はまだ寝たい気持ちを抑えながら起き上がり朝食と弁当を作り始める。いつもより早く作り終えボーッと見ながら飯を食べていると見知った名前が出てきた


『藤野 彰容疑者は先月路上で同年代の男性に暴力を奮っていたところを警察に.....』


「また捕まっちまったか...」


僕は中学時代やんちゃしていた。やんちゃなんて聞こえはいいが思っているほど可愛いものじゃなく暴力や脅しを日常的に行っていた。

気づいたら舎弟が増えてきてリーダーのようになってきてこれからって時に幼馴染の海斗に止められた。海斗は俺に何度殴られようとも折れずに止めてくれ、最終的に俺が折れて辞めることになったのだ。

舎弟共にはできるだけ辞めることを勧めつつ辞めないやつには一般人には手を出すなよと年を押したはずなんだが、またひとり捕まってしまったようだ


そんなことを思い出しつつ学校に行く準備をする。歯を磨き、着替え、荷物を用意して靴を履く


「行ってきます」


誰もいない家だが習慣となっている。そして玄関を開けると誰かが家の前にいた、渡辺さんだ


「おはよう!智也君!」



「お、おはよう渡辺さん。どうしてここに?」


「どうしてって私諦めないって昨日言ったでしょ?だから今日から迎えに行くことにしたの」


僕の平穏な日常は今日幕を閉じたようだ。



「智也君はいつもこのくらいの時間に家出る感じ?」


「そうだね。なんで急に下の名前で呼んだの?」


「なんでって私今日から智也君に好きになってもらえるように努力するって決めたから」


と笑顔で言ってくる。僕だって男だ、学校で1番かわいいとも言われる女の子から下の名前で呼ばれそんなことを言われたら照れる


「照れてるの?」


「照れてないよ」


と言いながら笑ってくる。心底楽しそうだ

そんなら会話をしていたら学校が近づいてきて徐々に視線を感じるようになってくる、気のせいだろうと無視して教室に入る

一瞬マンガのように空気が止まった気がした。


「おい、池内。なぜお前と渡辺さんが一緒に登校してるんだ?」


「あっ、いや、えっと」


「私が昨日智也君に告白したからだよ」


「「「......」」」


「「「えええええええ!?!?!?」」」


少なくとも2個隣の教室までは届いていただろう。それと同時にクラスの男子が倒れたり睨んだりしてくる。


「ってことはお前ら今付き合ってるってことだよな?」


「いや、告白は断ったよ」


「「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」


何とも賑やかなクラスだ。


「あいつホモなんじゃね」

「そんなことより渡辺さんの告白断ったんだろ?どうするよ」

「東京湾に沈めるしかないな」

「俺明日縄持ってくるわ」


などと恐ろしい話も聞こえるが気にしたら負けだ

席につくと海斗が寄ってくる


「智也、ほんとに付き合ってないのか?」


「海斗まで言うか、ほんとに告白されたけど断ったよ」


「昔のこと気にしてんのか?」


「少しだけな」


実際、渡辺さんのことを全く知らなかったこともあるが、自分の過去を考えると自分にまともな彼女などいてしまっては迷惑かけてしまうと思ったこと断った理由の一つだ


「今日も昔のやつが1人捕まっちまったからそういうのに巻き込みたくないんだ」


「気持ちは分からないでもないけどお前は足洗ったんだから俺はいいと思うけどな」


「まぁそのへんはおいおい考えとくよ」


そんなこんなで授業が始まる。

授業中はゆっくり出来ると思っていたが間違いだったらしい。男子は終始睨んできて先生が誰か指そうとする度に


「先生!池内君が分かったみたいです」


と毎回行ってくるもんだからたまったもんじゃない。結局いつもの2倍位体力を使って昼休みに入る。ほんとに腹ぺこだ


「池内ー飯食おーぜー」


「おっけー」


と言って弁当の準備をしていると


「智也君、私お弁当作ってきたんだけどこっちも食べて」


と言いながら出した弁当は明らかに手作りで冷凍食品の影も形もない


「これ手作りだろ?何時に起きたんだ?」


「いつもより少し早いくらいだよ」


『手作り』という言葉に反応してまたクラス男子から睨まれる

今日だけで何回睨まれたのだろうか

しばらくすると渡辺さんが立ち上がる


「ごめん。この後屋上に呼ばれてるんだ」


「友達?」


「いや、多分告白」


と言って手紙を見せてくる


「下駄箱に入ってたんだ。それじゃ行ってくるね」


と言っていってしまった


「渡辺さんやっぱモテるんだね」


「そりゃそうだろ。1日1回告白されてるって噂だぜ」


「そんな人が俺に告白ねぇ。そりゃ睨まれるわな」


「まぁ智也に関して言えば今まで必要最低限しか会話してないからね」


「要約すると」


「友達少ないから」


「なるほど」


そんな会話の後授業が始まる

午後はどうだったって?

相変わらず体力を2倍使ったよ


「やっと帰れるー」


「確かに今日は智也にはキツかっただろうね」


「ホントだよ。じゃっまた明日ー」


と言って下駄箱に向かう。

なんだろう、俺の不幸は終わっていない気がする

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