実らぬままで

姫君が明日入内する。乳母子ながら、御簾越しにしか話せなくなってから十年。

恋しくて、宿直の際に姫君の寝殿にゆけば、はかない琴の音。

遠い昔、一緒に合わせた曲。

姫の心を知る。でも応えられなかった。

翌朝、姫が小刀で喉をついたと聞いた。

人前で嘆くことすらできない恋である。

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