第10話 設楽家

 設楽家は 建売住宅の並びの1番南側 曲がれば 通りに出る。

シンプルなリビングには たくさんの写真。息子が生まれたところからの数々のイベント、幼稚園の入園式の3ショットの写真は 大斗が 帽子を深くかぶりすぎていて せっかくの主役の顔が見えない。


 夫が海外駐在で西アフリカの発展途上国に行っているらしい。なるほど 入園式以降らしい写真がないのはそのせいか。子供というのは写真を置いておかないと子供が父親の顔を忘れるらしい。

 須田が 質問をしようとしたときに 設楽が急に私を見た。

「理香だよね?」

「エッ??????????????????」



頭の中身が 吹き飛ぶくらい ?マークが噴き出した。

「あたし ゆりえ! 旧姓 南川っ。」






みなみかわ ゆりえ。聞き覚えがある。


「あぁぁぁぁ!」


 思い出した 高校の同級生だ。高1のときに同じクラスだった。仲が良かった訳ではないが クラスメイトとして 悪い思い出も特にない。

 部活命の日焼けで真っ黒な“北川”と当時から家庭的な雰囲気の“南川”。名前の通り対照的だとよくクラスのネタにされていた。彼女は昨日 私が公園に駆け付けた時から気付いていたらしい。仕事の邪魔にならないようにと 黙っていたところも 当時のゆりえらしい。


「思い出話をしたいけど いまは紘くんのことが心配だもんね。わたしは岩井さんちについては は詳しくないの。だから協力できなくってごめんね。夫も家にいないし、あーゆー事があると不安で。やっぱり男性がいないってどこか不安よね。」


 ふと横の須田を見ると なぜか目がメラメラしている。そりゃそうだ。須田は こういう優しい人妻タイプがお気に入りなんだから。

おい、違うぞ。お前の出る場面じゃないからな。と言いたいのを飲み込んだ。



 須田が形式的な質問をいくつかしてが 新たな情報もなく 岩井家に戻る。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る