第6話 羅憲《らけん》:正史『三国志』の著者・陳寿を推挙した人物

 蜀の羅憲らけんは、字を令則れいそくといいます。

 十三歳のころから文才があることで知られていました。


 羅憲は才能だけでなく性格もまじめで、惜しげもなく財を施しに使い、才能のある人物を積極的に求めたといいます。

 使いとして呉へおもむいたときも、呉の人たちは羅憲を賞賛しました。


 蜀で宦官の黄皓こうこうが権力を握ったとき、ほかの者たちは黄皓をおそれて同調していましたが、羅憲だけはそうしませんでした。

 これによって羅憲は黄皓に恨まれ、巴東太守に左遷させられてしまいます。


 やがて魏(のちの晋)が蜀を攻め、成都が落とされます。

 呉は援軍の名目で蜀に兵を動かしましたが、じつのところは蜀の領土を取ろうとしていたのです。


 しかし羅憲はそのたくらみを見透かし、巴東をかたく守りました。

 これがしん司馬炎しばえんに評価され、羅憲は以前の任のまま万年亭侯に封じられます。


 やがて羅憲は洛陽で入朝し、司馬炎に陳寿ちんじゅを推挙します。


 そしてこの陳寿が正史『三国志』を編纂することになります。


 羅憲はその後も呉の討伐に功績がありました。死後は安南将軍の号をおくられたといいます。

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