第10話“日本名僧・高僧伝”12・最澄
“日本名僧・高僧伝”12・最澄(さいちょう)は、平安時代の僧。日本の天台宗の開祖である。近江国(滋賀県)滋賀郡古市郷(現在の大津市)に生れ、俗名は三津首広野(みつのおびとひろの)。生年に関しては天平神護2年(766年)説も存在する。中国に渡って仏教を学び、帰国後、比叡山延暦寺を建てて天台宗の開祖となった。先祖は後漢の孝献帝に連なる(真偽は不明)といわれる登萬貴王(とまきおう)なる人物で、応神天皇の時代に日本に渡来したといわれている。なお、年齢は神護景雲元年出生説に基づく。778年(宝亀9年)、12歳のとき近江国分寺に入り、出家して行表の弟子となる。780年、14歳のとき国分寺僧補欠として11月12日に得度し名を最澄と改めた。783年(延暦2年)、17歳のとき1月20日に正式な僧侶の証明である度縁の交付を受ける。785年、19歳のとき東大寺で具足戒を受ける。同年7月、比叡山に登り山林修行に入り、大蔵経を読破。788年、薬師如来を本尊とする草庵、一乗止観院を建立する。797年、桓武天皇の内供奉十禅師。801年、比叡山一乗止観院にて法華十講奉修。南都六宗の高僧10名に講師を依頼する(請十大徳書)。802年、高雄山寺(神護寺)法華会(ほっけえ)講師。桓武天皇より入唐求法(にっとうぐほう)の還学生(げんがくしょう、短期留学生)に選ばれる。804年7月、通訳に門弟の義真を連れ、空海とおなじく九州を出発。9月明州に到着。天台山に登り、湛然の弟子の道邃と行満(ぎょうまん)について天台教学を学ぶ。さらに道邃に大乗菩薩戒を受け、翛然(しゅくねん)から禅、順暁から密教を相承する。805年5月、帰路の途中和田岬(神戸市)に上陸し、最初の密教教化霊場である能福護国密寺を開創する。7月に上洛、滞在中に書写した経典類は230部460巻。帰国当時、桓武天皇は病床にあり、宮中で天皇の病気平癒を祈る。805年9月、桓武天皇の要請で高雄山神護寺にて日本最初の公式な灌頂が最澄により行われる。806年(大同元年)1月、最澄の上表により、天台業2人(止観業1人、遮那(しゃな)業1人)が年分度者となる。これは南都六宗に準じる。これが日本の天台宗の開宗である。このころ、空海から、真言、悉曇(梵字)、華厳の典籍を借り、研究する。812年(弘仁3年)の冬、弟子の泰範、円澄、光定らと高雄山寺におもむき、空海から灌頂を受ける。813年1月、泰範、円澄、光定を高雄山寺の空海のもとに派遣して、空海から密教を学ばせることを申し入れ、3月まで弟子たちは高雄山寺に留まった。しかし、このうち泰範は空海に師事したままで、最澄の再三再四にわたる帰山勧告にも応ぜず、ついに比叡山に帰ることはなかった。813年11月、最澄が「理趣釈経」の借用を申し出たが、空海は「文章修行ではなく実践修行によって得られる」との見解を示して拒絶、以後交流は相容れなかった。815年、和気氏の要請で大安寺で講説、南都の学僧と論争。その後東国へ旅立つ。関東で鑑真ゆかりの上野の緑野(みとの)寺(現在の群馬県浄法寺に位置する)や下野の小野寺を拠点に伝道を展開する。法相宗の学僧会津徳一との間に、三一権実の論争。徳一が『仏性抄』(ぶっしょうしょう)を著して最澄を論難し、最澄は『照権実鏡』(しょうごんじっきょう)で反駁。論争は、比叡山へ帰った後も続き、『法華去惑』(こわく)『守護国界章』『決権実論』『法華秀句』などを著したが、決着が付く前に最澄も徳一も死んでしまったので、最澄の弟子たちが徳一の主張はことごとく論破したと宣言して論争を打ち切った。818年、みずから具足戒を破棄。『山家学生式』(さんげがくしょうしき)を定め、天台宗の年分度者は比叡山において大乗戒を受けて菩薩僧となり、12年間山中で修行することを義務づける。南都の僧綱から反駁にこたえて『顕戒論』を執筆。『内証仏法血脈譜』を書いて正統性を説く。822年6月26日(弘仁13年6月4日)、比叡山の中道院で没、享年56(満54歳没)。没後7日目、大乗戒壇設立は、弟子・光定と、藤原冬嗣、良岑安世の斡旋により勅許。866年(貞観8年)、清和天皇より伝教大師(でんぎょうだいし)の諡号が贈られた。日本で初めての大師号である。以後「伝教大師最澄」と称される。
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