第13話 強盗団
「い、痛い、離せ」
「この野郎」
仲間の一人がナイフを持って切りかかって来たが、カナレは掴んでいた男を切りかかって来た男に向かって突き出した。
すると、掴んでいた男のナイフが切り込んで来た男に刺さり、切り込んで来た男のナイフも掴んでいた男に刺さった。
「「ギャー」」
男二人が声を上げる。
残りの一人の男は二人が怪我をしたのを見て気が動転したようで、あたふたとしている。
俺とカナレは三人の男たちを尻目に駆け出し、公園から逃げた。
「カナレ、大丈夫か?」
「私は、大丈夫です」
「あいつら警察に駆け込むと、こっちも何か言われかねないな」
「向こうがナイフを持って襲って来たのに、こちらが何か言われる筋合いはないです」
「それはそうなんだが…」
「翌日、TVを見ていたが、襲って来た連中のニュースは流れてなかった。
警察や病院に行くと、怪我をした理由を話さなければならない。
今までも同じような事をやって来たのだから、警察に行けば墓穴を掘る事になる。
かと言って、病院に行っても同じだろう。ナイフによる裂傷だと警察に通報される。
だが、重傷になると否が応でも病院に行くだろうし、その時は俺とカナレの事も警察に分かるかもしれない。
俺はびくびくしているが、カナレは至って平気な顔をしている。
「カナレって、肝が据わっているな」
「そんな事は、ないと思いますよ」
「俺はいつ警察が来るかとドキドキしているよ」
俺とカナレは襲ってきた連中か、その仲間も居るかもしれないので、近道の公園は通らない事にしたことから、バイト先や大学に行くのに5分ほど余計にかかるようになった。
そんな時、TVでニュースが流れた。
深夜、帰宅する人を狙った強盗が多発しているという事だ。場所は例の公園を中心とした所らしい。
「カナレ、これって例のやつらかな?」
「仲間かもしれません。ちょっと、調べましょう」
夜になると、カナレは猫の姿になって、部屋を出て行った。
そんな事が2,3日続き、夜中にカナレが帰ってきた。
カナレの報告によると、例の公園は警察も警戒していて、常に警官がパトロールしているそうで、そこに強盗と思われる仲間はいなかったそうだ。
だが、街の中にはその仲間と思わしき男が数人でグループを結成し、歩いているとの事だった。
そのグループも3グループほどあって、仲間は全部で10人ぐらいとの事だ。
その中には、怪我をした男2人は入ってなかったが、怪我をしていない男を見つけたので、襲ってきた仲間とみて間違いはないだろうとの事だった。
その男たちは3,4人で、帰宅するサラリーマンを襲い、強盗しているようで、親父狩りに会っている人もいるらしい。
「10人か、だとするとどうするかだな」
「また、猫だましで誘い出して、裸にしますか?」
「それもいいが、夜遅いから見ている人もそう居ないだろう。そうすると効果は薄いんじゃないか?」
「そうですね。では、どうしましょうか?」
「後は警察に任せよう。パトロールも強化しているようだし、どっかに行ってくれればそれに越した事はない」
カナレとそんな話をしていたが、被害は一向に減らなかった。
警察もこの事態を重く受け止め、最近ではしょっちゅうパトロール警官を見かけるようになったが、それを笑うかのように事件は発生している。
俺とカナレは、そんな事が続くので、バイトの帰りはカナレと一緒に帰るようにしている。
ケーキ屋の美佐江さんやレストランの店長はそういう事件があるので、俺が心配して一緒に帰っていると思っているらしいが、実は俺の方がカナレに守られている。
カナレと一緒に歩いていると、パトロール中の警官に止められた事も一回や二回ではない。
大体が、「最近、物騒だから気を付けて帰るように」との忠告だ。
その日もハバイトが終わって、カナレと一緒に帰っていたが、今日に限って警官の姿を見かけなかった。
俺とカナレは公園横の路地を歩いていると、ちょうど公園の横が工場になっている場所があり、そこは人気がない。
すると、公園から4人の男が出てきた。
「アニキ、こいつらです」
「ほう、話に聞いたとおり、いい女じゃないか。その女は俺が可愛がってやるか」
どうやら、いつかの強盗の仲間のようだ。
アニキと呼ばれた男はドスのような物を取り出すと、右手に持った。
「金を出すなら、半殺しで勘弁してやる」
見ると、残りの男たちも右手にナイフを握っている。
カナレがアニキと呼ばれた男の前に出た。
「この女、なかなか、いい度胸しているじゃないか」
だが、直ぐに男の目から正気が失われていく。
アニキと呼ばれた男は、右側に居た男を見るといきなり、ドスをその男の腹に突き刺した。
「ア、アニキ、何をするんですか」
左側に居て、最初に声を出した男が言う。
その後、アニキは左側に居た二人もドスで襲った。
俺とカナレはそれを見て、公園の中に逃げ、木の間の人から見つからない所に来た。
「ご主人さま、ここはさっさと逃げましょう。今から猫の姿になりますので、私に乗って下さい」
そう言うと、カナレは猫の姿になったが、いつもの小さな姿ではなく、ストーカーを殺した時のような虎ぐらいの大きさだ。
「カナレ、頼む」
俺はカナレに跨ると、カナレの体毛が俺に巻き付いてきて、俺は手足をカナレに固定された。
それを確認したカナレは、駆け出したが、そのスピードはかなり速い。
カナレは地面だけでなく、家の屋根をも駆けて行く。
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