第3話 籠目、籠目

「逢いたいよ」

「私も」


 僕は彼女の客じゃない

 僕に逢っても金にはならない


 だから彼女は、僕の前では服を脱がない


 逢えばコンビニで数千円の買い物と食事代を支払うだけだ


 彼女は、その時間が楽しいと言う…


 僕は彼女の事を知らない。

 風俗嬢として誰かに抱かれる彼女の姿も…プライベートな彼女も…


 僕が好きになった彼女は『誰』なんだろう?


 僕は彼女を知らない

 僕は知らない彼女に恋をした


「逢いたいよ」

 誰に逢いたいの?


 僕は恋をした

 知らない彼女に恋をした


 目隠しされて手さぐりで彼女を探す、そんな恋


 暗闇で彼女が囁く

『後ろの正面だぁれ?』


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る