第22話 大学生、しくじる。
石神サンが倒れた……
「「石神サン!」」
浅野先輩が同時に手を伸ばすから、狭い玄関で押しくらまんじゅう。
この一刻を争うと言う時に、玄関に挟まって2人して石神サンに手が届かない!!
ってか、邪魔! このメス、すっごい邪魔!!
「ちょ、浅野先輩、悪いんですけど引っ込んで貰えませんかっ?
コレじゃ、石神サンを介抱できないんでッ、」
「ゅ、由也クンこそッ、……ちょっと、何よ、この玄関 狭すぎるッ、」
無駄に胸とかケツとかデカイから嵩張るんでしょぉがぁ!
「取り敢えず、部屋に運ばないとッ、先輩はどいてください!」
「私も手伝うから!」
「力仕事は男に任せてくださいよッ、」
「由也クンみたいなヒョロヒョロが、1人で石神サンを持ち上げられるわけ無いでしょ!?」
何だとぉおぉおぉおぉ!?
「ぉぉぉ、男ですから俺ぇ!! 鍛えられてますから、俺の体ぁ!!」
「イイから、どいてぇ!」
「そっちこそ、どいてください!」
ギュぅギュぅギュゥギュぅって、
こんなにも女体が煩わしく感じる事がある何て思いもしない!
もぉ、本当、本当にもぉ、
「帰ってくださーーい!!」
俺の遠吠えに、浅野先輩はビックリしたみたいで腰を抜かす。
その隙に俺は石神サンに駆け寄り、浅野先輩を振り返る。
「俺、隣人なんで!
女の人に片付いて無い部屋とか見られるの、石神サンも嫌だと思うから!
ドア閉めて! 踵を返して! カンバックホーム!!」
「は、はぃ……」
俺の猛威に押し負けて、浅野先輩はソロソロと石神家のドアを閉める。
{ 勝 っ た !! }
って、勝利に酔っている場合じゃありません。
額を触れば、石神サンが随分な高熱に魘されているのが分かる。
早く布団に寝かして、頭を冷やして上げなくちゃ!
{もしかして、朝から具合が悪かったのかな?
ソレなのに俺の部屋の鍵まで心配してくれて、朝ゴハンまで一緒してくれて、
何て良い人なんだろう……}
心の中とは言え、チャライなんて連呼して ごめんなさい。
人は見た目で判断できない。石神サンはソレを地で行く人です。
{だから俺は、石神サンの事が好きで好きで堪らないんだ……}
「って、好き?」
{俺が? 石神サンを?}
自分の呟きの意味が良く解からないまま、石神サンを肩に担いで奥の部屋のドアを開ける。
「――って、」
目の前に広がる世界は、
パソコンと、オーディオインターフェイスと、キーボードにギター、マイク、
高価なラックのエフェクターが山積みにされた、まさに音楽人の空間で……
「どぉ、ゆ、事……?」
俺が驚いているのは、部屋の壁いっぱいに貼り付けられた段ボール何かじゃなく、
窓枠に張り巡らされたガムテープじゃなく、
コレ等は全て、防音の為の処置である事だったり、
プロ級の機材で埋め尽くされているって事であったり……
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