第8話 妹メイド
父と母が正式に籍を入れた、お互い色々と仕事が忙しくまだ同居はしていない……
でも……泉は既に僕と一緒に暮らし初めている……あ、毎日じゃないよ、えっとこの1週間で4日位? 部屋はとりあえず母の部屋を使って貰った。僕が物心付く前から主の居ないガランとした部屋、僕も父も掃除はするけど、物置にしたり、何かに使ったりはしなかった、出来なかった……
そして今日から薬師丸 泉は佐々井 泉となり正式に僕の妹になった。
泉とは毎日学校に一緒に行き、一緒にお昼を食べて、一緒に帰る生活が1週間続いた……泉の周囲は泉に「どういう事!?」「何があったの?」「脅されているなら警察と弁護士に知り合いが……」と言う話しを頻りにしているのが僕の耳にも聞こえていた……えっと、とりあえず最後の奴は許さない……
泉は「後で話すから心配しないで」というだけでクラスの皆に一切の説明をしなかった。
僕と泉が付き合ってるって思う人は居ないですよね、そうですよね……
とにかくカースト底辺の僕と、カーストトップの泉との不思議な関係がずっと続いていた。
そして金曜日夜、父さんと母さんが役所に婚姻届けを提出し晴れて正式に結婚した。
まあお互い色々あって式とかは挙げないらしい、ただ写真撮影だけはした方がと、泉が二人に進言、じゃあと、とりあえず土日に撮影兼新婚旅行に行くと言う事に相成り二人はそのまま旅行に行った。
「お兄様、正式に私達兄妹になりました!」
「あ、うん……そうだねえ」
「嬉しい……凄く……嬉しい……本当のお兄様……私のお兄様……」
「……」
今僕の目の前には超絶美少女がメイド服を着ながらうっとり顔で僕を見つめている。
そう泉はメイド服を毎日の様に着てくれていた。
そしてメイド服を着ている時は妹メイドになりきる……え? 妹メイドって何かって? じゃあこの間の休日の話をしようか……
あれは土曜日の朝だった、学校は休み、ゆっくりと惰眠を貪っていた僕の耳元から、鈴の音の様な心地よい音が聞こえてきた。
「お兄様……お兄様」
僕はゆっくりと目を開けると、僕のすぐ目の前に天使がいた……いや泉がいた。
「うわわわわわわ」
最近うちに泊まる事はあっても、起しに来る事は、部屋に入ってくる事は無かった、のに?
「おはようございますお兄様、朝食の用意が出来ましたので、起こしに参りました」
「あ、えっと、うん、あ、ありがと……」
慌てて飛び起きベットの上で正座をして泉に向き合う。
「あ、申し訳ございません」
「えっと……なにが?」
「お兄様がお目覚めのキスを何処にして欲しいか聞いてませんでしたので、今日はしませんでした」
しょんぼりとする泉……は? キス? 天ぷらとかの?
「明日からはきちんと致しますので、お兄様のご希望をお聞かせ願えれば」
「いや、大丈夫、普通に起こしてくれるだけで……」
「そうですか……では毎朝お越しに来ますね」
「あ!」
キスに気を取られ、僕は休みの日にゆっくりと寝る権利と泉が僕の部屋に勝手に入る許可を与えてしまった……マジか……
「では、お着替えのお手伝いさせて頂きますね」
そういって僕のパジャマのボタンに手を掛けるって、えええええええええ!
「いや、ちょっと待って、出来るから、大丈夫だから、一人でできるもん!」
「そうですか……」
「あ、うん……えっと……着替えてから行くから、先に食べてて」
「いいえ! お兄様が手を付ける前に食事を先に頂くなんて出来ません、妹としてもメイドとしても!」
「メイドとしても? ああ、コスプレじゃなくてメイドになりきってるのか……」
だから起こしてくれたり、着替えの手伝いをしようとしたりしてくれたのか……
「お兄様?」
「あ、うん、じゃあすぐ着替えて降りるから待っててくれる?」
「はい、お待ちしております」
一礼をして部屋を出ていく泉……好きな人、憧れの人がメイド姿でお世話してくれる……そんな夢みたいな事が今現実に目の前で起こっている。凄く幸せ…………のはずなのに、なんだろう、このモヤモヤした感覚は。
とりあえず僕は着替えてから階下のキッチンに向かう……でも兄妹ってこう言う物なの?
一人っ子だし、兄妹のいる友達なんていないし、そもそも友達いないし。
僕は妹との、泉との距離感を掴めないでいた。
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