第99話 報告


 市長宅寝室にて。



「終わったわよ。」

 白頭巾の報告。


「本当ですか!」

 疑っているわけではないが、そう聞いてしまうのがお約束。


 市長は思わず上半身を起こした。顔色も良くなったように見受けられる。


「後始末は、まだだけどね」


 市長には、そんな事は些末(さまつ)な事に思えた。


「でね…。」


 それから続く言葉を考え、やはり身構えてしまう市長。


「人を手配して欲しいの?」


「人ですか…。」

 少し、困惑気味の返答。


「色々あって、人手が必要なのよ。」


「如何ほどでしょうか?」


「そうねぇ。」

 考え、

「口の硬い男手を五、六人かな?」


「それなら、直ぐにでも…。」


「人を運ぶ道具もね。」


「解りました。」

 呼び鈴を鳴らし、使用人を呼んだ。


 外で待機していたのだろう、直ぐに扉が開き、

「ご要件は?」

 顔を覗かせた。


「口の硬い男手で六人程手配してくれ。人を運ぶ道具もだ。」


「かしこま…。」

 使用人の返答を遮り、

「お腹空いたから、ご飯もね。」

 白頭巾が割り込んだ。


「はい。かしこまりました。」

 改めて返答した。



「待っていいる間に、話しておくわ。」

 白頭巾の口調に身構えた市長。


「今回の事件は…。」

 ちらりと目線が神父へ向けられ、

「マーシュ神父が起こした。」


 理解が出来ず、

「…。」

 無反応。


 そして、

「えぇぇぇぇぇ!?」

 驚き、

「まさか…。あのマーシュ神父様が…。」

 当然の反応。


「人間、まさかは無いわ。誰だって、心の闇がある…。」

 間を置き、

「その闇に巣食うのが怪物。」


「そうでしたか…。」

 マーシュ神父を良く知っているが故に、残念そうな声。


「教会の地下に怪物を封印していた迷宮があったわ。」


「そ、そんなものが!」

 目を見開き驚いた。



 白頭巾は、間を取りながら続けた。


「いつ、誰が造ったかは判らないけどね。」


「昔の事件は、迷宮の怪物を封印から解き放った事で置きたみたい。」


「で、もう一度封印した。」


「今回は、マーシュ神父が怪物に取り憑かれて起こした。」



 話の流れに不安を感じた市長。

「では、また怪物が封印を破れば事件を起こすのですか?」



「大丈夫。今回は殺しといたから。二度と復活しないわ。」


 安堵のため息。

「良かった…。」



『コンコンコン。』

 待ち兼ねた音。

「簡単なものですが、お食事の用意が出来ました。」


「はーい。」

 元気に答える白頭巾とペーター。


「神父さんも行くわよ。」

 言われ向けた視線の先の白頭巾の顔に、あの時の言葉が甦り、

「はい。」

 返せた。


「良い返事よ。」



 出された食事は三人により、あっという間に平らげられた。



 その後。


 集められた男手は、白頭巾の指示で子供達を運び出した。


 最後にマーシュ神父を運び出し、仕事を終えた。




 全て処理を終えたのは、深夜を回っていた。


「少し、寝るから…。」

 考え、

「昼頃に来るわ。」

 そう言い残し借家へと帰って行った白頭巾とペーター。

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