第36話 JAGUAR
子供の頃、ブランドのスニーカーが流行っていた。
欲しいとは思わなかった。
ナイキ・アシックス・プーマ…人気があったのは、そんなブランドだったと思う。
自分には縁の無い物だと思っていた。
貧乏だったし、特にスポーツをしていたわけでもない。
ある日、母親が僕に箱を差し出した。
スニーカーだった。
メーカー名は『JAGUAR』
『PUMA』に似せた柄のメーカーだった。
僕は翌日から、そのスニーカーを履いて登校した。
正直、嫌だった。
僕のような立場の人間が、流行物を身に付けるのは許されないことだから…
「桜雪が新しい靴を履いてきた」
『PUMA』と思われて、イジメに集まってきたのだ。
「2流のスニーカーだ、偽物だ」
からかわれただけで終わった。
ホッとした。
母親は息子に皆と同じ物を買い与えたかった。
息子はソレが偽ブランドで安心した。
そんな親子の話
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます