第17話 呪いのゲームソフト-1 カセット

「昔のゲーム?」


「そう! レトロゲーム! 私、最近それにハマってるんだ」


 ある日の昼休み。

 樹、ユリ、未來は昼食をとりおわり、講義が始まるまで部室にて雑談していた。


 オカルト研究会の三人は講義の合間など、暇さえあればこの部室に顔を出している。

 校舎の奥でひとけもなく静かであり、日当たりも良好。

 暇つぶしや休憩として過ごすには絶好の場所なのだ。


 ふと話題が途切れたとき、ユリが“自分の最近の趣味”について語り始めた。


「古いゲームが好きってことなんですか? あるいはそういうリサイクルショップを回るのが好きなのか」


「どっちもだよ、どっちも。いやー大学生って金かかるじゃん? バイトはしてても結局足りなくなっちゃうし、娯楽にはちょっとでも倹約しないとなーなんて考えてたのさ。そんなときに見つけたのが“これ”よ」


 ユリはおもむろに自分のカバンを手さぐり、なにかを取り出した。


「……ほらほらこれ見て。じゃーん!」


 全体的に灰色の、四角い物体。

 大きさは手のひらより少し大きいぐらいか。


「それって……ゲームソフト?」


「ゲームソフトはゲームソフトだけど、“カセット”ね」


「“カセット”? こんな大きな?」


 ピンと来ない顔で訝しむ樹に対し、未來が補足する。


「……そうか。樹はもう知らない世代なんだね」


「私ら一歳二歳しか変わらないけどねぇ。ちなみに私はこの趣味始めてから知ったよ!」


「昔流行ったゲーム機で使われてたゲームソフトのシステムよ。今だともうほとんどがCD形式だし、携帯機のソフトでもこんな大きいものは無いものね。……しかし、懐かしいわぁ」


 未來は目を細め遠くを見る。

 思い出にふける様子だ。


「未來先輩もゲームやるんですね」


「あらダメかしら?」


「いやなんか意外で。“お嬢様”と“ゲーム”って、イメージが結びつかなかったです」


「お嬢様だってなんだってゲームくらいやるわよ。私も昔は引っ込み思案でね。今でも社交的とは言えないんだけど、昔は輪をかけて内気だったわ。学校が終わるなり、まっすぐひとりで家に帰ってテレビゲームしてましたの」


「へぇ……」


 未來の意外な一面。

 あいづちを打つ樹に対し、未來は逆に質問した。


「そういう樹くんはゲームしないの?」


「俺ですか? うーん……俺も昔はやってましたね。でも大学に入ってからはユリ先輩同様お金かかりますし、からきしです」


「私も同じね。私の場合お金がかかるからというよりは、宇田川|師匠(センセイ)の訓練があったり課外活動だったりで、ゲームする時間が自然になくなっていったって感じですわ」


「……よし!」


 突然声を上げるユリ。


「三人でゲームしよう!」


「三人で?」


「おう! 私もひとりでゲームするのに飽きててさ。せっかくなら三人でやろうよ。絶対そのほうが楽しいって!」


「そうねぇ。私も久しぶりにゲームしてみたいし」


「俺もです」


「だろだろ! うちには今一人用のカセットが多いし、まずはゲーム選びからしようぜ。今週末リサイクルショップ回り行こう!」


 ユリが約束を取りつけたところで、昼休み終わりのベルが鳴る。


「じゃ、予定空けててくれよな~」


 三人それぞれ週末に思いを馳せ、講義へと向かう。

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