朗読コンサートで書いた、あしもすの文章集

あしもす

2017/03/26「FAME」

大好きだった<音楽家>がいた。


動画サイトでたまたま見つけてから、お気に入りの音楽家。

現代じゃあ、なかなかこういうスタイルで音楽を書ける人はいない。

それはもう、<ゾッコンLOVE>だった。


お金と時間が許す限り、聴きに行った。夜行バスに揺られて遠くまでも聴きに行った。


そして、ついに地元で演奏されるってことで、気分は<最高潮!>


受付でパンフレットをもらう。

ワクワクしながら、目を通す。


ん?


<違和感>を感じる。

そこには、協賛として、何やらNPO法人などの名前がズラリ。

たしかに音楽家は、異色の経歴で、意図は分かる。

でも、ずっとそういう経歴を隠してきた。

純粋に音楽を<音楽>として聞い欲しかったからだと当人が答えていた。

だから、自分は応援した。異色の経歴者としてではなく音楽家として応援した。


曲名を見て、さらに愕然とした、大好きな曲に副題が追加されていた。

社会的メッセージ性の強い副題だ。


音楽家はそれをきっかけにどんどん<名声>を得ることになっていった。

僕の熱は<冷めて>いった。


その名声もいまや失った音楽家は音楽家でなくなっていた。


そして、やっと気づいたんだ。

いつからか、自分も<経歴>で音楽を聴いていたのだと。

音楽じゃなくて音楽家を聴いていたことに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る