第12話 作曲家、心頭滅却。
ラブホで浅野サンにガッツりハメて帰宅したのは深夜の1時。
丁度 襤褸アパの前に着いた所で、浅野サンからメール。
【面と向かっては言いにくかったけど、すっごく良かったよ!
また連絡して! 待ってるから!】
どぉやら お気に召して頂いたみてぇで。
男冥利に尽きますねぇ~~
(落ち着いた。オレは やっぱり健全だった。だってメチャ気持ち良かったから)
『実は私、石神サンは由也クンに目ぇ付けてるんだと思ってた。
あのレベルになると、同性でも良いですって男もいるのよ。
ソレも、結構な頻度で!』
(浅野サンの世間話にはチョイチョイぞっとさせられたけど、
ユーヤ君に一目ボレしたのは、あくまで女の子だと思い込んだからであって、
男だと分かってたら、あんなバカげた妄想はしなかった)
『後輩から聞く限り、あの子あぁ見えて結構 遊んでるッポイのよね。
育ちがイイから、レディーファーストとか完璧なんだって。
ソレに、アッチの方も上手いって、女の子達が良く噂してる』
(年頃だもんねぇ)
ユーヤ君も男だ。女の子に興味を持つのは男として普通のコトで。
まぁ、噂される程 取っ替え引っ替えってのは正直 驚いたけど。
(まぁ、あの身なりだから。女の子も興味持つでしょ。かく言うオレも……)
部屋の鍵を開けるよりも前に隣室を見やる。
(電気、点いてる? 帰って来てるのか?)
台所の小さな曇りガラスに ほんのり灯りが透けて見える。
ベッド脇に置いてあったスタンドライトのものかな。
……
……
(まさか!! お持ち帰りか!?)
カーーッと頭に血が昇る。
いや、ムカついてとかじゃなく、もぉホント、何つぅの!? テンションが!!
オレは慌てて安全確認。今のトコ、外に声は漏れてない。
その隣は、確か老夫婦だったから、耳は遠いと思うんだ。
だから大丈夫だとは思うけど……オレは このまま部屋に戻ってもイイのかぁ!?
(日が昇るまでココで立ち往生してたら、間違いなく通報されるわ……
つか、もぉこの時間だし、終わってる……よな?
そうでなきゃヘッドホン被って打ち込みしちゃおぉよ、オレの方の仕事は終わってねんだから)
そぉっと そぉっと。
音を立てずに鍵開けて、自分ちだってのに息を殺して部屋に帰る。
段ボールハウスが功を制してんのか、しんみり静かなもんだ。
オレは肩を撫で下ろして、パソコンに向き合う。
「ま。事なかれ事なかれ」
『才能、使い切っちゃったンぢゃん? あのCMで』
パソコンの電源を入れた所で、合コンでハタチの小娘に言われたコトを思い出すからタイミング悪い。
「はぁ……そぉかもね。
つか、そもそも使い切るだけの才能なんてあったンかねぇ、オレにぃ」
不思議とムカつかんのよ。だって、図星だから。
宝クジに当たったよぉなもんで、ソレって才能だとか日頃の行いとかは関係無いって思うんだ。
その瞬間に強運サマが舞い降りたってだけ。
ソレに、運ってのは限りがあると思うんだよね。
いつか使い切る消耗品だと思うんだよね。
流行があれば廃りもあるし、物事って大概そんなサイクルになってるでしょ。
だから、新しい物が産まれる。ドンドン産まれて進歩する。進化する。
「ンで。浸ってンのよ、オレは。過去に脚光浴びたオレ自身に」
そんでもって羨望してる。過去のオレ自身に。
『由也君、石神亮太郎のファンなんですよ!』
「過去のオレのファン……か、」
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