第35話『夏の決心』2
「兄さん兄さん、ワンピースとツーピースどっちがいいですか?」
聞くなーっ!
「真白くん真白くん、パット入りのビキニにパレオをつければ君でも違和感はないんじゃないかぃ」
着るかーっ!
万事こんな感じ。
先輩お勧めの水着ショップの店内で、僕は完全に孤立した。
当然ながら女性用の水着しか売ってはおらず、僕は別段やましくもないのにやましく感じてしまう今日この頃。わかるよね?
「べつに水着なんだから恥ずかしがる必要はないと思うよ?」
とナギちゃんは言ったけどそんな問題ではない。
「でも兄さんに見立ててもらわないと決めようがありません」
と言った華黒に諭されて、しぶしぶと僕は店内に向き合った。
一口に水着といっても多種多様。中には「どこに着ていくんだこんなもの」ってものまで。
ほとんど紐みたいな水着をみて「うわぁ」なんて思っていると、
「これを着てほしいんですか兄さん?」
華黒がハンガーごとそれを取って、服の上から自分の体に当てた。
僕は紐水着を着た華黒を一瞬想像して、その煩悩を振り払う。
「そんなわけないでしょ」
水着を奪い取って元の位置に戻す。
「ではどんな水着がお好みですか?」
どれって言われてもなぁ……。
恥ずかしさを押し殺して店内を見渡しても、飛び込んでくるのは多種多様な水着水着水着。
決めようがない。
途方にくれていると昴先輩がやってきてこう言った。
「選考会をしようじゃないか」
というわけで何故か選考会をする運びに。
エントリーナンバー1、酒奉寺昴。
「どうだい?」
といいながら試着室のカーテンが開かれる。
シンプルイズザベスト。
昴先輩が着ていたのは黒のビキニだった。
先輩のモデル体型を黒色が引き締めていて、極上に似合っていた。
エントリーナンバー2、百墨華黒。
「どうでしょうか兄さん」
といいながら試着室のカーテンが開かれる。
華黒が着ていたのはチェック模様のタンキニだった。
ちょっと変化球だけどこれはこれでアリかなとか思ってしまう僕の煩悩。
エントリーナンバー3、楠木南木。
「どーお、シロちゃん?」
といいながら試着室のカーテンが開かれる。
ナギちゃんが着ていたのは薄いピンクのワンピースだった。
素直にかわいい。
エントリーナンバー4、酒奉寺昴。
「これもんで」
といいながら試着室のカーテンが開かれる。
昴先輩が着ていたのはアーティスティックな幾何学模様のモノキニだった。
これまたセクシーで先輩によく似合っている。
エントリーナンバー5、百墨華黒。
「ど、どうでしょう」
といいながら試着室のカーテンが開かれる。
華黒が着ていたのは花柄のビキニと、同じくセットであろう花柄のパレオだった。
華やかで華黒によく似合っている。
タンキニよりはこっちかな、なんて。
エントリーナンバー6、楠木南木。
「どーでしょ?」
といいながら試着室のカーテンが開かれる。
ナギちゃんが着ていたのは白いスクール水着だった。
僕は迷わずこう言った。
「反則負け」
「なんの反則!?」
……だって……ねえ?
その後も多くの水着を見せられて最初の頃の羞恥心はというと完全に麻痺してしまい、僕は冷静に判断を下すことができた。
華黒は花柄のビキニとパレオ、先輩は黒のビキニ、ナギちゃんは薄いピンクのワンピース、とまぁそのように決まった。
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