おとなりダーリン。
坂戸樹水
第1話 作曲家、恋に堕ちる。
オレは
ホント、募集中。マヂで。ガチで。リアルに。よろしくネ。
職業は、何と 作 曲 家 。
テレビの中で歌ってるアーティストに曲を提供しちゃうんだよね。
安定感バツグン、縁の下の力持ち。めっちゃカッケーよ。
「今月も何とか仕事が入りましたとさ……」
まぁ、初っ端から話し盛りましたケド、ハイ。
今月の作曲依頼は2件だよ。新人アイドルの1stアルバムの頭数だよ。
プロデューサーからは『クソでもイイから早よ上げれ』とか言われたよ。
「オレ、根っからの天才肌だからクソ曲とか書けねんだよねぇ。神曲だっつの、くらえ!」
毎日 向かい合うパソコンが話し相手。
制作ソフトにカチカチ打ち込み。ギターとピアノは自分で演奏。
曲やらアレンジはね、コツコツ努力の積み重ねで出来上がっていくんよ。
血と汗と涙と妄想の結晶だっつのよ。肩凝るっつのよ。
「ラブソングとか失恋の曲とか、もぉだいぶ飽きて来たんスけどぉ、」
アイドルの曲だから、カワイく。ハートフルに。
頭ん中 お花畑でシャラララ~~なメロディー。
転じてオレの脳内構造もシャラララ~~になってく。コレ、職業病。
って、テンポ良く作っている最中、隣の部屋が騒がしい。
ガタッ、ガタガタッ、――ガタン!
「何だぁ?」
この薄壁のボロアパートで騒ぐ輩はオレくらいだっつの。
ってか、このオレでも楽器は生音では弾かない。ヘッドホンでリスニング。
然も、昼間に限りと念入りに苦情対策してるってのに。
ガタッ、ガタガタッ、ガタガタ!
ガガガガガガガガ、ドン! ガタン、ガタン!
(うーー、集中できん!! 起立! オレ様、前へ進め! 目指すは お隣サン!)
一言二言 言ってやろうよ。
『うるせぇバカヤローとっとと出てけクソッタレ』くらい、面と向かって言ってやろうよ。
オレは薄っぺらい玄関ドアを開け、金髪をワシャワシャ掻き混ぜながら外に顔を出す。
(ありゃ? 引っ越し業者?)
そう言やぁ先月から隣は空き部屋だった。
どうやら新たな入居者がやって来たようだ。
今日は休日だし、晴天だし、引越し日和だよね。
(うーーん、引越しなら しょうがねぇか……)
おおらかに許してやった所で、隣人が部屋から顔を出す。
(ぇ、えぇ!? 何、あの美少女は!!)
栗色のショートカットが お似合いで、お人形のように目が大きくて、
睫毛ギュンギュンの、ソレでいてギャルってナイ爽やか系女子!!
コンパクトで手足も細いし、あぁ、コレって理想系アイドルじゃねぇの!?
(目、目が合った! ヤバイ! オレ、寝癖!!)
美少女はオレを見つけるとニッコリと愛想の良い笑みを浮かべて、テンテンテンと小走りで駆け寄って来る。
うわぁ、何コレ、可愛いんですけど!!
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