閑話6 Side S Part.4 ~少し未来の話の弾劾裁判~
――― 少し未来の話
どれくらい未来かと言うと、本編より三日後の土曜日の朝の事である
「ふふふ今晩のご飯は牧野くん特製の牛スジ煮込み~。あー楽しみだわ~」
昨日発売されたあたしのコミックも日頃のお礼も兼ねて持っていってあげなきゃ。
今回の新刊は巻末漫画の最終コマの修正だけは納得出来なかったけど、コミック用修正含めて満足の行く仕上がりよ。
連載時には主人公のミトンが周りの皆を改心させるってシーンの表現がちょっと控えめだったのよね~。
コミックの修正ではそれぞれ今までの悪行を改心して号泣すると言う感動的なシーンになっているわ。
しかし、昨日は牧野くんの作りたての手料理食べれなくてちょっと残念。
けどちゃんと昨日の分は木曜日に頂いていたから、それを温めなおして美味しく頂けたわ。
本当に優しい子よね、牧野くん。
一昨日の夜から何度食べてしまおうかと葛藤したけど、何とか欲望に打ち勝ったのよ。
あたしも成長したもんだわ。
箱買いしていたチョコ玉子が無かったら、ちょーっとやばかったかも知れなかったけど頑張ったあたし!
出てきたのは半分ドードーだったけどね。
もうすぐ一個小隊を組めるわ。
センジュナマコやアウストラロピテクス、それにハルキゲニアは正直ちょっとキモかったのよ。
食玩愛しているとは言ってもうら若き乙女だもん。
軟体動物とか類人猿はちょっとアレよね。
でも今回のドードーは良いわ! 凄く良い!
だって凄く可愛いじゃない!
このでぷっとしたお尻に大きなくちばし、それに飛ぶ事の出来ない小さな羽根!
あぁ~凄く愛くるしい。
この厳しい弱肉強食な自然界に対して天敵が居なかったと言うハンデを背に受けて真っ向から反逆するこの姿勢。
そこに痺れる憧れる~。
もし絶滅していなかったら今頃一家に一羽ドードーをペットにして愛でるなんて素敵な世界が広がっていたかと思うと本当に絶滅してしまったのが悔やまれるわ。
……ゴクリ。
う~ん、このでっぷりとしたお腹……食いでが有りそうね。
どんな味がしたのかしら? 食べてみたかったかも。
そう言えばムカシハナアルキって実在しないそうね。
あんな可愛い生き物が何で動物園に居ないのかしらと調べたら、フィクションだったみたい。
本当に残念だわ。
よく出来たお話だったのでメーカーの企画の人も騙されたのね。
鼻行類が世に出なかった理由の、時の権力者が自分の大きな鼻に対する当て付けかと調査結果を全て封印したためって所は本当に面白いわ。
でもムカシハナアルキは居なかったとしてもツチノコは実在するのよね?
だって世界の珍獣シリーズだもん。
そうそう! 隠れシークレットと言えば、一つ前のシリーズにも隠れシークレットが存在したなんて知らなかったわ!
存在しない派がネットで席巻していたのに、これで定説が覆った!
さすが牧野くん! ネットにも出ていない
しかし本当に良いわぁ~、
誰かに喋りたいけど、こんなレア物を公言すると各国のエージェントに狙われちゃうから絶対秘密にしないとね!
そう言えば昨日晩御飯作れなかった理由が牧野くんが生徒会に入る事になったからなのよね。
しかも選挙じゃなくて指名なんチャラって制度でなんてびっくりだわ。
ただなんか弟が選ばれた感じがしてちょっぴりあたしも嬉しかったりするわね。
昨日みたいな晩御飯食べられない日が来るのが寂しいなぁ~。
けど高校の生徒会なんて青春漫画定番のシチュエーションの生の声が聞ける機会だもの我慢しなくちゃね。
お陰で
あたしは今の所ファンタジー物しか描く気無いけど、穴太先輩や粟津先輩への土産話にもなるし、将来もしかしたらだけどあたしがまた青春漫画を描きたくなる事があるかもしれないしね。
本当にもしかしたらだけど。
びっくり繋がりで火曜日の黄檗さんにはびっくりしたわ。
いきなり牧野くんに抱きつくんだもの。
いつもあたしに牧野くんに抱きつくなと言う癖に自分が抱きついちゃうんだから。
もしかして止めてたのは嫉妬だったのかしらね。
データは消されちゃったけど、フフ、実はあの時いつもの癖でクラウドストレージに一枚だけアップしてたの。
大事な資料写真が消えたら嫌だからいつも残したい一枚はまずクラウドにアップするのが習慣になってたのよね。
えらいわ私!
しかも次の日すぐに写真屋さんに行ってA1サイズにプリント依頼済みよ。
早く出来上がらないかなぁ。
まぁ黄檗さんが牧野くんの事を気にしているのは分るのよねぇ。
いつもこの時期は少し情緒不安定になってるんだけど、そこに牧野くんが現れたんだもの。
亡くなっちゃったって言う弟さんと重ねちゃってるのかな~って。
黄檗さんがあんなに人に対して優しくする事なんて普段無いものね。
いつもは物事を俯瞰で眺めて毒舌で相手の心を抉り取るのが生きがいじゃないの? って感じだし。
特に男性に対しては憎んでるかの如く熾烈を極める程なのよね。
最近はほぼ毎日だけど、元々休日は打ち合わせと称しあたしの家に入り浸ってたりしたから、ちょっとあっちの趣味なのかとも警戒した時期もあったけど、どうやら違うみたい。
以前彼女が語ってくれたのは最後の日に弟さんに会えなかったと言う罪への罰として自分が幸せになってはダメだとか言う凄く重い話だったわ。
その時も馬鹿者!って怒ってやったけど本当に馬鹿。
そんなもの罰でもなんでもないじゃない。
弟さんだってそんな事を望んじゃいない筈だわ!
そう言うと少し寂しそうな顔をしながら『分りました』とか言ってたけど分ってないみたいだった。
弟さんの命日って確か今日だったはず。
だからちょっと火曜日も情緒不安定だったのかしら。
多分牧野くんの言葉に何らかの思う所が有って堪えられなくなったのね。
まぁちょっと良い傾向だと思うわ。
止まっていた彼女の心が動き出した予感がするの。
このまま牧野くんが黄檗さんを癒してくれたらなぁ~。
……いやいやそれはダメよ。
だってそれって牧野くんが黄檗さんの物になるって事でしょ?
それは流石に認められないわ。
だって……牧野くんは……私の大切な……ご飯係だからね!
しかし牧野くんって無欲で人畜無害ぽい癖に天然の女たらしよね。
しかも自分は自覚無い所か相手の言動を悉く勘違いしてる所が面白恐ろしいわ。
本当に漫画みたいよね。
創作意欲が掻き立てられるわ。
いつか牧野くんをモデルに……
ピロロンピロロン
あれ? スマホが鳴ってる? 誰からだろう?
え~と、あら穴太先輩からだわ。
こんな時期に珍しいわね。何の用事かしら?
いつもはこの頃もう追い込み前で忙しくしてるのに。
「はい、深草です。先輩どうしたんですか? こんな朝早く」
『朝早くってお前もう昼だろ。まぁいい今日いつものメンバーで飲み会な』
な、なんで? 急に飲み会?
もしかしてコミック発売のお祝いしてくれるって事かしら?
しかし穴太先輩たら飲み会っておっさん臭い言い方よね。
ちゃんと女子会って言ってくれなきゃ。
「え~と急にどうしたんですか? この時期に
ちゃんと言い直さないとね。
『え~っと、ゴニョゴニョ、あっうんそうか。……あ~なんだ、この前お前との約束をすっぽかした事のお詫びと新刊発売のお祝いだよ』
あれ? なんか相談してるっぽかったわね。
他に誰か居るのかしら?
でもやっぱりお詫びとお祝いの事なのね、皆良い人だわ。
お手伝いして貰えなかったのはショックだったけどお陰で牧野くんと知り合う事も出来たし私としては良かったりするのよね。
「そう言えば巻末読んでくれました? よく描けてたでしょう?」
最後のコマは妄想落ちに替わっちゃったけどね。
いつか皆にも牧野くんを紹介してあげましょうか。
『…………アァ、サイコウニオモシロカッタゼ、アハハハハ』
コワイコワイ先輩ちょっと怖い。
何かしらなんかカタカナで喋ってる風なテイストだったんだけど?
う~んなんか嫌な予感がして来たなぁ~。
今日はずっと楽しみにしてた牧野くんの牛スジ煮込みの日だしみんなの気持ちは嬉しいけどそれだけはお断りしようかしら。
「あの~今日はあたしちょっと用事が……」
『ダメだ。他のメンバーの都合も有る。今日6時にいつもの場所で集合な。 プツッ』
あぁ切れちゃった。
どうしよう~、困ったわ~。
折角の気持ちなんだから断るのも悪いし、日をずらして貰うのも今の時期みんな忙しいから無理よね。
いつも助けて貰ってるから無碍に出来ないんで仕方無いわ。
泣く泣く出来立ては諦めるかぁ~。
黄檗さんみたいに取っておいて貰おう。
それに女子会終わって帰ってから小腹が空くかも知れないしそれなら有る意味出来立てね。
じゃあ牧野くんにお詫びも兼ねて新刊をプレゼントしに行きましょうか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「そうなんですか、残念ですが大量に作りますからね。ちゃんと取り置きしときますよ」
本当に牧野くんはいい子よね。
牧野くんが用意してくれたお昼を食べながらしみじみ思う。
「そう言えばあたしの漫画読んでくれた?」
年頃の男の子の生感想って貴重なのよね。
「え、あぁ、あのちょっと最近立て込んでてまだデビュー作の1巻だけなんですよ」
あら残念。
途中だけじゃなくて全部を通して聞きたいからその時まで我慢しましょ。
そろそろ準備の時間なので牧野くんちをおいとましなくちゃね。
「牧野くーん! お昼ご馳走さまね~。」
「はい、気を付けて行ってらっしゃい。ちゃんと取り置きしておきますから安心していてください」
牛スジ煮込み、作ってる途中だったけど良い匂いだったわね。
お腹がグーグー鳴っちゃったわ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
と言うわけで、いつもの一張羅に身を包んで出掛けたあたし。
いつもの待ち合わせ場所って事だけど、何処で女子会するんだろう?
2回連続でエスニック風な居酒屋だったけど、今日もそこなのかしらね。
あっもう皆来てるわね。
「みんなーお待たせ~」
「いや、あたし達も今来た所だよ。ちゃんと来てくれて良かったよ」
「そうよ気にする事は無いわ。私達はいつまでも待つわよ?」
「先輩よく来てくれましたね。今日は色々とお話したいんですよ本当色々と」
「フフフフ、少し待っとったけど、全然かまへんよ。フフフフ」
あれ? なんか雰囲気がおかしいわね?
どうしたのかしら?
やっぱり危険な香りがプンプンするんだけど?
「今日は面白い所を見つけてな。そこでこの前のお詫びと新刊のお祝いをしようと皆で話し合ったんだよ」
面白い所? 少し興味有るわね。
「へ~どんな所なんです?」
「ちょっと趣向が変わったコスプレ居酒屋よ。あなたにぴったりな場所だわ」
コスプレ居酒屋? 面白そう!
でも、あたしにぴったりってなんだろう?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「先輩! ほらここですよ! いや~中々目的の場所を見つけるのに苦労しました。何せ急でしたからね。予約が取れて本当に良かったです」
あら鈴ちゃんとてもご機嫌ね。
「ここはな、いろんなシチュエーションの部屋が有ってな。その一つが本当今のあんたにぴったりの場所なんよ」
う~んまたあたしにぴったりって?
本当にどう言う事だろう。
「6時半から予約していた直木です。もういけますか?」
「え~と直木様と。
ホーテー? 何かしら?
ホタテと聞き間違えたのかしら?
ラッコのコスプレかしらね?
「部屋の手前にフィッティングルームが有りますのでそれぞれ衣装に着替えてくださいね。先輩の服はこれです」
鈴ちゃんに手渡された服って最近見たわねこのデザイン。
あぁ世界絶滅種シリーズの隠れシークレットのアレの服ね。
ジェイルクロースって言うんだっけ?
何故これに着替えるのかしら?
「あぁ先輩凄く似合いますよ!」
鈴ちゃん良い笑顔なんだけど、この恰好を褒められてもあまり嬉しくないわね。
「じゃあそこに座ってください」
辺りを見渡すけど、何かしらここ?
サスペンスドラマとかでよく見る裁判所がこんな感じよね。
行った事はないけれど。
え? ちょっと待って?
こんな感じとかじゃなくて、本当に裁判所じゃないの? ここ。
そう言えばさっき"ホーテー"って言ってたけど"法廷"の事だったの?
へーこんな居酒屋有るんだ。
そう言えばホラーカフェとか監獄居酒屋とか聞いたこと有るわね。
ん? あれれ? と言う事はあたしの席って被告人の席って事じゃない?
他のみんなは?
え~と、穴太先輩が裁判官かしら?
粟津先輩も裁判官?
鈴ちゃんは検察官かしら?
唐橋先生も……あれ? 裁判官ね。
あぁ、裁判官三人って事は、所謂合議制って奴ね。
皆それぞれの位置に座ってるわ。
「皆座ったな? ではこれより深草京子、本名墨染涼子の裁判を始めたいと思います」
え? どう言う事? あたしの裁判?
あたし何かしたかしら?
今日はあたしのお祝いって話だったのにどうして?
あと一つ気付いたんだけど、裁判官三人と検察官一人って……。
弁護人がいねぇ! 不当裁判だ!
「あの~? どう言う事ですか? 先輩?」
カンカンッ
「被告人は静粛に」
あっあのカンカンするハンマーちょっと小さい時憧れたわよね。
友達同士で裁判の真似事みたいな事をした時とかカンカンとか言ってたわ。
懐かしいわね。
って違う違う、これは一体どう言う事なのかしら?
「あなたは墨染涼子 24歳 独身 職業漫画家で間違いないですね?」
粟津先輩ったら何当たり前のことを聞いてくるのかしら?
「そうですけど……」
「では鈴検察官、罪状を読み上げてください」
事前に打ち合わせしていたのかしら?
唐橋先生もノリノリね。
「はい、では読ましていただきます。被告は我が独身同盟の一員でありながら抜け駆けをするという大罪を犯した容疑がかかっております」
抜け駆け? 何の事かしら?
鈴ちゃんも凄くノリノリだわ。
「更にその相手と言うのはまだ15歳の高校生の少年であり、事も有ろうか部屋に上がり込み食事を作ってもらう等のいかがわしい行為を行っているとの事です!」
「ギルティー!! ギルティー!!」
「落ち着くんだ! 唐橋裁判官。まだ被告人の弁解陳述が行われていない」
あっ、やっと分った。
これ巻末漫画の牧野くんとの事についてなのね。
何でみんなこんなに怒ってるの?
抜け駆けなんてそんな事無いのに。
「では、被告人墨染涼子。容疑についての説明を行って下さい。この内容は最終コマ通り妄想だったのか、それとも本当だったのか!」
粟津先輩の眼が怖い!
え~そう言われても容疑ってそんな~。
「違うんですよ。皆さんにお手伝い断られて一人で頑張らないとって、缶詰め状態で描いてた訳なんです。特に三日目はお腹ペコペコでもう極限状態になっちゃってて……」
「では漫画通り、極限状態の中で見た妄想だったと言うわけね? 少し安心したわ」
粟津先輩の目がいつものように優しくなったわ。
「いえ、極限状態の時にどこからか良い匂いがしてきまして、その匂いに釣られて外に出たんです。すると隣の部屋に住んでる牧野くんって子がおいしそうなミートソースを作っておりまして、それをご馳走してくれたんですよ。牧野くんの料理って凄く美味しくて、それから毎日作ってもらってます」
「「「「ギルティー!!ギルティー!!ギルティー!!」」」」
カンカンカンッ
ヒッ皆目が血走ってる。
「どうしたの? 皆? 何でそんなに怒ってるの?」
「どうしたもこうしたもあるか! 甲斐甲斐しく料理を作ってくれる年下男子なんて希少生物を手に入れておきながら『どうして怒ってるの?』だぁ?」
「タニーズJrくらいの男の子の手料理ですって? うらやまけしからん!」
「ペス! あっちがっ。先輩! 青少年保護法に違反してます。マジで犯罪です」
「なぁ? うちへの当て付けなんか? そうやろ? そうやんなぁ?」
ヒーーーーー!
「いや、そんなただ単にご飯を作って貰ってるだけでそんな変な関係じゃないですって。それにあたしの担当の黄檗さんも一緒ですし、大和田さんって牧野くんの母親代わりの人も居たりしますし」
「「「「えっ? 4人で! 爛れてる!」」」」
「違いますって~!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
はぁはぁ、何とか皆を説得出来たわ。
本当に皆早とちりなんだから困った物ね。
しかし、ここって出てくる料理は普通に居酒屋定番料理ばかりみたい。
ちょっと拍子抜けだわ。
もっとシチュエーションに有った料理が出てくるもんだと思ってた。
残念ね。
「ほ~その牧野って子は一人暮らししてるのか。両親とも世界中飛び回ってるってすげえな」
「出会ってからの話聞くだけでも凄い面白い子ね。生徒会に入ってるなんて学園漫画を描いてる身としては興味有るわね」
「う~あたしの方が先輩を上手く扱えると思うのに~」
「なぁなぁ紹介して~なぁ~」
なんかさっきから鈴ちゃんの言動がおかしいままなんだけど大丈夫かしら?
「元から紹介するつもりでしたよ~。でも今は皆忙しい時期だと思って遠慮してたんです。 そうじゃないと巻末漫画に書きませんし電話でおススメとか言いませんよ」
「そりゃそうだな。まぁあたしは連絡取れなくて知らなかったけど。他の皆に聞くと嬉しそうにそう言ってたとか言ってたしな」
ほっ何とか納得してくれわ。
また月末にでも牧野くんのお披露目会をしようかしら。
迷惑がるでしょうけど牧野くんにお願いしなくちゃね。
「じゃ~ここはお開きにしようか!」
え?もうお開き?
まだ腹三分って感じなのに。
あっそうだ! 帰って牧野くんの味噌煮込みご馳走になっちゃおうっと。
「そうね、会計は取りあえず私がカードで払っておくから。あっ一応新刊お祝いも兼ねてるから深草先生は奢りよ」
やったー。
みんな優しい!
「先輩。服を着替えるの忘れちゃダメですよ?」
本当に鈴ちゃんは面倒見のいい優しい子ね。
「どんな子なんやろう?楽しみやわ~」
もう月末の事を想像してるのかしら? 本当に唐橋先生はショタコンね。
あれ? 高校生はショタとは違うのかしら?
「さ~行こうかぁ~」
「「「おーー!!」」」
店を出た途端皆が元気良く声を上げてるけど、二次会でもするのかしら?
あたしとしてはこのまま帰って味噌煮込みな気分になっちゃってるんだけど……。
「穴太先輩~。この後どこか行く予定なんですか?」
あっ全員なんか凄くいい笑顔をしてる。
どうしたんだろう?
「決まってるだろ? 今からその牧野くんってのを見に行くんだよ!」
「えーーーーーーーー!」
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