第26話
日頃の授業はわりと退屈なものだった。どの授業も驚くほど面白いことはなく、平凡で、単調に過ぎていく。説明を受けて板書を写し、たまに問題を解く授業は作業化していた。単調さが続くと、つい考え事に花開いてしまう。いつもの癖になっていた。
毎日同じことの繰り返し、拓哉は人並みにはなんでも出来る方だと自負していた。昔から何でもなんとなくうまくこなしていた。器用といえば器用だったが、器用貧乏でもあると思っていた。運動も勉強も人付き合いも、与えられた環境の中でこなすのは得意な方だった。その中でも自分の自由に生きることが拓哉の目標でもあった。
今日の部活もいつも通りかなぁー?試合したいなぁ。拓哉はそう思いながら机に突っ伏した。今の歴史の授業は寝てても何も言わない先生だ。容量よく休むがモットーの拓哉は、
適度にサボるのがいつもの日常だった。毎日の部活はいつもトレーニングで大半が終わってしまう。毎日休まずトレーニングを続けることが大事であることはよくわかっていたが、たまには試合もしたくなる。県大会のような緊張する試合も良いが、仲間内で楽しくやる試合もやりたかった。
勿論顧問はそんなお遊びは許してくれない。まめに練習をして地道に鍛え続けることが大事だと顧問はいつも言っていた。熱血というほど精神論に頼る人柄ではなく、どちらかというと冷静に分析して考えるタイプの顧問で、拓哉はそんな顧問のスタイルが好きだった。好きだから口を挟むことは言えないが、たまには遊びの試合もしたいのが本音だった。
大体高2にもなって、スポーツ特待が取れる訳でもないそこらへんにある高校のサッカー部なんて頑張っても底が知れていた。せいぜい面接の時に頑張ったこととして話題が出来る程度で他には何の恩恵もない。体が鍛えられて良いくらいの取り柄しかない部活だった。そんな平凡で役に立たない部活を頑張り続けるのもよく考えれば不毛な話だと分かっていたが、それでも日常としてこなしていくしかないことに拓哉は気付いていた。
「おーい山岸、昼飯食おうぜ」
気付けば授業は終わっていて、考え事をしていた拓哉にいつも通り斎藤は声をかけた。拓哉がぼうっと考え事をして上の空だったことにも慣れている様子だった。
「斎藤はまたコンビニパンか、よくお腹減らないな」
中本が椅子を持ってやってくる。そういう中本は大きなお弁当箱を抱えていた。
「俺の母ちゃんの弁当はそこそこに美味いぞ?お前はほのかちゃんに作って貰えよ」
「いや、そんな面倒なこと頼める訳ないだろ」
「ほら山岸だって弁当なんだぞ?」
「俺のは俺が作った男の弁当だけどな」
晩御飯の残りと冷凍食品で出来た自作の弁当を笑ってみせる。お世辞にも豪華とは言えないが腹を満たすには十分な内容だった。中本の弁当よりは見劣りするが、自分で作っているだけよくやっていると思う。
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