向日葵の種

 結婚してしばらくして、男の子に恵まれた。これでもう、世継ぎの心配をすることはなくなった。


 諸国漫遊の旅に出た弟は、結婚する気も国に落ち着く気も無いようだった。

 父の葬儀とその後の私の戴冠式の際は、さすがに帰ってきていたが、またすぐに出て行ってしまった。

 戴冠式の直後、私の元を訪れた弟は、旅に出たいと申し出た。

 本来ならば父の亡き後、兄である私を助けるべきなのだが、旅を続けさせてはもらえぬだろうかと。

 私に拒否する理由など無かった。王弟とは邪魔なものなのだ。私にとっても、息子である王太子にとっても。

 自ら去ってくれるというのであれば、なんともありがたいことではないか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る