第22話9.26お見舞い!

H副支部長が入院された。すぐ退院するから来なくていいとのことだったが、


再入院になった。この地区の前の地区部長で大事件の後始末や大折伏戦で


副会長を記念に呼んだ方だ。職人気質で人望も厚い私より2,3年上だ。





私が地区部長になって丸二年だが、最初の座談会に出られたきりで後はさっぱり。


何度かお訪ねして理由を聞くと自分の居場所がなくて面白くないとのことだった。


「これから盛り上げていきましょうよ!」


「もうええねんわしは」


そんな感じで本部長とも何度か訪ねた。





今日昼から雨、京北を切り上げておにぎりをコンビニでかじりながら奥さんに電話をする。


「肺の方が少し落ち着いてきたので明後日腸の精密検査やるそうです」


「そのあと訪ねた方がいいですかね」


「そうですね長引きそうですから」


「今何号室ですか?」


「414ですがまた変わるかもしれません。もう2回変わってますから」


「じゃあ今日明日は間違いなく414」


「職人ですから気難しいですよ」





というわけで急きょ病院へ行ってみることになった。


新任のK君を誘う。


「わかりました。しっかりお題目をあげて向かいます!」


かれも気にしていたのがわかる。彼のブロックでもあるからだ。





雨が激しくなってきてやっと病院に着いた。


果たして歓迎されるのだろうか?いやな顔されるかもなあ。


4階ナースステーションで聞くと看護婦さんが病室まで案内してくれた。


これは幸先がいいぞ。





仕切りのカーテンを開けるとうつろな目をした老人が窓から外の雨をじっと見つめている。


二人で声をかけるとやっと気づいたようで、


「よう来てくれたな、ひまでしゃあないんや」





饒舌である。肺洗浄の管がわき腹にさしてあって洗浄液と排出血液とが一目で


わかるようになっている。





「あっちの談話室で話そうか」


そう言って彼は点滴を動かすようにわき腹に食い込んだ洗浄液の器具をひょっと持ち上げ


移動し始めた。元気そうだ。顔色もいい。管が見えるのを除けばいたって健康そうに見える。





「寝る時が大変なんやがもう慣れた。飯まずいしな。腸見てもろてもこっちの原因が分からんとな」


ガラガラと引っ張りながら、


「それでも5日前にはこんな元気なかった。もうしんどくてな。出てくる血の量と色が全然ちゃう」





不死身のT.Kさんの話になると、


「頭上がらんのや。まだ内緒にしといてや、説教されるから」


とのことだった。20分近くも話し、少し疲れが見えたので


また後日来ることを約し、みな祈ってることを伝え病院を後にした。





勇気を奮い起こし雨の中お見舞いに行ってほんとによかった!

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