12話「妹たちと誕生日」 前編

「むーっ」

「……ふんっ」


 今、俺は愛する妹たちに睨まれている。

 ここ30分ほどずっと、だ……


「ち、智咲? あ、茜? に、兄さん何かしたか」


 俺が尋ねると智咲は俺を睨みつけたまま口を開いた。


「別になんでもないわよ」


 いや……絶対なんでもなくないですよね智咲さん。

 ふとここ最近自分がしたことを思い出しても特にこれといって思い浮かばない。


「あの……その……なんかごめん」

「何で謝るのよ」

「いやだって……智咲さん怒ってるし……」

「別に怒ってないわよ」


 うーん明らかに怒ってるんだよなあ。


「あ、茜もごめんな?」

「いいよ陽兄……あ、違った。 むーっ。 陽兄嫌い」

「あ、茜……」


 なんてこった。 いつもツンツンしてる智咲はまだ分かるが、まさか茜までご立腹だとは……

 一体俺は何をしてしまったんだ……


「……俺、一回頭冷やしてくる」


 俺はそう言って自室から出ていった。


「もー、ちーちゃんやりすぎ! いつになくツンツンしてたよ」

「さ、作戦通りにしただけじゃない!」

「それにしてもだよ〜。 うう……陽兄にあんな冷たい態度とるなんて辛い」

「茜が言い出したんじゃない、うう……ツンツンのコントロールなんて上手く出来ないわよ……」

「ニヒヒ、ちーちゃんにはまだまだ修行が必要みたいだね。 それにしても陽兄……」

「本当に気付いてないみたいね」

「陽兄らしいと言えばらしいね」

「今日は兄さんの誕生日なのに」

「ニヒヒ~、そんな陽兄も好き」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る