第116話 4人の容疑者

 サニーはゼロハチ小隊の面々を見渡した。

「あたしの推理はこうです。

 まず、風間 黒男が殺されたときの状況を考えてみましょう。あのとき、銀行の中で黒男を人質にとっていたのは、ネズミ娘とチヒロの二人ですね。この二人がカウンター席をはさんで、アームド先輩とジーパンと対峙たいじしてました。

 ジーパンの話によれば、あのとき、ジーパンは魔法でチヒロを取り押さえましたし、ネズミ娘はアームド先輩の投げたマジカル手りゅう弾パインを魔法で防ぎました。したがって、誰も凶器のビーストランスを投げた者はいないのです。にもかかわらず、そのランスは被害者の胸へ突き刺さっていました。このことは実に不思議です。誰が投げたのでしょうか?」

 コムラが口をはさんだ。

「なあ、サニー。そういう場合は、魔法を使ったと考えるのが自然じゃないか?魔法少女がビーストランスを自由に動かして刺したんだよ。魔法で、グサッとさ」


「コムラ先輩。当時は、魔法退散フィールドが銀行内部で働いていました。よって、魔法で物を動かすことができないのです。とはいえ、確かに、魔法を使うというコムラ先輩の発想は自然です。

 そこで考えられるのは、透明になった第三の魔法少女がビーストランスをこっそり被害者へ刺したという可能性です。当初から、警察はこの考えに傾いていました。しかし、あたしは別の可能性も検討に入れていたのです。

 この別の可能性というのは、後で詳しく言いますが、とりあえず、その話をわきに置きましょう。

 ところで、警察は第三の魔法少女を探さないことには話が始まりません。県警の刑事は優秀なので、第三の魔法少女を事件発生からわずか半日足らずで発見しました。それが自殺したヒノコです」


「だったら、殺人事件の犯人は、そのヒノコだわさ。透明になったヒノコが風間を殺した後、自宅に戻って自殺したのだわ」と黒子が断言するかのように言う。

 コムラも隊長に同調した。「そうだな。17歳さんの言うとおりだ。おい、サニー。そのヒノコが真犯人だ。ヒノコは強盗の一味だったんだよ。けど、仲間割れをしてしまい、風間を殺して、後悔のあまり、自殺したんだ。間違いない」

 実はと言うと、好子も、この二人の考えに賛同していた。もし、うまくいけば、自分が事件の容疑者から外れることもできるからである。

 しかし、そうした考えをサニーは否定した。

「いいえ。違います。ヒノコは犯人でありません。彼女の日誌に書いてある通り、彼女はやじ馬にまぎれて遠くから見守っていたのです。彼女は銀行へは足を踏み入れてません。よって、被害者を殺していません。

 すると、殺人事件の容疑者は、次の4人にしぼられるのです。

 まず、被害者を人質に取っていたビリビリのネズミ娘。それと仲間のチヒロT1000。さらに、ビーストランスの所有者であるアームド・レディ先輩」

 ここで、サニーは一呼吸置いた。

「そして、あたしの相棒であるジーパン。――この計4人のみが殺人を犯しうる容疑者なのです」

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