第7話 福嶋家

 まずは 福嶋宅を訪れる。莉子は 年中組なので 紘くんより 学年が上。

岩井家とは2軒離れている。この並びの建売住宅をほとんど同じ時期に購入したらしい。

 家の中は 玄関からすでにお姫様&ファンシー&メルヘン。ソファや棚にはフリフリのレースがかけてあり いかにも女の子あこがれる世界観。ここまで行くと 正直感心してまうなというレベルだった。


リビングに通され 須田がメモの準備をしながら 福嶋綾子(あやこ)に切り出す。

「紘くんの 普段の様子から教えてください。」


「紘くんママの前では 言いにくかったんですけど 紘くんってヤンチャさんでしょ。

男の子だからしょうがないし 紘くんママも厳しくしてはいたみたいですけどね。

うちが女の子だから ちょっと距離を取りたいなとは思ってたんです。ほら、この前も 細田さんとこの おにいちゃんが 紘くんと大斗くん連れて行っちゃって。 親に何も言わずにいなくなるもんだから 大騒ぎになっちゃって。」

「それでどうなったんですか。」


「神社の裏で秘密基地つくってたら夢中になっちゃったみたい。設楽さんとこの大斗君が おトイレしたいって 7時くらいに帰ってきてそれで居場所が分かったっていうね。」

神社は 公園から大人の足でも20分以上かかるが 報告を上げる価値はありそうだ。




「最近 このあたりで変わったこととか 不審なことはありませんか。」

「そういえば少し前から 毎日のように すっごく大きな音を出して前の道を走る車があるんです。時間帯は関係なく、昼でも夜でも。もう うるさくって。南側の大通りから入ってきてこの道を抜け道にしてる感じで。子供たち とくに男の子って かっこいい車が好きでしょ。公園で音が聞こえると走って見に行っちゃうから もう危なくって。うちは女の子で良かったって思っちゃいますよね、正直。」


 須田が率先して いろいろ質問したので 家の中の様子を 改めて見回す。ここに長時間いたら メルヘンに飲み込まれると思い始めたころに須田が質問を終え、 福嶋宅を出た。



 外では  田中・鈴木先輩が 関係者以外の近所の家に聞き込みをしている。 唯一の新しい情報は 紘くんがひとりで公園を出て 大通りに向かって歩く姿を目撃した人物がいたということだ。自分の意志で向かっていたのか 誰かに導かれたのかまではわからなかった。

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